「職員が激減」に備えよ──2040年問題に向けて「自治体」に残された生存戦略(3/3 ページ)
「2040年問題」を前に、自治体は人口減少や高齢化による深刻な人手不足に直面している。限られた職員で行政サービスを維持するにはどうすべきか――CIO補佐官として自治体DXに携わってきた筆者が、AI技術の進化を踏まえながら、行政サービスの未来像をマネジメントの視点で考える。
自治体は行政サービスを提供し続けられるか
もちろん、このような流れを歓迎しない立場の人たちも多くいるのは事実です。抵抗感を抱く人を細かく見ていくと「既存のITベンダー」「BPO事業者」「現状維持を志向する組織文化」という3つのグループに分けることができます。
共通しているのは「仕事を奪われるのではないか」という不安や恐怖感です。これは非常に強い抵抗となり得ます。この壁を乗り越えるには「2040年問題」(現役職員の急減)が共通の課題であるという認識を持つことが重要だと考えます。
「効率化のためにAIを入れる」のではなく「人がいなくなっても住民にサービスを提供するための手段」として位置付けることが必要でしょう。
また、事務作業から解放された職員を、より高度な判断や対人ケアの専門職として再定義し、キャリアアップの道筋も用意しておくべきでしょう。
2040年までの14年間は「人間が頑張って効率化する」のを諦め、「ソフトウェアに仕事を完結させる許可を与える」ための合意形成期間なのかもしれません。ベック氏が提唱するように、ソフトウェアを「道具」としてではなく「サービスそのもの」(職員の代わり)として迎え入れることは、自治体が消滅しないための有力な選択肢の一つなのではないでしょうか。
さらに、財政規模の縮小による「予算がない」という現実は、既存のプレイヤーにとっても看過できない大きな脅威となります。「このままでは委託料すら支払えなくなる」という状況を共有しつつ「AIを活用して低コストでサービスを継続するパートナーとなるのか、それとも予算が枯渇して市場から退場するのか」という選択を突きつけられる段階に入っているのです。
筆者もすっかり「おじさん」になっていますので、2040年には自治体の現場で第一線に立ち続けることは難しいかもしれません。だからこそ、次の世代に余計な負担を残さないよう、いまのうちからできる限りの取り組みを進めていきたいと考えています。
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