タッチ操作と高度な自動シーン認識で安心して楽しめる、iVIS「HF M31」:フルHDビデオカメラ新時代(2)(2/2 ページ)
キヤノンの“iVIS「HF M31」は上位機ゆずりの使い勝手をコンパクトなボディにまとめた良バランス機。タッチパネル液晶と自動シーン認識によって快適な撮影が楽しめる。
再生時も便利なタッチパネル液晶
安心感といえばもうひとつ、iVISシリーズ初採用となるタッチパネル液晶の存在も重要だ。物理的なボタンを極力排すことで、意図せずボタンを押してしまう心配を軽減した意味は大きい。また、画面を直接タッチできることから、ピントや露出を合わせたい被写体を直感的に指定できる「タッチ追尾」の機能もついに実現している。後発の機能だけに、他社製品の研究もよくなされているようで、デュアルショットでは画面に触れると即座にタッチ追尾が開始される。タッチ追尾自体のオン・オフを設定する操作は必要なく、「カメラを操作している」という感覚を極力意識せずにすむ仕様になっている。
タッチパネルの採用は、撮影時だけでなく、再生時の操作性も大きく変えた。とくに、撮影した映像の一覧を日付順で立体的に並べて見せる「3Dビュー」は、iPod touchのような「指をすべらせる」操作によって、目的の動画を直感的に見つけられるのが面白い。
一方で、さらなる研究をお願いしたい部分も。画面左下隅に置かれた「ZOOM」ボタンをタッチすると、ズームボタンと録画開始・停止ボタンが現れるのだが、録画開始・停止ボタンの位置が画面右下隅という、最も押しにくい場所にあるのが残念。グリップの下から右手を通す通常の握り方でカメラを持っていれば、本体背面のボタンを使えばすむことながら、ペットをローアングルで撮る場合など「通常ではない持ち方」をする場合に、手早く操作できるのは画面の右側ではなく左側であることが多いからだ。
手ブレ補正をさらに強化しつつ、暗部画質の改善はまだ
昨年モデルで一気に強化された光学手ブレ補正については、ズームの望遠側で安定した映像を得られる「パワードIS」が追加された。液晶モニターの左側にただひとつ用意されたボタンを押している間だけ、手ブレ補正をさらに強力にかける機能で、遠くで立ち止まっている子どもを撮ったりするのに活用できる。
このパワードISはボタンの位置も絶妙で、このボタンを押している間は左手で液晶モニターを支えることになるから、カメラの構え方自体が安定度を増すという効果も得られる。ただ、パワードISがオフの状態でも、より強力な補正を行なう「ダイナミックモード」は若干強力すぎる印象で、カメラの動かし方によってはやや不自然な動作も見られた。
デュアルショット/MXPモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。公園で女の子といっしょに歩き、話をしつつ、自らは後ろ向きになったり横に並んだりしながら撮影した。会話は続けたいし、自分の足元にも気をつけなければならないので、画面に集中できる場面は少ない。こうした状況で、大きくカメラを振ってしまうと、ややぎこちない動きが見られるものの、撮影者の歩行によるブレはよく抑えられていて、十分見られる映像となっている
他社製品に比べて課題とされてきた暗部画質の根本的な改善は今回も見送られたが、外部センターによるすばやく的確なオートフォーカスや、何より精細な細部描写と自然な色再現というiVISシリーズならではの特徴は健在だ。
デュアルショット/MXPモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。筆者の自宅で天井の蛍光灯をわざと一段階暗く設定。肉眼では十分明るいと感じられる程度だ。この室内で、ダークブラウンの机の上に置いた色鉛筆を撮影した。細かくチェックすればノイズが多く、ディテールも甘くなりつつあるが、全体としては雰囲気がよく出ている
デュアルショット/MXPモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。夜の公園を撮影した。かなり明るい街灯がいくつもついているので、真っ暗というわけではないのだが、それでも暗いことは間違いない。HF M31はオートの状態ではなるべくハッキリ写そうと、思い切って明るめに描写する傾向にあり、全体にノイズが多く、細部の描写もかなり甘くなっている
今回はデュアルショットを中心に、iVIS HF M31の使い勝手を試したが、こだわりオートやタッチ追尾の精度が高いだけでなく、前述の気配りが利いて、撮影中に感じる安心感では頭ひとつ抜けていると感じた。タッチパネルによる新たなインタフェースも、一部に課題が残るものの、撮影を楽しく進められる要素としてポイントが高い。難しいことは考えないで被写体に集中できる1台だ。
デュアルショット/MXPモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。女の子に離れた場所に立ってもらい、こちら側に歩いてきてもらった。ズームの望遠側で撮っているが、光学15倍の威力でよく寄れるし、望遠側での手ブレ補正の利きも満足のいくレベルだ。向こうでじっと立っているシーンではパワードISもありがたい
デュアルショット/MXPモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。カメラレビューで毎回訪れている東急世田谷線の電車を撮影。日陰に入った中央の電車にピントと露出を合わせており、強い日差しが当たっている家並み(画面左側)はどうしても白く飛んでしまうが、全体のバランスはよくとれている
デュアルショット/静止画Lモード(2100×1575ピクセル)による静止画撮影。デュアルショットに設定しておけば、シャッターボタンを押すだけで静止画を簡単に撮影できる。静止画の画角はすべてのモードで4:3になる仕様だ。細部までよく描写できていて、小さなサイズならプリントも大丈夫だろう。
モデル:倉岡生夏(くらおか きなつ)
1991年7月17日生まれ、東京都出身、AB型。チョコレート大好き(1日約1キロ食べています)! 動画共有サイト「zoome」で「チョコ姫★倉岡生夏」ムービー日記更新中
チョコ姫★倉岡生夏:http://zoome.jp/kinatsu/
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