「潰れたって聞いたよ」 倒産寸前から年商2.5億円へ、二度の経営危機を乗り越えた「トタンバケツメーカー」(1/6 ページ)
「オバケツ、潰れたって聞いたよ」。一時は年商500万円まで落ち込んだ「トタンバケツ専門メーカー」はどのように自社ブランドをを磨き上げ、経営危機を乗り越えたのか。取材した。
ダイハツ工業、旭化成、NOT A HOTELなど登壇:
無料セミナー「ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏」開催!
ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
AIを活用したデジタル戦略が必須となる中、ダイハツ工業や旭化成、NOT A HOTELなどビジネス変革に取り組む企業の「当事者の声」を通じて、現場のリアルな課題解決方法を探ります。視聴登録はこちらから。
- 開催日:2026年7月8日(水)〜8月5日(水)
- 形式:オンラインセミナー
- 参加費:無料
雨の日のセブン-イレブン。店頭に置かれた「トタン製の傘立て」を見かけたことはないだろうか。
その傘立てを作っているのは、兵庫県姫路市にある社員13人の小さな町工場、渡辺金属工業だ。1923年創業の同社は、日本に残る最後の「トタンバケツ専門メーカー」でもある。
トタンバケツとは、亜鉛メッキを施した鋼板を加工して作る金属製のバケツだ。丈夫で長持ちする上、重厚な見た目に反して手に取ると意外と軽い。しかし、価格は高いため、1970年代に軽くて安価なプラスチックバケツが急速に普及すると、その需要は激減した。同社も例外ではなく、一時は年商500万円にまで落ち込み、存続の瀬戸際に追い込まれた。
「どうにかせなあかん」と開発したのが、自社ブランド「OBAKETSU(オバケツ)」だ。大ヒットを果たし、数年で2億円を売り上げるまでに成長。倒産寸前だった会社を立て直したものの、一息つく間もなく、次の困難に直面する。海外製模倣品の流入によって、再び経営危機に陥ったのだ。二度目の危機を救ったのは、意外にも「米びつ」(炊飯用の米を保管するための容器)だった。
廃業寸前から二度の復活を遂げ、現在は社員13人で年商2.5億円を売り上げる。日本最後のトタンバケツ専門メーカーは、なぜ生き残ることができたのか。4代目社長の渡辺政雄氏に話を聞いた。
トタンバケツの需要だけで売り上げが立つ時代
1923年(大正12年)、渡辺氏の曾祖父が「渡辺製作所」を創業した。昭和までは学校や家庭、工事現場などで水汲み用にトタンバケツが広く使われており、需要が旺盛だった。販促活動をしなくても売り上げが立つ時代だったという。
渡辺氏にとって家業の記憶といえば、休みの日でも朝から晩まで工場でバケツを作り続けていた3代目の父の背中だ。
特に印象深いのが夏休みの工作だった。工作の宿題に、職人の父は当の息子以上に熱中した。工場の専用機械を使い、空き缶を切り貼りしたクーラーボックスや、足でペダルを踏むと空き缶を押しつぶせる「空き缶潰し器」など、小学生の工作の域を超えた作品を次々と生み出した。
「常に仕事に意識を向けながらも、子どもの宿題に熱中してしまう父の姿を、かっこいいなと尊敬していました」
また、祖父から「男の子だ。跡取りができた」と物心がついたときから聞かされてきた。スーツ姿のビジネスパーソンに憧れた時期もあったが、周囲の期待に応えることが好きだった渡辺氏は家業を継ぐ未来を自然に受け入れていた。
だが、その頃の会社は存続の危機に直面していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
10月下旬、なか卯での「床に置かれた食器」の写真がSNSで拡散された。その後のなか卯の対応が適切だったようには感じない。では、どのような対応が求められるのか?
中小企業は「消去法」で50代を採用する 早期退職の前に知るべき現実
大企業の早期退職募集の波が広がりを見せている。申し込みシニア社員も多いようだが、中小企業への転職は簡単ではない。構造的なギャップを解説する。
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
Tシャツなどのオリジナルプリントグッズの製作を展開するフォーカスは2020年のコロナ禍、倒産の危機に陥った。しかし現在はV字回復を果たし、売り上げは約38億円に上る。この5年間、どのような戦いがあったのか?
病院内のカフェ、なぜ「タリーズ」が多い? 100店舗展開を支える運営戦略
タリーズは4月、100店舗目となる病院内店舗をオープンした。他のカフェチェーンの病院内出店は30〜50店規模にとどまるが、なぜタリーズが抜きんでているのか。タリーズが病院内に出店する理由を取材した。
退職一時金を「廃止」する会社は増えるのか 優秀人材が逃げる給与シフトの成否
王子ホールディングスは退職一時金を廃止すると発表した。過去3年間で廃止した大企業の事例はないが、今後この動きは加速するのだろうか。





