AIが「読める」商品データを持つ企業が生き残る 王者ウォルマートの改革から見えた、成功の「3条件」: がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)
米OpenAIや米Googleがショッピング支援機能を相次いで強化し、多くの生活者が対話型AIに「子どもの遠足向きのおやつ、アレルギー対応で」などと聞く日が近づいています。AIエージェントが参照するのは、整備された商品データです。あなたの会社の商品マスタは、AIが「読める」状態になっているでしょうか。
日本の商品情報整備「30年超」の頓挫の歴史
日本はどうでしょうか。小規模小売プレーヤーが多く、NB商品比率が高い日本では、個別企業単独ではなく、製・配・販が協働して商品情報の標準化をしようという議論が起こりやすい傾向があります。これは30年以上前から繰り返し挑戦されてきたテーマです。
1988年、流通システム開発センター(現GS1 Japan)はJICFS(JANコード統合商品情報データベース、JAN Item Code File Service)を稼働させ、JANコードにひも付く商品属性の一元管理を目指しました。
しかしながら、この種の取り組みは業界全体への浸透には至りませんでした。商品情報は、メーカーから卸、小売と流通する過程で、各社が独自フォーマットで個別管理し続けています。
経済産業省の「商品情報連携標準に関する検討会」でも、製・配・販が「手作業によるバケツリレー」に依存している現状が業界課題として取り上げられました。
筆者が現場で目にする実態としても、商品マスタが部門や担当者単位で分散管理され、更新運用が属人化するケースは少なくありません。その結果、データ品質の劣化が構造化しています。業界関係者の多くが共感する実態ではないでしょうか。
2024年末から経済産業省が再び制度面から後押しを始めました。過去の頓挫を知る立場からすれば「またか」という見方もあるでしょう。ですが今回は、前提条件が根本的に変わっています。
日本が乗り越えるべき壁
商品データ基盤の整備が小売業にもたらすメリットは、大きく4つに整理できます。
第一に、オムニチャネルを含めたECの売り上げ拡大です。商品属性の粒度と正確性が上がれば、サイト内検索の精度が上がり、レコメンドのパーソナライゼーションが効きます。
第二に、生成AIによる属性抽出・画像からの情報取得・多言語対応を組み合わせた業務効率の改善。第三に、販売分類や用途分類といった分析用属性の整備によるID-POS(個人の購買データ)の分析・カテゴリーマネジメントの高度化があります。
第四に、リテールメディア・サイト内検索・AIアシスタント・SNS流入など、あらゆる送客チャネルの効果向上。広告の着地先であるPDPの品質が低ければ、どのチャネルも投資効果は落ちます。
一方、課題も明確に存在します。最大の壁は「製・配・販の協調」です。商品情報の標準化は、メーカー・卸・小売が共通フォーマットで情報を出し合わなければ実現しません。競合他社と「情報インフラ」を共有するという発想自体が、日本企業の競争文化と摩擦を起こします。過去30年の頓挫は、技術の問題ではなく、この協調コストの高さが原因でした。
加えて、チャネルごとに乱立する業務特化型システムのサイロ化、そして短期で売り上げに直結しにくいインフラ投資への経営層の理解不足も障壁となります。
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