「人間のクズ」発言、「意図的な無視」……横浜市長のパワハラ問題から考える組織リスク:働き方の見取り図(2/2 ページ)
パワハラへの社会的な目が厳しくなる一方で「パワハラを恐れて部下を叱れない」という上司も増えている。では、望ましい業務指示とはどのようなものなのか。横浜市長のパワハラ問題を手掛かりに、上司のタイプを4つに分類して考える。
「強圧的」「弱腰」だけではない 上司の業務指示を4タイプ
パワハラをしないことは大前提ですが、それだけで望ましい上司だとは限りません。業務指示が一方通行になっていないか、部下の意見や疑問を受け止めているかという点も、チームで仕事をする上では重要です。
上司が部下に業務指示する際にパワハラに該当するか否かを縦軸、部下の意見を聞く耳を持っているか否かを横軸とすると、4つのタイプに分類できます。
パワハラに該当するものの、部下の意見を聞く耳も持っている場合は「閉鎖的双方向型」です。パワハラをするような上司は部下の意見を聞く耳など持っていないのではないかと思われがちですが、自身がパワハラ上司であることを自覚していない人は少なくありません。
閉鎖的双方向型の上司は、部下が「なぜ意見を言ってこないんだろう?」といぶかしく思っている可能性があります。部下からするとパワハラ上司に意見が言いづらくて当たり前ですが、上司は意見を言ってこない部下に対して不満を募らせて、さらにパワハラがひどくなることもあり得ます。
パワハラに該当し、聞く耳も持っていない場合は「強圧的命令型」です。上司は一方的に上意下達の指示をするだけで、部下を駒のように動かせると考えています。何らかの危機が迫り、組織が緊急避難的に動く必要がある場合には、迅速なトップダウンの指示が機能することもあります。しかし、日常の職場運営では、最も避けたいタイプと言えるでしょう。
パワハラに該当せず、部下の意見を聞く耳を持っている場合は「開放的双方向型」です。部下からも意見を伝えられ、きちんと耳を傾けてディスカッションできます。部下の受け取り方に誤解があれば上司が分かりやすく説明し直すなど、双方向のやり取りが活発に生まれやすくなります。
パワハラには該当しないものの、意見を聞く耳を持っていない場合は「柔和的命令型」です。パワハラ上司ではないので、部下からすると優しそうで話が通じるように見えます。しかし、意見を伝えても“のれんに腕押し”状態で反応がなかったり「なるほど、そうだね」などと同意したように見せかけて、結局は指示内容を変えない、といった対応を取ることもあります。
日常的な業務指示において、望ましいのは開放的双方向型です。閉鎖的双方向型の場合は、上司側に部下の意見を聞く姿勢があるため、本人に自覚を促すことで改善する可能性もあります。ただし、部下本人が直接伝えることが難しい場合には、上司の上司や人事・相談窓口など第三者を介する方法の検討も必要かもしれません。
「上司ガチャ」から抜け出せるか パワハラをなくすために必要なこと
人権意識の観点からはもちろん、チームで良い仕事をするという観点から考えても、上司はパワハラに当たらない適切な業務指示をする必要があります。
ただ、以前書いた記事(「パワハラの元凶なのに……『追い込み型』のマネジメントがはびこる理由」)でも説明したように、中には無意識にパワハラをしてしまっている場合もあります。自身の業務指示の仕方を振り返ってみて、開放的双方向型かどうか考えてみることは、同時にパワハラ上司になってしまっていないかの確認にもなります。
一方、部下としては弱い立場に置かれているだけに、上司の業務指示の仕方を自分だけで変えるのは容易ではありません。運良く開放的双方向型の上司に当たることを願うしかない、と考えてしまうのも無理はないでしょう。しかし「どんな上司に当たるか」という上司ガチャに身を任せるしかなかった状況に、別の道筋を示したのが横浜市の事例です。
職員が声を上げ、第三者による調査を経てパワハラ行為が認定された一連の流れは、職場で問題が起きた際の対応を考える上で、一つの事例になるでしょう。無意識にパワハラをしている上司にとって、横浜市の事例は今後、ひとごとではなくなるかもしれません。経営者や管理職など強い立場にある人は、自身の業務指示の仕方がどのタイプに当てはまるのかを確認することをお勧めします。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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