「正論」で人は動かない 子どもの肥満率改善に挑むドバイ大型スーパーの「体験設計」、何がすごい?:がっかりしないDX 小売業の新時代(3/3 ページ)
ドバイの「モール・オブ・ジ・エミレーツ」には、「Bright Bites」という子ども向けの店舗内店舗があります。Bright Bitesは、子どもが主役の買い物体験を通じて、食の選び方を変えることを狙った取り組みです。
デジタルは「データを取るため」ではなく「継続のため」に使う
DXが失敗する典型は、データ収集が目的化することです。POS、アプリ、ID、カメラ、AI──導入した瞬間がピークで、現場の行動は変わらない。こうなると、現場からは「結局何のため?」と言われます。
Bright Bitesのデジタル活用は、目的が明確です。アクセスパスのカードを使って体験し、ゲームやリーダーボードで進捗を見せ、子どもに「次もやりたい」と思わせる。
重要なのは、データを使って利用者の気持ちと行動を、次の一歩に押し出すことです。
順序が逆になると、「分析はできました。しかし現場は変わりません」といった状態で止まってしまいます。Bright Bitesは、変えたい行動(健康的な選び方)から逆算して、デジタル要素を配置しています。
日本でやるべきは「ミニテーマパーク化」ではない
もし日本で体験型店舗を運営するとしたら、「子ども向けスーパーを作るのは無理」と考えるケースが多いことが想像されます。
しかし、移植すべきは設備ではなく、行動変容のための構造です。重要なのは次の3点です。
第一に、入口は軽く、体験は段階化する。見学やミニ体験は無料で、コア体験は課金制または予約制にします。事業として続けるためです。
第二に、正しい選択に達成をひも付ける。スタンプ、進捗、称号、ランキングなど、子どもが興味を持つ形にします。すると、自然と子どもが体験に集中するため、親の説教は不要になります。
第三に、家庭で再現できる設計にする。店で終わらせず、ランチや買い物の型として持ち帰れるようにします。レシピや買い方のテンプレートが効きます。
ここまでやって初めて、食育が「学び」から「習慣」へ移るのです。
【注目】ITmedia デジタル戦略EXPO 2026冬 開催決定!
学研が挑む"真のDX"──「本当に使われるデジタル」で目指す教育価値のバリューアップ
【開催期間】2026年1月27日(火)〜2月25日(水)
【視聴】無料
【視聴方法】こちらより事前登録
【概要】学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ドバイ「世界最大の靴専門店」が示す、これからの小売店の勝ち筋 総合型はもう限界か?
昨今、日本の小売業界では、総合スーパー(GMS)の苦戦が続く。イトーヨーカ堂の大量閉店に象徴されるように、品ぞろえの幅広さだけでは、ECとの価格競争や利便性競争に太刀打ちできない時代。そんな中、カテゴリーを極限まで深掘りし、店舗そのものを“目的地”に変える戦略が注目を集めている。
メガネ店の“待たせすぎ”問題、どう改善? OWNDAYSの「接客を減らすのに、満足度は上げる」DX
AIが“似合うメガネ”を提案する鏡や、スタッフを介さず商品を受け取れるスマートロッカーなど。メガネチェーンのOWNDAYSは、テクノロジーを活用して店舗での顧客体験の向上に努めている。
「クレカがあるのに現金払い」 日本人の支払い行動を激変させた、Visaの戦略とは?
キャッシュレス決済には“壁”があった。カードは持っているし、利用できる店も多い。それなのになぜか、現金で支払う……。そこには「習慣の壁」がある。
顧客第一はどこへ? 広告に目がくらんだAmazonが直面する、ブランド崩壊リスク
任天堂がAmazonへのSwitch 2供給を停止した背景には、リテールメディア依存による弊害がある。広告収入を重視するあまり、Amazonは顧客体験やブランド信頼を損ないつつあり、本質的な課題が浮き彫りになっている。
