「会議中意識が飛ぶ」「判断が遅れる」──“寝ても眠い”社員たち 企業が把握すべき経済損失「年19.8兆円」のリスク:NRIが調査(2/3 ページ)
「睡眠時間は足りているはずなのに、日中は頭が働かない」──。日中の過度な眠気による経済損失は「年間約19.8兆円」に上り、今や経営課題の一つになっている。
「会議中に意識が飛ぶ」「作業スピード低下」 職場でヒヤリハットの経験も
前述した経済損失は、欠勤や仕事中の生産性低下を金額に換算したものだ。その背景にある具体的な支障をみるため、NRIがEDS群と「眠気なし群」を比較したところ、EDS群では日常業務のさまざまな場面で支障が多く見られた。
「会議中やPC作業中に意識が飛ぶ・うとうとする」と回答した割合は、EDS群の30.0%に対し、眠気なし群は1.3%。その差は22.7倍に上った。
他にも「作業スピードが極端に落ちる」は16.8倍、「入力ミスなどの単純ミスが増える」は13.5倍だった。
こうした眠気は、本人にとっても自分の意思だけでは制御しにくい。EDS群の41.0%は、眠気をコントロールできないことに苦痛や不安を感じていた。さらに34.0%には「やる気がない」「怠けている」と周囲から誤解された経験があった。
そして、仕事上の支障が重要な判断や安全確認に及ぶと、問題は個人の作業効率だけでは済まない。重要な商談や会議で内容が頭に入らない、重要な判断を先送りする、書類やPCを置き忘れたり誤送信したりする、安全確認の手順を飛ばす、運転・機械操作中に事故直前の状況になる……。こうしたヒヤリハットの経験率は、EDS群では眠気なし群の3〜12倍に上った。
中でも、安全に直結する業務ではリスクの大きさが目立つ。運転業務に従事するEDS群では、49.0%が運転・操作中に「ハッとしてブレーキを踏む」といった事故直前の体験をしていた。
重要な意思決定を担う管理職でも、仕事上の支障が確認されている。部長・課長級のEDS群では、53.0%が「重要会議で居眠りをした、内容が頭に入らなかった」と回答。47.0%が重要書類やPCの置き忘れ・誤送信を、46.0%が重要な判断の先送りを経験していた。
こうしたデータを踏まえ、宗氏は日中の過度な眠気を、単なる個人のパフォーマンス低下ではなく、企業が向き合うべきリスクとして捉える。
「重要な意思決定や組織マネジメントを担う管理職や、安全第一の現場における過度な眠気は、企業にとって致命的な経営リスクとなり得ます」(宗氏)
医療機関の受診経験は13% 未受診者の半数が「ただの疲れ」と判断
このように、EDS群では日中の眠気が仕事や判断、安全にまで支障を及ぼしている。ただそれは、EDS群の当事者たちが眠気を放置しているからではない。
調査の結果、眠気を感じたときにその場で眠気を覚まそうと身体を動かす人は53.0%、カフェインや食べ物を取る人は43.0%、仮眠を取る人は41.0%に上っている。日常的な対策でも、EDS群は眠気なし群に比べて、サプリメントや寝具、アプリなど外部の製品やサービスを活用する傾向が見られた。
セルフケアにとどまらず、医療機関や産業医に相談する人もいる。医療機関や産業医に相談したEDS群では、33.0%が「高い効果を実感した」と回答している。
ただ、EDS群全体に目を戻すと、医療機関を受診した経験がある人は13.0%にとどまる。受診しない理由として多かったのは「単なる睡眠不足や疲れだと思うから」で51.0%を占めた。その一方で、EDS群の58.0%は、我慢できないほどの強い眠気を経験していた。さらに、気分の落ち込みなど抑うつに関連する症状や、睡眠時の呼吸停止・激しいいびき、入眠困難や中途覚醒といった症状も4割前後に見られた。
「日中の過度な眠気は、身体・精神の健康課題を示す重要なサインです」(竹原氏)
さらに、職場で取れる対策には、本人の意思だけでは決められないものもある。EDS群の半数以上は、自身の体質や不調に対する職場の理解が十分ではないと感じていた。仮眠や柔軟な働き方、体調についての相談がしにくい職場環境も、日中の眠気への対処や早期受診を妨げる要因になるという。
自分で眠気をしのぎ、製品やサービスも試している。しかし、必要に応じて医療機関を受診することや、職場で仮眠・柔軟な働き方を取りやすくすることなど、本人だけでは変えにくい部分はどうしても残る。日中の眠気への対応を、個人の自己管理だけに委ねることには限界があるのだ。
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