文系人材80万人“余剰”時代 でも「総務」の仕事がなくならない3つの理由(2/2 ページ)
経済産業省の発表によると、2040年に約80万人の文系人材が余るとの推計が出ています。AIでなくなる仕事の一つとして「総務」が指摘されていますが、総務がなくならないと考える3つの理由を社会保険労務士が解説します。
それでも総務の仕事がなくならない3つの理由
総務に求められる仕事とその重要性はどう変化するのでしょうか。筆者が、総務がなくならないと考える3つの理由を解説します。
(1)制度は作れても運用はできない
昨今は、育児・介護休業制度をはじめ、働き方に関する法改正が頻繁に行われ、その内容は年々複雑になりつつあります。規定を変更するだけであれば、外部の社労士に依頼したり、AIを使って書き換えたりすれば済むかもしれません。しかし、規定を整備するだけでは意味がありません。社員への周知や説明、実際に制度を利用する際の相談対応などは人が担う必要があります。
近年増加しているハラスメントへの対策も同様です。就業規則に禁止条項を設けたり、相談窓口を設置したりすることは比較的容易ですが、実際に問題が発生した際には個別の事情を踏まえた対応が求められます。
企業運営において重要なのは制度を作ることではなく、制度を機能させることです。総務はその役割を担っています。
(2)企業運営にはイレギュラー対応が多い
総務は「社内の何でも屋」と呼ばれることがあります。裏を返せば、マニュアル化できない業務が集まる部署ともいえます。
例えば、入社に伴う各種手続きや育児休業の取得支援、労災発生時の対応などは、制度自体は定められているものの、実際には従業員ごとの事情を踏まえた個別対応が求められます。また、行政手続きも電子申請が普及している一方で、例外的なケースでは行政担当者との調整や確認が必要になることがあります。
筆者は社会保険労務士法人に勤務していますが、労働・社会保険に関する申請や届け出の代行業務の依頼は現在も多くの企業から寄せられています。AIによって手続き業務が大幅に減るとの見方もありましたが、現場では依然として人による判断や対応が求められているのが実情です。
AIは過去のデータを基に回答できますが、前例のない問題や複数の利害関係者が絡む調整業務は苦手とします。企業が活動する限り、こうしたイレギュラー対応がなくなることはないと考えられます。
(3)AI時代だからこそ、新たな役割が生まれる
AIの活用が広がる中で、企業には新たな課題への対応が求められています。
代表的なものが、個人情報保護や著作権への配慮、AI利用ルールの整備です。例えば、従業員が業務でAIを利用する際に顧客情報を入力しても問題ないのか、生成された文章や画像をどこまで利用できるのか、といった判断が必要になります。
専門部署がある大企業であれば、法務部が対応策やガイドラインを策定できますが、中小企業では総務などが旗振り役となる可能性が高いでしょう。加えて、情報セキュリティ対策や社内ガバナンスの整備など、企業全体のルールづくりの重要性も高まっています。
こうした課題に対応するためには、単にAIツールを導入するだけでは不十分です。利用ルールを定め、従業員に周知し、問題が発生した際には適切に対処する体制が必要になります。つまり、AIは総務の仕事を減らすだけでなく、新たな役割を生み出しているともいえるのです。
AIによって総務の定型業務は減っていくでしょう。しかし、企業活動を支える役割までなくなるわけではありません。AI時代において総務は、「社内の何でも屋」から「企業活動を支えるインフラ担当」へと進化していくのではないでしょうか。
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