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現場が”疲弊しないDX” Webだけで年間141件の車検依頼が来るガソリンスタンドの戦略(1/5 ページ)

「どれだけ売り上げを作っても、数字が穴から抜け落ちていくようだった」。そんな危機感から、金澤石油は店頭営業頼みの集客を見直し、自社サイトを軸とした仕組みづくりへとかじを切った。地域のガソリンスタンドが実践した“難しくないDX”とは。

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 地域密着型のサービスステーション(以下、SS)として、ガソリンスタンド事業に加え、車検や板金塗装、中古車査定・買取などの油外サービスを手掛けてきた金澤石油(千葉市)。しかし、その集客は長年、現場スタッフの経験や営業力に依存しており、安定的に成果を生み出す仕組みづくりが課題となっていた。


金澤石油 外観(画像:イグニッション提供)

 そこで同社は、「車検」「板金塗装」「中古車査定・買取」を油外収益の3本柱と位置付け、WebサイトとSEOを活用した集客戦略へとかじを切った。目指したのは、スタッフによる店頭での声掛けに頼るのではなく、顧客自身がサービスを見つけ、相談・予約できる状態だ。

 その結果、自社の車検専用Webサイト経由で2025年4月から2026年3月までの1年間に141台の依頼を獲得し、約465万円の収益を創出。新規顧客比率は98%に達した。なぜ地域のガソリンスタンドで、こうした成果を生み出せたのか。金澤石油の金澤典明社長と、同社の取り組みを支援したイグニッション(東京都新宿区)の谷崎景一社長に話を聞いた。


Webサイト「カナザワあんしん車検」(画像:イグニッション プレスリリースより)

売り上げはあるのに、危機感

 金澤石油がデジタル化に取り組む以前は、車検をはじめとする油外サービスの集客は、店頭での声かけと既存顧客への提案が中心だった。

 例えば、給油や洗車で来店した客に車検時期を確認したり、季節に応じてエアコン点検やスタッドレスタイヤの交換を提案したりしていた。洗車客は会員化して情報を取得し、DMや電話でフォローするなど、いずれも、スタッフが顧客と直接やり取りしながら油外サービスにつなげていく、アナログな店頭活動だった。

 金澤氏は、これまでの集客のあり方を次のように振り返る。

 「現場スタッフの努力で成果は出ていました。一方で、どうすれば安定的に新規顧客を獲得できるのか、どの施策がどれだけ成果につながっているのかは把握しきれていませんでした。その日その日で声をかけ、目の前の売り上げを積み上げる『狩猟民族的な経営』だったと思います」(金澤氏)

 最大の課題は、売れるスタッフが中心となって動き、周囲がその判断に頼る構造になっていたことだ。

 こうした属人化の弊害は、車を販売した後のアフターフォローにも表れていた。担当スタッフしか顧客の状況を把握していないため、別のスタッフが次の提案をしようとしても、適切な対応が難しかった。本来なら成約できた車検や買い替えの機会を取りこぼしてしまっていた。

 結果として、顧客を多く抱えるスタッフに販売やフォロー、クレーム対応が集中。さらに、その姿は他のスタッフにも影響を与えていた。特定のスタッフが高い成果を上げる一方で、「自分には難しい」と諦めてしまう人もおり、成長意欲が生まれにくくなっていたという。中には、社員になることを「責任と負担が一気に増えるもの」と捉えるアルバイトもいたという。

 金澤氏は「売り上げ自体は作れていたが、それは会社の仕組みによる成長ではなく、個人の頑張りに頼った不安定なものだった」と当時の経営への違和感を語る。

 2022年に金澤氏が社長に就任すると、この違和感は危機感へと変わっていった。

 「どれだけ売り上げを作っても、その場の努力で数字を作っているだけで、顧客情報やノウハウといった資産が社内に蓄積されない。せっかく作った数字が、穴から抜け落ちていくような感覚がありました」(金澤氏)

 そこで目指したのが「農耕民族的な経営」への転換だった。顧客との関係を継続的に構築・維持しながら、長期的な価値提供につなげていく。そのためには、個人の経験や勘に依存するのではなく、顧客情報やノウハウを組織で共有し、誰が担当しても一定の品質で対応できる仕組みが必要だった。

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