「EOS Kiss X6i」第3回――新撮影機能を試す。そして「EOS M」の感想:長期試用リポート
今回はEOS Kiss X6iの「連写+合成」撮影やデジタルフィルター系機能をチェックしてみよう。そして発表されたミラーレス一眼「EOS M」とデジタル一眼レフの「EOS Kiss X6i」では、どちらを選ぶべきだろうか。
さて「EOS Kiss X6i」の試用リポート、第3回である。これまでにもKiss X6iはコンデジやミラーレス一眼をかなり意識してるって話を書いてきたんだけれど、3回目もそこから。
なんかね、エントリー向け一眼レフとしてはかなり完成されてて、エントリー向けのモデルでこれだけ快適に使えれば特にツッコむとこはなかろう、という感じがしちゃって。このクラスで大きなコスト増にならずに強化できるところといえば、どうしてもデジタル系の機能ということになる。
で、Kiss X6iの新機能もまさにそうで、コンデジやミラーレス一眼で一般的になってきた、「連写+合成」系の機能が追加された。具体的には、4枚連写して合成することでノイズが少ない夜景写真を撮る「手持ち夜景」と、露出を変えた3枚を連写して合成することでダイナミックレンジの広い写真を作る「HDR」だ。
ただこうした「連写+合成」機能は、一眼レフにとってちょっとハードルが高い。手持ちで連写すると、当然1枚目と3枚目ではけっこうズレが出るものだが、一眼レフはミラーのアップダウンによる振動もある。では、Kiss X6iはこうした問題にどう対処したか。
HDRの効果が出やすいシーンを撮ってみた。
HDRの方は暗部が大きく持ち上がってるのがよく分かる。もうひとつ、画角の違いに注目。同じ位置で同じ18mmで撮っているのだが、HDRの方が画角が狭い。連写時の構図のずれに対処するために周辺部を捨ててるんだろう。
もう1枚。これも強烈な逆光ぎみの構図で。
歩いてる人のゴーストが出ちゃうのはしょうがないとして、よく見るとどちらもディテールが少しボケている感じが残念。一足早くHDR機能を手がけたカメラに比べるとちょっと甘いかな、という気はする。
次は手持ち夜景。連写+合成でどのくらい効果的なのか、ISO感度別作例のひとつとして撮ってみたのでどうぞ。ISO感度はISO12800までだが、拡張ISO感度としてISO25600まで用意されている。ISO感度は1段ずつで細かい変更はできない。
手持ち夜景モードではHDR時と同様、画角がちょっと狭くなる。で、通常のISO3200と比べるとノイズは少ない。だいたいISO1600時と同じくらいなので1段分の効果はある。
再生モードでフィルタ遊び
コンパクトデジタルカメラやミラーレスカメラで最近欠かせないのがデジタルフィルタ系の機能なのだが、X6iの撮影モードにその手の機能はない。でも再生時にクリエイティブフィルターをかけることができる。その中から、面白そうなところをいくつか。
新しいフィルターは2つ。油絵風と水彩画風。
EOS MはKiss X6iの小型版みたいなカメラだった
実は前回、前々回の原稿でしつこくミラーレス機と比べてたのは、キヤノンからミラーレス一眼がそろそろ出るというウワサがあったからだったりする。そのミラーレス一眼がKiss X6iを脇においやるような製品だったらKiss X6iはどうなるだろう、と思いつつ書いてたのだ。
そして発表されたのが「EOS M」。
- 写真で見る「EOS M」
- 「まだ巻き返せる」――ミラーレス市場に最後発から挑むキヤノン
- 「軽快さ」をプラスした“小さなEOS”――ミラーレスEOS「EOS M」登場
- 【速報】 キヤノン ミラーレスEOS 「EOS M」を発表
その中味はどうやら、良くも悪くもKiss X6iからミラーボックスや光学ファインダーといった「一眼レフ」部分を取り除いたものと言ってよさそうで、タッチパネルを使ったUIもハイブリッドCMOS AFによるAF動作も、ライブビュー時のKiss X6iそのものという印象だ。発売される9月までにチューンナップは進むだろうが、基本的なところは変わらないだろう。
EOS Mはライブビュー専用機ではあるのだが、X6iのライブビュー機能と大きな違いはなく、X6iを隅に追いやるようなカメラではなかったように思える。もちろんミラーのあるKiss X6iよりずっと小さくて軽く、携帯性が高いのだけれども、そのかわりバリアングル液晶じゃないしフラッシュも内蔵していない。
大きさはとても大事なのだけれども、撮れる写真の範囲でいえばKiss X6iの方がずっと広い。EOS MがX6iを脅かすような、野心的な“下克上”ミラーレス一眼じゃなかったのは残念ではあるのだが、おかげでしっかり構えてしっかり撮れるカメラがいいという人や、望遠やマクロ撮影をよくする人にすれば、Kiss X6iを選んでしまって問題ないとも言えるように思う。
関連記事
- 長期試用リポート:「EOS Kiss X6i」第2回――ライブビューで4つのAFモードを比較する
EOS Kiss X6iを光学ファインダーで「一眼レフ」として使うには申し分ないデキだが、ライブビューではどうか。STMレンズを組み合わせた状態で4つのAFを試してみた。 - 長期試用リポート:「EOS Kiss X6i」第1回――神田川クルーズで動画と静止画を撮ろう
「STM」レンズのキットも用意され、大幅な動画強化を果たした「EOS Kiss X6i」。通常はデジタル一眼レフとして、ライブビュー時はミラーレス一眼のように使えるカメラとなっていて、実によいのだ。 - 「軽快さ」をプラスした“小さなEOS”――ミラーレスEOS「EOS M」登場
キヤノンよりミラーレスデジタルカメラ「EOS M」が発売される。「EOS Kiss X6i」などと同様のエントリー向けだが、EOSシステムとの互換性も有する。 - 写真で見る「EOS M」
キヤノンより発表されたミラーレスEOS「EOS M」を写真で紹介する。EOS Kiss X6iとも写真で見比べる。 - 「まだ巻き返せる」――ミラーレス市場に最後発から挑むキヤノン
「EOS M」でついにミラーレス市場への参入を果たすキヤノン。レンズ交換式デジタルカメラ市場において国内では4割にも迫るミラーレスへの参入に際し、同社では「EOSであること」を掲げて最後発からの戦いに挑む。 - 【速報】 キヤノン ミラーレスEOS 「EOS M」を発表
キヤノンがミラーレスデジタルカメラ「EOS M」を9月より販売開始すると発表した(製品画像追加)。 - レビュー:ハイブリッドCMOS AFに対応したKiss最新作――キヤノン「EOS Kiss X6i」
人気のデジタル一眼、キヤノン「EOS Kiss」シリーズの最新作として「EOS Kiss X6i」が登場。見どころは、新開発「ハイブリッドCMOS AF」によって、ライブビューや動画撮影のAF性能が大きく進化したこと。試作機によるレビューをお伝えしよう。 - 撮像素子 位相差AFにDiGiC 5、多くの「初」を詰め込んだ キヤノン「EOS Kiss X6i」
キヤノンが「EOS Kiss」最新作「EOS Kiss X6i」を発売する。撮像素子で位相差AFを行う「ハイブリッドCMOS AF」のほか、Kissシリーズ初のDiGiC 5や9点オールクロスAFなどさまざまな「初」で進化した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.