第144回 単焦点レンズとボケの関係:今日から始めるデジカメ撮影術(3/3 ページ)
「一眼っぽい写真」として連想されることの多いのが、ボケの効いた写真。背景を上手にボカせれば被写体が引き立つし、上達したように感じられる。ということで、今回は単焦点レンズでボケを楽しみましょうという話。
近くからアップで撮りたいときはマクロレンズを
被写体に近づけば近づくほど、ボケは大きくなる。もっとぐっと近づいて撮りたい、と思ったらマクロレンズの出番。
マクロ撮影に使ったレンズ。カメラボディはニコン「D7000」で、装着しているのはシグマ「MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM」。10万円レベルの手ブレ補正付望遠系マクロレンズ。ちょっと高いけど、普段は明るい手ブレ補正付中望遠レンズとして使うのもいい。横にあるのはニコンの「AF-S Micro Nikkor 40mm F2.8G」。DXフォーマット用のお手軽な標準マクロレンズ。3万円くらいで購入できる
普通のズームレンズや今回紹介した単焦点レンズは、実はあまり被写体に近寄れない。料理の写真でぎりぎりくらい。これ以上近寄るとピントが合わなくなる。どこまで寄れるかはレンズのどこかに、あるいは説明書に書いてある。だいたい、一般的な一眼レフ用50ミリレンズだと「撮像素子から」40〜50センチくらいか。
もっとぐぐっと寄って大きく撮りたいときは「マクロレンズ」を使う。単焦点マクロレンズの場合、だいたい「等倍」で撮れるのが基本だ。
デジカメで等倍で撮れる、といわれてもよく分からんわな。
例えばニコンのDXフォーマット(いわゆるAPS-Cサイズ)の場合、撮像素子のサイズは23.6×15.6ミリである。等倍で撮るということは、この撮像素子サイズと同じ大きさのものを構図いっぱいに撮れるところまで近寄れるということだ。
マクロ撮影というと被写体にどこまで近寄って撮れるか、みたいに思われがちだけど、大事なのは、「被写体をどこまで大きく撮れるか」なのである。
今回用意したのは標準マクロレンズ代表でニコンの「AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G」、望遠マクロレンズ代表でシグマの「MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM」という2本。
まずは40ミリマクロから。
コーヒー豆(煎る前の木になってるところ)を撮ってみた。
寄れるって気軽にいうけれども、実はかなり大変で、近づけば近づくほどピントの合う範囲は狭くなるから、撮る際にほんの少しカメラがずれたり風が吹くだけでピントがずれちゃう。
こんな感じ。一見、変わらないけど、よく見ると、左右の写真ではピントの山が少しずれてる。
できればカメラを三脚に固定してマニュアルフォーカスで撮りたい。でもまあ、ここまで寄らねばならないケースってあまりなくて、40mm/F2.8マクロくらいなら比較的安価なので、近くも撮れる普通のレンズとして気楽に撮るのがよいかと思う。
こんな風にグラスの水滴を楽しむこともできるし。
本格的に外に出てマクロ撮影をしたいなら、中望遠以上のマクロがお勧め。標準マクロだとめいっぱい撮るにはレンズをぐぐぐっと被写体に近づけないといけない。そうすると、レンズやフードの影が落ちたり、相手によっては逃げちゃったりする。
望遠だと被写体との距離をちょっと長めにとれる(レンズと被写体との距離をワーキングディスタンスという)ので、無理に近づかなくてもよくなる。だから屋外でマクロ撮影を楽しみたいならこっちの方がいい。
そうするとこんなふわっとした花の写真を撮れる。
ちなみに、ここでぐっと絞り込むと、くっきりした写真になる。絞り込むとその分シャッタースピードが遅くなるので注意。
でも今回のテーマは「ボケを楽しもう」なので、絞り開放でふんわりとれる方を優先で。 花を狙ってたら、背中に花粉をつけてる虫を発見したので1枚。
こういう写真は望遠系マクロレンズじゃないと撮れない。
なお、マクロになればなるほどピントがシビアになる。ほんとに微妙なので(何しろ、ピントの合う範囲が数ミリなのだ)、三脚を使って何枚も撮ること。ちょっとした加減でピントがズレたり風でブレるから。
まあそういう困難があるから、うまく撮れたとき気持ちいいんだけど。
マクロレンズは「マクロ専用レンズ」じゃなくて、マクロ撮影「も」できるレンズだから、1本持っておくと何かと重宝するのである。
最後はちょいとネタ写真で。
ガスコンロの着火装置から出る火花。いやあきれいに火花が飛んでます。三脚を使ってマクロレンズで撮ってみた。もちろんガスは止めてあります。火が付いたらかなわんので。
マクロレンズがあると意外なものが面白く撮れるよ、という話でした。
モデル:鈴木薫(オスカープロモーション)
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