デビッド・フィンチャー監督が語る「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」:テクノロジーのチャレンジにも満足
アカデミー賞最多13部門ノミネートが話題となっている「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」のデビッド・フィンチャー監督にインタビュー。「人間ドラマの部分も、テクノロジーのチャレンジにも満足」
本年度アカデミー賞で最多13部門にノミネートされた「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」。この世に老人の姿で産み落とされ、だんだんと若返っていく主人公ベンジャミン・バトンの、文字通り、数奇な人生を映し出していく。本作についてデビッド・フィンチャー監督に話を聞いた。
結ばれるべくして結ばれる関係性に、共感してもらえると思う
さて、F・スコット・フィッツジェラルドの短編小説に基づく映画化の話は、ずいぶん前からあった。最終的にはフィンチャーにチャンスが巡ってきたが、スピルバーグはじめ名だたる監督が興味を持ったこともある。このシナリオに魅せられたのはなぜだろうか?
「人間は愛し合って、結婚し、いつかは子供が生まれ、そして別れも経験する。シナリオには、主人公2人はもちろん、例えば戦争で息子を亡くすという時計職人のエピソードなど、さまざまな生き方や生活がきっちりと描かれていた。そこに感動したんだ」(フィンチャー監督)
フィンチャーのフィルモグラフィーを振り返ると、「セブン」「パニック・ルーム」「ゾディアック」などダークな作品が多かった。それに対して「ベンジャミン・バトン〜」はいつもと違う作風だが、堂々たる完成度だ。「若返るベンジャミンに対して、恋人のデイジーは普通に年を重ねていく。本当の親を知らないで育ったベンジャミンは、アウトサイダーとしてどのように生きていくかを考える。一方のデイジーは美しく生まれ、バレエの才能もあるが、ケガで挫折してしまう。それぞれの道を歩んでいた2人が再会し、結ばれるべくして結ばれるという関係性に、共感してもらえると思う。また第二次大戦や1950年代のパリといった色々な時代も再現できた。人間ドラマの部分も、テクノロジーのチャレンジにも満足しているよ」
プラピ、“強烈な個性がない”
「セブン」「ファイト・クラブ」に続いて、ブラッド・ピットとは3度目のコラボ作となるが、彼の魅力についてはこう分析する。「ハリウッド俳優は強烈な個性やウリみたいなものが1つはあるけど、彼にはそれがない。決して悪い意味ではないよ。つまり、どんな作品でもこなせて、作品の一部になれるということ。これは凄いことだよ。作品ごとに違うブラッド・ピットを見られて、観客はこんなにいい俳優だったのか、と気づくんだ。あと、彼の人生(私生活)はヒステリックなほど騒がれているけど、彼自身は自分を見失っていないところがいいね」
生と死、そして老いというテーマ以外に、一期一会の大切さも描かれているが、最後に人生を変えるような出会いがあったか聞いてみた。「(しばらく考えて)ノー。心をオープンにして、その出会いを待っているよ(笑)」
ビジュアル派として鳴らしたフィンチャー。今回の“テクノロジーのチャレンジ”とは、ほとんどの年代のベンジャミンをブラッド・ピット本人に演じさせること。これには、デジタル・フェイス・ペインティングというテクノロジーを使用している。映画「ベオウルフ」などでも使われたもので、さまざまな年代&体型の俳優たちの顔と、特殊メイクを施されたブラッド・ピットの顔を差し替えていくのだ。この特殊メイクとVFXは完ぺき! ロバート・レッドフォード似の老人姿から、神々しいまでの輝きを放つ若き姿まで、さまざまなブラピを堪能できます。
関連記事
- ブラピ3年ぶり来日! 「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」をPR
映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」の公開を前にプラピが来日! 年を取るたびに若返るという数奇な主人公を演じた。 - 「拉致被害者に会いたい」とアンジェリーナ・ジョリー 映画「チェンジリング」会見
失踪した息子を探す女性を描いた映画「チェンジリング」の会見が行われ、来日したアンジェリーナ・ジョリーさんが登場。 - 最新シネマ情報:「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」
「タイタニック」のレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが、カップルとして再びスクリーンに登場。豪華客船沈没とは全く別次元の“危機”が、映画に横たわっている。 - 最新シネマ情報:「チェンジリング」
突然の息子の失踪、5カ月後に発見された“息子”は赤の他人だった――実話を基にしたクリント・イーストウッド監督の力作「チェンジリング」。アカデミー賞が有力視されるアンジェリーナ・ジョリーの熱演にも注目だ。 - 最新シネマ情報:「007/慰めの報酬」
007シリーズ最新作「007/慰めの報酬」。前作の1時間後から物語が始まる異例の連作となっている。劇場鑑賞前に、前作をチェックすることを強くオススメしたい。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.