優秀だけど、注意してもルールを守らない社員 懲戒処分にする際の注意点は?
当社の営業部には「優秀だけど、注意してもルールを守らない」タイプの社員が複数人います。上司も再三注意をしていますが、成績が良いので報酬は高く、あまり上司の注意を聞いてくれない状況です。ただ、人事部としてこうした風土が根付いてしまうことに危機感を感じており、次に問題があった際は懲戒処分にできないかと考えています。懲戒処分を科す場合、どのような点に気を付ければいいでしょうか。
回答者プロフィール
佐藤敦規(さとう あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。
Q: 当社の営業部には「優秀だけど、注意してもルールを守らない」タイプの社員が複数人います。例えば、トップセールスのAさんは「始業時間に出社せずに午前11時のアポイントに直行する」「定例会議に出席しない」といった状況です。上司も再三注意をしていますが、成績が良いので報酬は高く、あまり上司の注意を聞いてくれない状況です。ただ、人事部としてこうした風土が根付いてしまうことに危機感を感じており、次に問題があった際は、譴責(けんせき)や減給といった懲戒処分にできないかと考えています。懲戒処分を科す場合、どのような点に気を付ければいいでしょうか。
「優秀だけどルールを守らない」社員 懲戒処分に至るまで
A: ルールを守らない社員への対応は、会社の規模や状況によって判断が分かれる難しいテーマです。まず原則として、ルールを守らない行為が続く場合、懲戒処分を検討することは可能です。
最近、成果や売り上げだけを重視する文化が、コンプライアンス違反につながった企業の事例が報じられるようになりました。「売り上げを出せば偉い」という考え方は、組織全体としては通用しにくくなっています。
会社のルールを守らない社員は、コンプライアンス上のリスクにつながる懸念があります。コンプライアンス違反による会社へのダメージは、もはや無視できるものではありません。だからこそ、ルールを守らない社員への対応は、組織として真剣に検討すべき課題と言えます。
ただし、対応の温度感は会社の規模によって変わります。例えば上場企業の場合は、コンプライアンス違反は経営そのものに致命的な影響を与えるリスクがあります。そのため、どんなに営業成績が良かろうと、ルール違反を放置するのは難しく、警告から処分までのステップを規定通りに進めることが基本的な対応になります。「優秀だから例外」という運用は、組織全体のガバナンス上、認められにくくなっているのです。
一方、スタートアップや中小企業では、人材獲得の競争環境が異なるため、事情が変わります。優秀な人材を確保する難しさを踏まえ、本人の役割や立場に応じて段階的に対応するというのが、現実的な選択肢です。
例えば、担当者レベルのうちは多少のルール違反に目をつぶる一方で、役職がついた段階で本人に求めるレベルを引き上げ、研修や個別の指導を通じて組織秩序の重要性を伝えていく。こうしたメリハリのある対応で、人材確保と組織秩序の両立を図っている会社も少なくありません。
ただし、これは「スタートアップや中小企業ならルール違反を許容してよい」という意味ではありません。コンプライアンス違反のリスクは会社の規模に関わらず存在するため、最低限の線引きは必要です。
実際に懲戒処分を科す場合、会社規模を問わず、踏むべき手続きは共通です。重要なのは、就業規則にのっとることです。
相談内容のように、上司が再三注意しても改善されない状況は、業務命令違反に該当する可能性があります。始業時間の不順守や定例会議の欠席は、会社のルール違反に加え、上司の業務指示にも従っていない状態であり、就業規則上の懲戒対象になり得ます。
ただし、いきなり懲戒処分に踏み切ることは少なく、まずは警告を本人に伝えるのが先です。「これ以上ルールを守らない場合、減給などの処分を検討する」という形で、明確な意思表示を行います。警告を受けてもなお改善が見られない場合に、初めて処分というステップに進みます。問題の重さによっては、最終的に懲戒解雇まで視野に入ることもありますが、実際にそこまで至るケースは多くありません。
なお、営業や開発の現場では、社内のルールに沿わない働き方をする人が、高い成果を出すケースがしばしば見られます。だからこそ、経営者や人事担当者は「成果」と「組織秩序」のバランスの見極めが必要です。会社規模、職種、本人の状況を踏まえながら、警告と処分を段階的に進めていくことが現実的なアプローチです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「1on1をすれば大丈夫」は間違い 若手の心理的安全性を高める“3つの説明”
新入社員や中途採用社員の定着率を高めるためには、心理的安全性を高めることが重要だといわれています。企業は心理的安全性を高めるため、苦心しているように見受けられますが、見落とされがちなことについて社会保険労務士の立場から解説します。
同一労働同一賃金はこう変わる 企業がまずとるべき対策3選【10月施行】
今年10月1日に、新しい同一労働同一賃金のガイドラインが施行予定です。改正のポイントや、企業がまずは優先してやるべき対応3つを、社会保険労務士が解説します。

