「EXA IIa」の撮影:-コデラ的-Slow-Life-
シンプル・質実剛健・軽快ボディの「EXA IIa」でさっそく撮影してみた。レンズは、円形絞りなどていねいな作りが魅力のZeiss Jena(ツァイス イエナ)50mm/F2.8。さて、このレンズの撮り味は?
もともとはスプール欲しさで購入したEXAだが、直ってみるとなかなか軽量でイイ感じだ。いや軽量とは言っても今どきのカメラに比べたら十分重いのだが、普通にビューファインダで撮れることもあって、軽快に撮影できそうな気がする。
さっそくZeiss Jena(ツァイス イエナ)50mm/F2.8を付けて、撮影してみた。このレンズは昔のものだけあって、作りがいい。円形の丁寧な絞りは、まさに「キカイの瞳」と言ってもおかしくない。
露出計で露出を測り、シャッタースピード順に撮影してみた。あいにくシャッタースピードが最高で1/250秒までしかないので、開放のF2.8までは開けられなかった。だがほぼ全速で露出が合っているところを見ると、ちゃんと動いているようだ。
シャッタースピードを決めるダイヤルは、数値のところでカチッとロックされるわけではなく、何の引っかかりもなくするする回ってしまう。内部ではこの回転に合わせて雲形のような不思議な形のカムで速度制御しているので、きちんと数字のところに合わせないと、変なスピードになるだろう。
EXAもEXAKTAも一眼レフではあるが、ミラーはクイックリターンではない。つまりシャッターチャージしないとミラーが降りないので、構図がわからないのである。
したがって撮影中は、撮ると決めたらフィルムを巻き上げなければならないので、後へは引けなくなる。そんな覚悟が要求されるカメラなのである。もっとも背面にある小さなダイヤルで、シャッターのロックはできる。EXAKTAがシャッターカバーという強制的なロック手段であったのに対し、この部分だけはEXAのほうが進んでいる。
ただテスト撮影中にこのロックダイヤルが抜けたのかどこかに落としてしまい、大変なことになった。単に差し込んであるだけなので、こういうこともあるわけだ。なんとかこれまで歩いたルートを逆に辿って見つけることができたのでよかったが、車にでも踏みつぶされていたら、相当ガッカリなことになっていただろう。
「撮り味」という感触
現代のデジタルカメラは、レンズだけでは絵のテイストは決まらない。撮像素子やプロセッシングなど、いろいろな要素が含まれる。だがこの時代のカメラは、もうほとんどレンズで決まる。フィルムを良いヤツにするとかの要素はあるが、まあほとんどレンズの撮り味がすべてである。
ZEISS JENA 50/F2.8の特徴は、その被写界深度の浅さと、ボケ味の美しさにあるように思う。前ボケも後ろボケもどことなく芯が残って、形やディテールがちゃんとわかるのがいい。絞りの形がボケに与える影響はいろいろな論理が存在するが、やはり人間の瞳に一番近い形のほうが、人間が見たときに自然に見えるという論理は変えようがないのかなぁと思う。
また深度が浅いことで、フォーカスが決めやすいというのも1つの特徴だろう。一般的な一眼レフカメラは、絞りをセットしても、ファインダを覗いているときは開放で、撮った瞬間のみ絞りが設定値まで閉じるものだが、EXAやEXAKTAはこのような機構はない。
このレンズの場合は下部にレバーがあり、ここをスライドさせておくと、絞りをセットしても開放状態になる。レンズ部と連動するシャッターを押すと、まず絞りがセット値に閉じたのち、シャッター幕が動作するという2段構えになっている。こういう写真撮るというプロセス1つ1つの手続きを分解して、自分でトレースしていくということも、また楽しい。
50mmという画角も今では中望遠扱いだが、昔の標準レンズはみんな45mmから50mm程度であった。風景を漫然と撮るには狭いが、何か主題を決めて撮るには、その主題が綺麗に浮かび上がって、使いやすい画角である。
レンズは以前から使っていたものなので、その良さは知っていたが、本体の軽快さでより使いやすくなった。EXAKTAは長時間露光などの特殊撮影に回して、通常の撮影はこっちのEXAが活躍しそうである。
小寺 信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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