なぜレクサスは人気高級車になったのか 元ブランドマネジメント部長が語った「勝ち方」
トヨタ自動車の人気高級車レクサス。2025年の全世界販売実績は、過去最高を記録した。レクサスはなぜ、ここまでの人気車種になったのか。元トヨタ自動車の高田敦史氏が解説する。
本記事の内容は、エバーリッジ(東京都港区)が2月5日に開催した「バックオフィス World/マーケティング・セールス World 2026 SPRING TOKYO」内で実施されたセミナー「世界を驚かせた トヨタ・レクサスのブランド戦略」の内容を要約したものです。
トヨタ自動車の人気高級車レクサス。2025年の全世界販売実績は、過去最高の88万2231台(前年比104%)を記録した。特に、北米ではRX、NX、TXといった主力車種が好調で、40万8070台(同108%)を売り上げた。
レクサスはなぜ、ここまでの人気車種になったのか。トヨタ自動車でレクサスブランドマネジメント部長を務めた高田敦史氏が解説する。
レクサスを人気高級車にした戦略とは?
高田氏によると、トヨタはそもそも、企業ブランドと個別商品ブランドを使い分けているという。トヨタブランドのキーワードは「QDR」(品質・耐久性・信頼性)。「トヨタなら安心」という信頼を基盤に、元気、若々しいといったイメージの「ヤリス」、先進的で環境にも配慮した「プリウス」、高級感がある「アルファード」といった、各商品の個性を際立たせる戦略をとっている。
「レクサスブランドは徹底して『レクサス』という一つのブランドを訴求している。広告にトヨタの文字は一切入れない他、特定の車種ではなく『レクサスというライフスタイル』を売る戦略だ」
レクサスは1989年、米国市場向けの高級車として導入。ターゲットは、ベビーブーマー世代(当時の25〜43才)のビル・ゲイツやスティーブン・スピルバーグのような「旧来的な価値にとらわれない、新しい知性派の富裕層」だった。
ライバルである当時のメルセデスやBMWが走行性能を競う中、最初に導入したLSは米国の競合車より小さめのサイズかつ、「静粛性」「低振動」「精巧な作り込み」に特化。こうした性能を、ボンネットに積んだシャンパングラスが時速200キロでも倒れないというテレビ広告でアピールした。
また、販売体験にも着目。高級車販売の経験や知見を持つ新規ディーラーを募集した他、接客品質を向上させるため、高級ホテルや百貨店から接客ノウハウを取り入れた。ディーラーの定義を従来の「車を売る場所」から「最高のおもてなしを受ける場所」へと変えた。
レクサスの評判は、購入した顧客から市場に伝わり、徐々に人気を拡大。米国での成功を追い風に、2005年に日本にも導入したが、当初は苦戦を強いられたという。高田氏は「『所詮はトヨタの車』と揶揄(やゆ)された。商品で売れなければCS(顧客満足)で売ると決めた」と振り返る。
CSを高めるために、レクサスは納車セレモニーや、ディーラーに用がなくても立ち寄れる「オーナーズルーム」の設置、徹底した洗車サービスなどの体験を提供。その結果、米国市場と同様に顧客を通じて評判が上がり始め、徐々に売れるようになった。
レクサスのブランド戦略を振り返り、高田氏は「ビジネスにおいて最も重要なのは、自らの立ち位置(ポジション)を決めること」だと話す。競合車種であるメルセデスが「ステータス」、BMWが「スポーティー」というポジションを占める中で、レクサスは「品質」と「過剰なまでのCS」という独自路線を築いた。BtoBでもBtoCでも、どこか一つ「飛び抜けた価値」を持つこと。それがライバルとは異なるポジションを築く足がかりになるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
トヨタ、なぜ「3年」で社長交代? 会見で佐藤社長が語った理由
トヨタ自動車は2月6日、佐藤恒治代表取締役社長が副会長、および新設するChief Industry Officer(CIO)に、執行役員の近健太氏が社長・Chief Executive Officer(CEO)にそれぞれ就任する4月1日付役員人事を発表した。
自宅マンションで「55万円」のフルコース!? 東急不動産×貝印、異色タッグのワケ
東急不動産は2月9日、分譲マンション「BRANZ」(ブランズ)の居住者を対象に、有名シェフがマンションに出張し、BRANZ内の共用ダイニングでコース料理を提供する新サービス「MY GRAND CHEF for BRANZ」を開始すると発表した。新サービス開始の背景には、同社が分譲マンション事業で強化する「売って終わりにしない」差別化戦略があった。

