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「AIを導入しただけ」で利益の上がらない“がっかりDX”脱却 年商1.9兆円の米EC大手に学ぶ「独自データ」の作り方: がっかりしないDX 小売業の新時代(2/4 ページ)

AIモデルの性能は急速に高まり、どの企業も最先端のモデルを利用できる。それでも経営成果に差がつくのは、AIに渡すデータと、AIを組み込む業務の設計が異なるからーー。自社固有のデータを蓄積する米EC大手Wayfairの事例から、日本の小売業が学べるAI導入のための点検手順を紹介する。

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4000万点超を扱うWayfairの課題

 この4要素を業務の中でつくっている企業として、家具・ホーム用品を扱う米EC大手Wayfair(ウェイフェア)が参考になります。

 2025年の売上高は124億5700万ドル(約1兆9300億円、1ドル155円換算)。世界2万社超の仕入先から4000万点超の商品を扱い、毎日数千点の新商品が加わります。

 この規模で問題になるのが、商品情報の矛盾です。

 例えば、商品説明では長さ6フィートのソファが、実測では7フィートある。仕入先ごとに、幅や奥行きの測り方が異なる。商品説明と寸法入り画像の数値が一致しない──。

 家具の場合、数センチの誤差でも顧客体験を損ないます。届いた商品が想定と違えば、返品や再配送が発生し、顧客の信頼も失います。ウェイフェアがAIで取り組んだのは、この商品寸法の検証でした。

AIは矛盾を見つけ、確認すべき商品を絞り込む

 ウェイフェアのAIを活用した商品寸法の検証は、次のような流れになっています。

(1)商品名、説明文、特徴などのテキストと、寸法が記載された画像から数値を抽出する

(2)抽出した値を仕入先の登録値と照合し、矛盾の可能性を判定する

(3)AIは、複数の情報源が一致し、信頼できる場合に限って推奨値を出す

(4)信頼度が低いケースや差が小さいケースは除外する

(5)問題があると判定した商品は、仕入先に確認を求める

 ウェイフェアはAIを「正解を決める装置」ではなく「確認すべき商品を絞り込む装置」として使っています。

 検証結果が正しいかどうかを測るため、同社は約5000件の人手ラベルを用いてモデル設計を評価しました。その後、10万商品超を対象に仕入先が確認するパイロットを実施しました。

 最終的な矛盾検知の適合率は85%超、再現率は70%超でした。

 100件に換算すると、AIが「矛盾あり」と指摘した100件のうち、85件超は実際に矛盾がある、という意味です。これが適合率です。一方、実際に矛盾がある100件のうち、AIが見つけられるのは70件超です。これが再現率です。

 以前の機械学習モデルは適合率50%未満、再現率7%でした。指摘の半数以上が誤検知で、実際の矛盾も100件中7件しか拾えていなかった計算です。

 新しい仕組みでは、指摘の確かさと、矛盾を拾う力の両方が大幅に改善しました。


(筆者作成)

 ただし、矛盾を全て見つけられるわけではありません。同社は、見逃しを減らすこと以上に、誤検知による不要な確認を仕入先に求めないことを重視しています。そのため、再現率より適合率を優先しています。技術指標と業務上の制約を結び付けているのです。

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