「DSC-RX100」第3回――旅カメラとしてのRX100画角考:長期試用リポート
ドイツでの旅行中、ソニー「DSC-RX100」を活用してきた。サブカメラのつもりだったが、思いのほか活躍する機会が多く、風景から食事までいろいろ撮った。今回は画角について。
画角を検討する
旅先では、超広角と超望遠の2つのレンズがあると、さまざまなシーンで便利。レンズ交換式カメラなら高倍率ズームレンズ1本ですませるのも手だが、コンパクトデジカメは望遠側に振った製品が多いので、レンズ交換式のカメラに広角や魚眼レンズを装着し、望遠側はコンパクトに任せるというのもいい。
ただ、RX100は35ミリ換算28〜100ミリ相当 3.6倍ズームと常用域をカバーするものの、高倍率とは言えない。これを解決する1つの方法が、全画素超解像ズームを使うことだ。解像感を保ったまま、最大2倍、光学ズームとあわせて7.2倍相当までズームできるので、200ミリ相当のレンズと同等になる。
実際に試してみると、「解像感を保ったまま」とまでは言い切れない印象で、画像の中央を切り抜くクロップでのズームと比べると、画質は劣化する(クロップすればその分だけ、画像のサイズは小さくなるが)。ただ、単純なデジタルズームよりは画質は良好だし、必要に応じて使ってもいいだろう。ただ、ズーム時に無段階に超解像ズームになるのはいただけない。いったん、ズームが停止する仕組みも欲しかった。
逆に広角側はどうだろうか。最近のサイバーショットには「スイングパノラマ」機能が搭載されている。同種機能を搭載したカメラも増えているが、カメラを上下左右に振るだけで、簡単にパノラマ撮影できるのは便利。
RX100にもこのスイングパノラマが搭載されている。モードダイヤルに「スイング撮影」が割り当てられており、モードを切り替えたあと、レンズ鏡胴にあるコントロールリングを回すことで、上下左右のスイング方向を設定できる。
スイングパノラマでは、ワイドと標準の2種類の画像サイズから選択でき、ワイドだと左右で12416×1856ピクセル、上下で5536×2160ピクセル、標準だと8192×1856ピクセル、3872×2160ピクセルという広大な画像を撮影できる。ワイドと標準の切り替えがメニューからしかできないのは残念なところだ。
スイングパノラマを使えば、普通では撮影できない広大な範囲を撮影できる。つなぎ目の不自然さはほとんどなく、適度なスピードでカメラを振るだけでパノラマが撮れるのは便利。高い建物、塔の上から見た街の景色など、使い勝手はいい。
ドイツだと、教会やテレビ塔など、高いところに登って撮影できる場所が多い。日本とは違い、ガラスで景色が遮られない場所も多く、撮影しやすいというのもうれしい。ドイツ最高峰のツークシュピッツェは、ケーブルカーなどで山頂付近まで登れるので、手軽に山の景色が楽しめ、スイングパノラマが活躍する。
自分好みの設定を素早く呼び出す
RX100はサブカメラとしてはもったいないほど、機能が充実している。マニュアル撮影はもちろん、HDRやパノラマ、マルチショットNR、最大10コマ/秒の連写と、さまざまな機能がある。
じっくり撮影設定を変更できない場合、旅行で必要な撮影機能をあらかじめ設定しておき、使い分けるという利用方法も良かった。RX100では、モードダイヤルの「MR(メモリーリコール)」に、3つまで設定を登録でき、一発で呼び出せるようになっている。
例えば、「絞り優先オートでF8.0まで絞ってマルチショットNRをISO6400」をMR1に、「オートHDRを強め」をMR2に登録しておけば、シーンによってMRを変更するだけで、好きな設定で撮影ができる。ただ、マルチショットNRやオートHDRのように、連写合成が必要な機能は併用ができない。
ズーム位置も記録できるので、ワイド端で絞り、オートHDRに設定した風景撮影用、ワイド端で絞り、マルチショットNRで高感度撮影ができる建物屋内用、開放でワイド端、ISO感度を低くしたポートレート用、といった具合に使い分けてもいい。
こうなると、設定した3つのMRの呼び出しがもっと簡単になるといい。モードダイヤルをMRに変えた時か、MENUボタンから「登録」を選んだ時しか変更できないので、ちょっと一手間かかる。1ボタンで設定変更を呼び出せると良かった。
ただ、RX100は高画質高機能のうえにカスタマイズ性が高く、価格設定からして上級者向けであるにもかかわらず、「?」ボタンで初心者向けの撮影テクニックが表示されたり、OKボタンが追尾AFのみで変更できなかったり、気になる部分が散見される。
ソニーは以前、ミラーレスカメラの「NEX-5/3」で、ファームウェアのアップデートでボタンのカスタマイズ機能を搭載し、「撮影アドバイス」でしかほとんど機能しなかったボタンに機能の割り当てを可能にしていた。OKボタンも同様で、これはユーザーからの要望が高かったことが伺えるし、私もNEX-5に関してカスタマイズを要望したことがあった。
NEX-5/3用ファームウェアのアップデートが約2年前に公開されているのに、RX100では相も変わらず、撮影時には「撮影アドバイス」にしか機能しないボタンを搭載したり、OKボタンの機能を固定したり、ちょっといただけない。コントロールリングやFnボタンがカスタマイズできるのはいいが、例えばコントロールリングに「露出補正」を割り当てると、露出補正ができないプレミアムおまかせオートでは何の機能も使えなくなるなど、ちぐはぐさも感じる。
この辺りのUIがこなれていない感じは気になる部分ではある。ただ、ハードウェア部分とは違って、あとからでも改良できる部分で、NEXの時のようなファームウェアアップデートの提供を期待したい。
コンパクトデジカメやスマートフォンを含めたケータイカメラは、旅の記録用途のスナップに便利だ。iPhoneのカメラが人気なのは、使い勝手もさることながら、画質の良さにもある。やはり、せっかく撮るなら画質のいいものを、というのは人情だ。その点、RX100は1インチセンサーの威力で幅広いシーンで高画質の撮影ができ、オートでとっても、マニュアルでとってもいいという懐の深さは魅力。荷物を減らしたい旅行のようなシーンだけでなく、普段の生活で活躍するカメラだと思う。
関連記事
- 長期試用リポート:「DSC-RX100」第2回――海外旅行のサブカメラとして使いこなす
写真を高画質で撮りたい、でも小さなデジカメがいい……そんなぜいたくな要望に応えられるカメラが、ソニーの“サイバーショット”DSC-RX100」だ。特に旅行先に持っていくと、これほどいいカメラはない。 - 長期試用リポート:「DSC-RX100」第1回――2つの「コントロール」を理解する
DSC-RX100を手にすると、まず触れるのはやはり鏡胴の付け根に用意された「コントロールリング」だろう。背面の「コントロールホイール」とあわせてRX100の操作系を理解したい。 - 最強の広角系スナップコンパクトデジカメ――サイバーショット「DSC-RX100」
とうとう1型センサーを搭載したコンデジ、サイバーショット「DSC-RX100」が出た。細かくコントロールしながら撮りたい向きには操作が煩雑だけれど、気軽に持ち歩いて気軽に撮れてこのサイズ、最も高画質な最強の広角系スナップコンパクトである。 - photokina 2012:photokina2012を読み解く3つのキーワード
世界最大の写真関連見本市「photokina 2012」が閉幕した。数多くの新製品が登場し、各社ブースは盛り上がりを見せたが、展示会全体を見渡すと浮かび上がるキーワードがある。それが「フルサイズ」「スマホ」「ネットワーク」だ。 - photokina 2012:ソニーは「フルサイズトリオ」を旗頭に掲げる
photokinaを前にして「α99」「DSC-RX1」「NEX-VG900」と3つの35ミリフルサイズセンサー搭載製品を発表したソニー。「世の中にないもの」を付加価値としてアピールしていく。 - フルサイズで攻勢をかけるソニー、「NEX-5R」「NEX-6」も年内に
ソニーが「DSC-RX1」「α99」「NEX-VG900」のフルサイズセンサー機を発表。また、成長を続けるレンズ交換式ミラーレスの市場には、新製品「NEX-5R」「NEX-6」を年内に投入する。 - 最高画質を究極小型化 世界最小の35ミリフルサイズ機 「DSC-RX1」
35ミリフルサイズセンサー搭載製品としては「世界最小」となる、“サイバーショット”「DSC-RX1」をソニーが発売する(写真追加)。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.