アニメにはない「予想外」求めて――「ヘブンズ・ドア」マイケル・アリアス監督インタビュー:+D Style News(2/2 ページ)
映画「鉄コン筋クリート」のマイケル・アリアス監督が放つロードムービー「ヘブンズ・ドア」。実写ならではのライブ感を求めて新境地を開拓したアリアス監督にインタビュー。
――原作(「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」)を選んだ理由について教えてください。
アリアス 僕は作品をリアルタイムに見てたわけじゃなかったんだけど、仲のいいプロデューサーに紹介されて見ました。最近の映画だし(原作公開は1997年)、完成されたものだったから、自分がこの作品をリメイクする必要があるのかどうか、すごく悩みましたね。
けど、「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」の“根っこ”は、鉄コンと一緒で普遍的なものなんです。時代にも文化にも依存しないし、ジャンルにも依存しない。コメディーになってもアクションになっても、ムーディーな作品になっても――そこには誰もが共感できる何かがあると思った。だから、日本にあった「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」というのを、作れるんじゃないかと考えるようになりました。ドイツのオリジナルのストーリーを自分なりに解釈して、日本の「ヘブンズ・ドア」を作ってみることにしたんです。
――その結果、主人公2人組の一方が男性から少女になっていますよね? 作風も、原作はコミカルでワイルドなテンポの良さがありましたが、アリアス版ではもうちょっとシリアスで、どこか夢の中のような、イノセントな雰囲気を感じました。
アリアス そこはまさに“僕風”ですね。僕の好みでもあるし、気分でもあるし。両方見てもらえれば分かるけど、基本的にストーリーの構成はオリジナルとほとんど一緒。それなのに意外に違うものになったことが不思議で(笑)。
やっぱり、ドイツでオリジナルを作っていたトーマスさん(トーマス・ヤーン監督)たちが吸っていた空気と、日本の長瀬さんとかマユちゃん(福田麻由子さん)たちが吸っていた空気の違いが表れたんだと思います。天気だって違うし……ベルリンじゃなくて茨城県で撮ってたとかね(笑)。映画の出発点は一緒でも、いろんなことが影響して、化学反応を起こして、全然違うものになる。それも、実写の良さだと思います。
――原作の製作に携わったツィクラーさんから見た「ヘブンズ・ドア」は、どのような印象でしたか?
ツィクラー リメイクだけど、ユニークな作品になっているね。国を越えてこんな機会に恵まれることはあまりないから、ドイツで完成した作品を見せてもらった時はすごく興奮したよ。僕らがオリジナルを作っているときは、「おとぎ話のような雰囲気がでるといいな」と考えていたんだけど、「ヘブンズ・ドア」も特別な雰囲気のある作品になっていると感じた。キャラクターを“少女”にしたのは最高の判断だったと思うよ。すでに男性2人の物語というのは語られてしまっているものだしね。
――なるほど。“少女”役には福田麻由子さんを抜擢しましたが、最後にキャスティングについても少し語っていただけますか?
ツィクラー それは僕も聞きたいな。
アリアス 長瀬さんのキャスティングはかなり早い段階から決まっていました。プロデューサーから紹介されて、出演している作品を見て魅力を感じました。アドリブで切り抜ける力があって、これなら少女とのやりとりもうまくいくと思ったんです。
一方で、少女の春海は自分の中のイメージにあった役者を見つけるのが本当に大変でした。何度も何度もオーディションをしたんだけど、ちゃんと13歳らしく見える子っていうのがなかなかいなくて……キャラクター像を変えようかなんて話も出ていた。そんな中、最後のオーディションで福田さんが来たんです。
プロデューサーや助監督など5〜6人がその場にいたんですが、オーディションに疲れちゃって、ちょっとフラストレーションがたまっていた。でも福田さんが部屋に入ってきたら、雰囲気がパッと変わったんです。こっちが質問をすると、向こうは返事をしないで考え込んだりする……怒らせたのかなって心配になったりね(笑)。長瀬さんが演じる勝人との対比で、精神年齢は高く感じさせるような演技を求めていたんだけど、まさにピッタリでした。撮影中もそのイメージを再現しようと努力してくれました。
ツィクラー 僕の息子が13歳なんだけど……全然違うんだ(笑)。表情のバリエーションが豊かで驚いたよ。
野性味溢れる長瀬さんと、背伸びした少女を熱演する福田さんのコンビに、映画「レオン」を思い出した筆者。勝人と春海が、ラストシーンで見せる静かなドラマは必見だ。原作を見た人がニヤリとさせられるシーンもちりばめられているので、日本版、ドイツ版を見比べてみるのもおもしろい。
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