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「なぜ、あの営業担当は全社のDXをリードできたのか?」 Tech0受講生に見る、非エンジニアこそテクノロジーの原理を学ぶ理由

日本企業のDXが業務効率化で止まる真因は、ビジネスとテクノロジーの分断にある。この壁を破るべく「非エンジニアこそ泥くさく自らの手を動かし、ビジネス課題を解け」と提唱するのがTech0だ。現場から大企業を変革する実践的プログラムの全貌に迫る。

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 DX推進やAI活用が叫ばれて久しい日本企業。しかし多くは、業務効率化の域を出ていないのが現実だ。その真因は技術力不足ではなく、ビジネスとテクノロジーの構造的分断と、それが招く外注依存による空洞化にある。この状況を打ち破り、大企業を変革していく起点となるのは「たった1人の個人の成長」――こう話すのは、Tech0 代表取締役の濱田隼斗氏だ。

 同氏は「デジタルで会社を変革するためには非エンジニア(以下、ビジネス職)こそがテクノロジーを『手の内化』して、泥くさくコードを書く経験が必要」だと説く。その真意とは?

DXが業務改善で止まる真因は「解像度不足」

 濱田氏は新卒でスリーエム ジャパン(当時:住友スリーエム)に入社。営業および経営企画を担当した後、アリゾナ州立大学でMBAを取得した。シリコンバレーのAIスタートアップでエンジニアマネジャーを務め、2019年にマイクロソフトのグローバルAIチームに参画。2022年にTech0を創業してからは「ビジネス×デジタル人材」を生み出すための育成プログラム「Tech0 BootCamp」を運営している。

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濱田隼斗氏(Tech0 代表取締役 CEO)

 同氏が考える、日本企業のDXが進まない理由は2つある。1つ目は、企業変革のリード役である経営層がデジタルの本質を理解していない点。2つ目は“モノ”中心の大量生産で得た成功体験から、ビジネスの変革よりも既存の枠組みでの効率化に注力してしまっている現状だ。

 「本来、企業の成長には『経営(変革)』の視点が不可欠です。しかし日本企業の多くは変革(デジタライゼーション)ではなく、既存の仕組みで業務を回す『執行』、つまり効率化(デジタイゼーション)に終始しています。新しい挑戦を歓迎せず、決められたルールの中で現場に執行の成果ばかり求めても、いずれ天井にぶつかります」

 マイクロソフト時代、濱田氏は多くの経営層とAI戦略を議論した。そこで痛感したのは、「事業をモノからコトへ」と掲げながらも実践に至らない現実だった。

 「『事業をコト(体験やサービス)へシフトする』と大宣言している企業でも、その土台となるテクノロジーを経営層が理解していない例は多くあります。お題目を掲げても本質が分からないため外部に頼ってしまう。つまり、経営層のデジタルの解像度が低く、何をすべきか分からないまま外部へ丸投げする構造が続いているのです」

「外注依存」が招く思考停止と組織の空洞化

 過度な外注依存は企業に何をもたらすか。濱田氏は「最大のリスクは、考える力が奪われ、会社として『テクノロジーを使って自ら事業を変革する』経験が積めないこと」と説く。「デジタル変革とは、成功も失敗も含めて自らの糧にする試行錯誤のプロセスです。その過程を外部に丸投げしていては、自社の強みは伸ばせません」

 外部の成功事例を参考にするのは悪くない。しかし重要なのは、それを自らの手で成功に導くことだ。濱田氏は、デジタルの理解には「知っている」「ある程度使える」「使いこなせる」の段階があり、最終的には「自ら推進できる」レベルへの引き上げが重要だと語る。

 「競争力の源泉となるコア領域は内製して、他を外注するのが本来の姿です。しかし経営層がテクノロジーを理解していないと、内製と外注の戦略的な切り分けさえできません」

 濱田氏が見てきた企業の構造的課題はこうだ。現在の経営層は、30年前から自ら泥臭く経験を積み上げて強固な「仕組み」をつくり上げた世代が該当する。その熱量と成功体験は称賛すべきものだが、仕組みが完成された現代において当時と同じアプローチを再現するのは難しい。彼らは「DXを推進せよ」と号令をかけるが、既存の仕組みの中で十分な権限を持たない現場層からすると困難な要求になっているのが現実だ。さらに、既存業務の仕組みはミスが許容されない「減点方式」が基本の場合が多く、挑戦もしにくい状況にある。

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Tech0が推奨するソフトウェア開発スタイル(提供:Tech0。以下同)《クリックで拡大》

ビジネス職が「コード」を書く意味

 この課題解決として、Tech0はビジネス職こそテクノロジーを「手の内化」することを推奨している。濱田氏は、ビジネス職にとってコードの理解は「一般教養として英語が分かるのと同じレベル」だと説く。

 業務効率化はExcelなどでも多少は可能だが、本当の自動化にはベースの仕組みの理解が必要だ。原理が分かれば裏側が見え、応用が利く。ビジネス側がテクノロジーの構造を理解できれば、外注に頼らなくても「自分たちの手で課題解決のシステムを作ることは十分に可能です」

 ここで一つ疑問が浮かぶ。コーディングはAIに任せればいいという風潮もある中、なぜあえてコードの知識が必要なのか。濱田氏は「仕組みが分かっていないとAIに正しく指示できず、作られたものの正しさも判断できません」と指摘する。本質を理解せずにAIに丸投げするのは、外注先への丸投げと全く同じ構造だ。

 ノーコードなどの選択肢についても、ベースのコードを知らずに飛び付くのはただの妥協策になってしまう可能性があると濱田氏は危惧する。「現場の本質的な課題を一番理解しているのはビジネス職です。自らテクノロジーを理解すれば本当に良いソリューションが生み出せるのに、ノーコードを使う『手段の目的化』が起きた瞬間に肝心の課題解決の取り組みが形骸化します」――だからこそ「泥くさく手を動かして原理を学ぶ」この順番が極めて重要だという。

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AI時代には、特に「仕組みを理解しているかどうか」がテクノロジーを使いこなす鍵になる《クリックで拡大》

1年間、週10時間以上 徹底したコミットメントが生む成長

 Tech0 BootCampは「1年間、週10時間以上コミット」という、社会人にはハードなプログラムだ。これには理由がある。スポーツと同様に、知識を見聞きするだけでは実践的なスキルは身に付かない。1日1〜2時間、手を動かし続けてこそ「1年後には見違えるほど遠くへ行けるのです」(濱田氏)

 最初の半年はテクノロジーの基礎を広く学んで、個人のインプットとアウトプットを繰り返してWebアプリケーションを作れるレベルを目指す。続く2カ月で大企業特有のルールなどを学び、最後の4カ月で実際のDXプロジェクトを想定した実践に入る。

 この最後の4カ月では、協力企業の実際の経営課題を「クエスト」として引き受け、チームで解決に挑む。単にシステムを開発するだけでなく、大企業のITプロジェクトに必須のセキュリティやインフラの要件をクリアしたプロトタイプを構築し、実際に動くソリューションを見せながら具体的な課題解決策を提案するという、極めて実践的な内容だ。

 「大企業で新規プロジェクトを立ち上げる際、セキュリティや既存システムのルールを理解していなければ、情報システム部門は決して権限を渡しません。だからこそTech0 BootCampは、社内の壁を突破してIT部門と協業できる土台作りのレベル感をこの1年に圧縮して詰め込んでいるのです」

 一般的に、ビジネス人材がテクノロジーを学ぶ際の挫折ポイントは「レベルに合わない」「仲間がいない」「質問できない」の3つだという。Tech0 BootCampはこれを回避するためクラス制およびチーム制を採用。クラスごとにTA(ティーチングアシスタント=先輩受講生)がつき、困り事をシェアして提案を受けつつ、皆でサポートしながら学べる仕組みを採っている。「Slackでのコミュニケーションも活発です。悩みを共有してすぐに解決できる。これが独学との大きな違いです」

 Tech0が大切にするカルチャーは「出るくい」と「Giver」の2つ。「出るくいはたたかれる」とはよく言うが、同社は挑戦を称賛して伸ばすことを是としている。そしてGiverとして他者の成功に自ら貢献して応援する。この2つの要素を持つ人材こそが日本の大企業に変革をもたらす、というのが同社の考えだ。

マーケティング、営業担当がDXをリードする存在に

 Tech0で学んで、自社に変革を起こした受講生は多い。

 東京ガスでマーケティングを担当していた鈴木湧也さんは、Tech0が掲げる「出るくい」「Giver」の精神を体現して、自発的に社内のテクノロジー勉強会などを始めた。その知見と行動力が評価され、現在は全社的なDXやシステム内製化プロジェクトの中枢を担っている。大規模なマーケティングカンファレンス「アドテック」への登壇や社外講師に呼ばれる機会も多くなり、今や各方面から引っ張りだこの存在だ。

 アサヒグループの食品会社で法人営業を担当していた井上颯さんは、自らアプリケーションを開発できるレベルまで成長。これを武器に「ビジネス経験」「テクノロジースキル」を必須要件とするアサヒグループホールディングスの新規事業部門の公募に見事合格した。現在は同社のDX推進の中核として活躍している。

個人の「熱量」が組織を動かす

 Tech0の熱量は、B2CからB2Bにも波及し始めている。歴史ある大手上場メーカーからの依頼を機に「役員向けBootCamp」も新設された。

 チャットツールさえ使いこなせなかった60代の役員陣が、SQLでデータベースを操作しながらAWSやAzureでデータ統合基盤を構築し、営業や製造活動を可視化するダッシュボードまで作成している。「データドリブン経営」を外部に丸投げせず、役員自らが泥くさくハンズオンで実践する新たな挑戦だ。濱田氏はこの重要性をこう語る。

 「経営層が『現場がテクノロジーでビジネスを変革する価値』を理解していなければ、現場の提案も『外注やIT部門に任せればいいのでは』とつぶしかねません。大手上場メーカーの例にあるように、ビジネス職でもテクノロジーの基礎は十分に身に付きます。トップ自らが仕組みを理解してこそ外注への丸投げから脱却して、変革を推進する現場クラスを力強く後押しできるのです」

 変化の原動力として、濱田氏は「人」の重要性を改めて強調する。「AI時代でも、結局ビジネスを変革して前に進めるのは『人』です。『早く行くなら1人で、遠くへ行くなら皆で』という言葉があるように、日本の巨大組織を変革するには共感できる仲間が不可欠です。そして、そのうねりを生み出す最大の鍵は『自社を変えたい、変わりたい』という個人の強烈な熱意に他なりません」

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個人の熱量が起点となり、やがて組織全体の変革へとつながる《クリックで拡大》

 さらに濱田氏は、自身の原体験を交えながら挑戦者への強いコミットメントを口にする。

 「かつての私も、営業現場で『ビジネスを変えたい』と願いながら手段を持たず、現状を打開できずにくすぶっていた一人です。テクノロジーが必要だと理解しつつも一歩を踏み出せない――そんなもどかしさを抱える人にとっての『強力な武器』になりたくて、この場所を作りました。私たちは挑戦する人を見捨てません。テクノロジーを身に付けた『卒業後』こそが本番です。変革者たちに伴走して、困難な道のりを共にドライブしながら、一緒にDXへの道を切り開いていけたらうれしいですね」

 濱田氏が描くのは、熱意ある個人がテクノロジーの根幹を理解し、組織全体を動かす未来だ。もどかしさを抱えていた現場のビジネス職たちが次世代のリーダーとなり、日本企業を変革する日も近い。

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提供:株式会社Tech0
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2026年5月31日

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