デジカメで培った画像処理が“意図ある3D”を実現する カシオ「デジタル絵画」:2012 International CES(2/2 ページ)
家電見本市であるInternational CESにて、カシオ計算機は「デジタル絵画」を展示した。家電見本市で「絵画」とは奇妙だが、この「デジタル絵画」は、デジカメの老舗である同社の画像処理技術が根幹をなしている。その詳細を樫尾和雄社長に尋ねた。
表現の幅を広げる「意図ある3D」
写真家や画家が強調したい部分を3D化するようなものはこれまでなく、それによる表現手法の増加に加えて、デジタル絵画によって「複製ができない」点を樫尾社長はメリットとして強調する。写真や絵画をスキャンしたり写真に撮って2次元として複製することはできるが、3次元の立体物は、そうした手段では容易に複製できない。そうした権利保護の観点からもメリットがあると樫尾社長はいう。
写真は銀塩の世界でも現実を写し取ることに苦労していただろうし、デジタル写真もそれを置き換えただけだった、とは持永氏。それに対して、デジタルであればHDRのように表現したいものを強調したり、部分的に切り出したり、合成したりすることが容易になる。「表現は作り出せるもの」(持永氏)という考えの発展した先が、今回のデジタル絵画だという。
立体化といっても、現実に即して何センチ持ち上がっているというように測って立体化するのではなく、作者が表現したいものを3Dという手段で拡大強調する。写真の楽しみ方を増やせるとともに、文化の発展にも寄与できる、と持永氏は語る。
昨今は、デジカメで3D写真を撮影したり、3D対応テレビで3D映画を見たりといった、3D技術が一般化しているが、持永氏は「結局は立体に見せている“偽物”」と指摘する。また、擬似的ではなく、あくまでも意図的な立体作品として作り出されるデジタル絵画について樫尾社長は「こういうものが世の中にあってしかるべきではないか」と述べる。
技術的にはほぼ完成しているが、ビジネスモデルについては「まだ検討中」(樫尾社長)の段階。ただ、「イメージングスクウェア」のような一般向けサービスというよりも、写真家や画家、コンピュータアートなどの作者の作品として利用されることを想定しているようだ。いずれにしても年内には新規事業として立ち上げ、来期には収益に貢献させたい考えだ。
「これまで、カシオ計算機はほとんどのものをデジタル化してきた」と樫尾社長。時計、計算機、楽器もデジタル化してきたのがカシオという会社で、「絵もデジタル化できるのではないか、そこから発想した」という。「あらゆるものをデジタル化したのだから、絵もデジタル化できるはず」と考えた時に、その絵のデジタル化とは何か、という問いがあり、それを樫尾社長は、「強調したい所を物理的に3D化する」ことだと考えたそうだ。
「問題は、出力されたデジタル絵画が、一般ユーザーにどれだけ親しまれるか」と樫尾社長は話すが、完成したデジタル絵画に対して樫尾社長は自信を見せており、今後の発展に意欲を見せている。
関連記事
- 撮影間隔0.27秒、オートでキレイな“快速”カメラ「EX-ZR200」
カシオ計算機が撮影間隔約0.27秒、起動時間約0.98秒。HDR撮影までも自動でカメラが判別するオートでキレイな“快速”カメラ「EX-ZR200」を発売する。 - 1秒未満の高速起動、HDRアート動画も撮影可能な“EXILIM”「EX-ZR15」
0.99秒の高速起動、0.13秒の高速AF、最短0.29秒の撮影間隔でテンポのよい撮影を行える“EXILIM”「EX-ZR15」をカシオが発売する。「HDRアート」は動画撮影時にも適用可能だ。(2011/9/13) - アニメ作成や画像販売機能を追加 「イメージングスクウェア」が大規模拡張
カシオ計算機は提供する「イメージングスクウェア」の大規模拡張を行った。アニメーション作成機能や画像変換サービスの強化が行われたほか、投稿した画像の販売も可能となった。 - コンデジ生き残り、鍵は「ストレスフリー」と「独自性」
携帯電話とミラーレスに挟まれたコンパクトデジカメの生きる道は何か。“EXILIM”「EX-TR100」の発売記念イベントでカシオ計算機が2つの方向性を示した。 - 「画像処理エンジンは100倍パワフルだっていい」――カシオ計算機(後編)
デジタルカメラは「カメラ」としては成熟期に入りつつあると言えるが、その概念を超えたところに新たな発展があるかもしれない。 - 「逆算モノづくり」へのシフト――カシオ計算機(前編)
高性能化するデジタルカメラは、デジタル技術によって近年では旧来的な「カメラ」とは異なった進化を遂げ始めた。その進化の向かう先はどこなのか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.