「紙でもなんとかなる」はもう限界 中小自治体が選ぶべきDXの現実解
人口減少が進む中小自治体では、深刻な人材不足がDXの壁になっている。積み上がる紙文書や書庫のスペース問題、紛失リスクに直面しながら、予算やノウハウの課題から電子化への一歩を踏み出しにくい現状だ。専門家への取材で解決策を探る。
「『1人情シス』という言葉がありますが、中小自治体は『0.5人情シス』のところもあります。他業務との兼務が当たり前で、DXに割くリソースがそもそもありません」
多くの自治体でCIO補佐官やアドバイザーを務める川口弘行氏は、地方自治体の実情をこう説明する。人口減少が加速して職員の数も減少する中、行政運営を支える現場の負担は年々深刻な状況になっている。
実際、執務室も書庫も「紙」で埋め尽されている。長年蓄積された行政文書は膨大な量になり、効率的に管理されずに物理的なスペースを侵食している。
「多くの中小自治体は、今でも紙で業務をなんとか回しています。だからこそ、システム化の必要性を切実に感じにくい側面はあるでしょう」と川口氏は指摘する。しかし、その「なんとか回っている」という運用が深刻なコンプライアンスリスクを招く。
「紙の書類を机の上に置きっぱなしにして紛失したり決裁に回す書類を引き出しに入れたまま忘れたり、といった事故が起こり得ます。兼務が多い職員にとって、主担当以外の業務に注力できなくなるのは避けられません」
紙があるためにテレワークができず、紙を探すために膨大な時間を浪費する。庁舎の移転をきっかけに、「新しい庁舎に入り切らない」という理由で紙の大幅な削減を余儀なくされる自治体は多い。紙を減らすこと自体が目的化し、「どのように電子化して管理の質を担保するか」という戦略がないまま削減を迫られることになる。
この状況を打開するために、富士電機が2024年度にリリースした製品が「e-自治体 文書管理サービス」だ。
「SaaS」という言葉が届いていない現状
デジタル庁が自治体にSaaS導入を促す方針を打ち出したが、地方行政の最前線では「用語の壁」と「情報格差」が障壁になっている。
「中小自治体には、SaaSという言葉が浸透し切っていません。ASPやクラウドという表現の方が通じますが、クラウドというと、今度はストレージやオフィスソフトをイメージされてしまうことが多いのです」と川口氏は話す。「バージョンアップの自動適用」や「運用負荷の軽減」といったSaaS本来の価値が、最も恩恵を受けるべき現場に届いていないのだ。
富士電機の伊平寿之氏も同様の思いを抱き、「中小の自治体で他業務と兼務しながらDXを検討する場合、システムの運用を浸透させるところまで手が回らないケースがあります」と話す。職員の間でITリテラシーに差があると、「システムを新しくすると仕事が難しくなる」「新しいことを覚えるのが面倒だ」という反応も起きやすく、その結果「紙のままでいい、その方が確実で安心だ」と現状維持にとどまってしまう。
本来、SaaSの利点は導入と運用の両面で職員を救うためのものだ。伊平氏は、同社のサービスを例にSaaSの優位性を説明する。
「導入フェーズでは担当職員の負荷を大幅に削減できます。従来のオンプレミス環境だと半年から1年を要した構築期間が、SaaSなら最短で2カ月に短縮可能です。運用面でもサーバの保守や機能改善、バージョンアップ対応をサービス側が行うため、オンプレミスの他、IaaSやPaaSなどと比べてもSaaSは職員が運用する負担が最小限となり、空いた時間を活用できます」
一方で、川口氏はサービスの導入だけで解決するわけではないと言う。「SaaSは初期コストが小さいのは確かですが、定着させるためには業務フローを変える必要があります。紙からシステムに変更するためのサポートが不可欠です。
これに対する富士電機の回答が、全国の拠点網を駆使した伴走型支援だ。同社は、過去の事例を基に文書管理規定の変更支援や運用ルールの策定・見直しまで踏み込んで支援している。
20年の実績が生んだ「カスタマイズなし」の革命
富士電機は、都道府県をはじめとする100以上の自治体に文書管理システムを20年以上提供してきた実績を持つ。中央省庁で使われる共通の文書管理・電子決裁システムも同社が担当している。
長年のノウハウを凝縮してリリースしたのが、e-自治体 文書管理サービスだ。リリースから1年で採用実績が広がっている理由は、その設計思想にある。
「最大の強みは、蓄積した多様な運用パターンを『パラメータ』として体系化したことです」(伊平氏)
自治体がシステムを導入する際、多くの場合は運用に合わせるためのカスタマイズが発生する。これが導入時、運用時のコスト高と開発期間の長期化、品質の低下、将来的な改修コストの増大を招く原因だった。
富士電機はこれらの問題を解決するため、20年以上の実績を基に各自治体の運用パターンを分析して、幅広いニーズに応えられるパラメータを用意した。
「カスタマイズせず、設定を選ぶだけで組織ごとの業務に適合できるサービスに仕上げました」と伊平氏は語る。この「選ぶだけ」の仕組みによって最短2カ月というリードタイムを実現し、導入に関わる職員の拘束時間を最小化した。
操作性もユーザーの声を反映して工夫を凝らした。毎日触れるものだからこそ、UI(ユーザーインタフェース)は直感的な操作性を取り入れつつシンプルにした。マニュアルを熟読しなくても感覚的に扱える使い勝手の良さが、ITリテラシーへの不安という障壁を取り除いている。
高いセキュリティ基準と高可用性がもたらす信頼
SaaSの導入に際して、多くの自治体が最後の一歩を躊躇(ちゅうちょ)する理由は「セキュリティ」と「継続性」への懸念だ。
「クラウドサービスはいつか消えてしまうのではないか」「データが漏れるのではないか」といった不安に対して、伊平氏は明確なエビデンスを提示する。
「当サービスで採用しているクラウド基盤は政府情報システムのためのセキュリティ評価制度『ISMAP』に準拠しており、ガバメントクラウドにも採用されている高機能なクラウド基盤を採用しました。中央省庁のシステムと同レベルの強固なセキュリティ体制と、災害が起きても簡単には止まらないデータセンターの高可用性を確保しています」
他システムへのデータ移行機能も標準で備えており、「一度導入したら抜け出せない」という“ベンダーロックイン”への不安も払拭している。
システム連携についても万全の体制を整えている。文書管理は、今や単体で存在するものではない。庁内の財務会計、電子契約、電子公印、グループウェアといった主要システムとシームレスに連携できなければ、導入効果は限定的だ。
e-自治体 文書管理サービスはAPIを通じたシステム連携を前提にしており、庁内の情報をつなぐコアな基盤としての役割を果たす。
AIが支える未来の起案 職員が「思考」に集中できる環境に
文書管理の電子化が実現した先に、自治体業務はどのように変わるのか。川口氏は「息をするように業務が回る状態」という言葉でその理想を語る。
「今は職員が『よし、起案するぞ』と身構えて取り組むことが少なからずあるように思います。そうではなく、定型的な業務は職員に負担を感じさせず自然に流れる形が電子化の先にある姿です」
現行の紙運用は非効率な面はある。過去の起案文書を流用して作成するケースが増えて、起案内容が最新の状況にそぐわず精度を保つのが難しくなる場面も生じている。
「伺い文の中に決裁に必要な情報が記述せず、その結果、上長が添付書類を全て確認しなければならない事態が起きています」と川口氏は指摘する。
この課題に対して、富士電機は新たな解決策を提示する。それが、AIを活用した文書作成支援だ。
「自治体の文書業務は、定型的なものが非常に多くあると伺っています。膨大な蓄積データを基にAIが文書の素案を自動で生成し、職員がAIを意識せず、高品質かつ効率的な文書業務の遂行を可能にする仕組みを開発中です」と伊平氏は語る。
自治体DXのゴールは単なる紙の削減ではない。内部事務の徹底的な省力化によって生まれたリソースを、高齢化社会への対応や住民サービスの質的向上といった「人間でなければできない業務」に振り向けるための攻めの改革だ。
「システム未導入の自治体にこそ、使ってほしい」
サービスを売るだけでなく、行政文書の適正管理という責務をデジタルで全うする富士電機の姿勢。それこそが、予算や人材不足に悩む「0.5人情シス」の自治体が求める救いになっている。
伊平氏は中小自治体の担当者に向けて、次のようにメッセージを送る。
「SaaSを利用すれば担当職員の負担軽減に加えて、従来は数千万円かかっていた導入および運用コストを大幅に抑えられます。予算が通らない、人材がいない、何から始めればいいか分からないなどの理由で立ち止まっている自治体にこそお薦めです」
川口氏も、将来の展望をこう締めくくる。
「仮に異なる自治体に勤務しても同じ操作で即戦力として働けるくらいの、自治体全体の共通基盤を築くこと、それが生産性向上の鍵になります」
2030年、日本の人口減少はさらに深刻な局面を迎えて、自治体運営はマンパワーや個人の努力だけでは支え切れなくなる。そのとき、自治体の礎となるのは息をするように流れるデジタルのインフラであるはずだ。
20年以上の実績の上に築かれた富士電機のSaaSは、中小自治体が未来を切り開くための現実的な解になるだろう。
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提供:富士電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2026年4月22日





