デジタルカメラはオンリーワンを選びたい:2012年注目したカメラ&トピックス(ライターmi2_303編)
2012年のデジカメはサイズや機能、拡張性を含め多種多様なモデルが存在し、使い方に合わせた選び方ができるようになった。そんな多機能なデジタルカメラからオンリーワンな機能をもつ3機種をピックアップしてみた。
ニコン「D3200」 多機能をプラスに
最新のデジタルカメラは高画質、高感度・低ノイズといったポイント以外に、Wi-Fi、GPS、タッチパネル、スマートフォン連携、デジタルフィルターなどさまざまな機能をどん欲に取り込むことで商品訴求をしている。
消費者の視線で見ると、多機能=お買い得と感じるこの手法は間違ってはいないと思うのだが、その多機能を使い方をメーカー側がしっかりと考えないと、使わない(使いこなせない)ソフトが沢山インストールされているPCのように、多機能自体がカメラの魅力に結びつかない可能性はないだろうか。
多彩な機能は、それぞれの機能を覚えた上で呼び出すことが前提となるため、使いこなしのハードルは高く、さらに設定した項目が正解なのか誰も教えてくれない。このような事例は購入してから気付くから厄介だ。
そこで注目したい解答が、ニコンのデジタル一眼レフエントリーモデル「D3200」などに搭載されているガイドモードだ。どんなスタイルの写真を撮りたいのか、動きを止めたいのか、ライブビューを使って撮りたいのかなど問いに対して答えると設定が完了する。設定される項目はデジタルフィルターは含まれず、カメラの基本的な設定項目が多いが、ユーザーが多機能を使いこなすためのアプローチとしてこの機能は評価したい。
“こんな写真を撮りたい”という要望にカメラが応えてくれるようになれば、点在していた多機能が線となってユーザーにメリットをもたらす。写真のイメージを「明るい」「色鮮やか」「暖かい」、仕上がりは「トイカメラ風」などとセットすると、露出モードだけではなくデジタルフィルターを含めた設定が完了する、そんな使い方ができれば人に優しいカメラに近づくだろう。さらに、その設定が気に入ったらユーザープリセットとして記憶できるといい。
多機能を複雑な設定なしでつかえる機能として「おまかせオート」がある。注意したいのは、カタログで見るおまかせオート機能は感動的でキレイな写真を撮れるというイメージを持ってしまうが、実際にはシーン認識と手ブレ補正など多様な要素を組み合わせることで、いわゆる失敗写真を防いでくれる機能として認識した方が良いだろう。
おまかせオート機能はその名の通りカメラにおまかせしているので、カラーモードやデジタルフィルターを駆使しして写真を作り込みユーザーが「あっ!」と驚くような写真が撮れても良いのではないかと思う。もちろん、無加工の写真も同時記録されればなお良いだろう。
撮影後、どや顔で「こんな写真どうよ?」とプレゼンしてくれるようなそんなカメラの登場に期待したい。どんな設定で撮影したのかレシピを確認でき、気に入ったらOKボタンを押して、撮影者の好みを学習していくそんな風になると多機能が活かされていくのではないだろうか。
オンリーワンを手中に ソニー「DSC-HX30V」、富士フイルム「FinePix F770EXR」
多機能さもさることながら写真を撮る道具としてオンリーワンなカメラも重要だ。今年はソニー“サイバーショット”「DSC-HX30V」と富士フイルム「FinePix F770EXR」を購入し楽しんでいる。どちらも光学20倍ズームレンズとGPSを搭載したコンパクトデジカメだが、常に持ち歩けるサイズに500ミリの超望遠レンズを搭載していることが大きい。
コンパクトデジカメなのでデジタル一眼と比較して画質に関してはとやかく言わないが、写真を撮ることに関してはこれほど機動力のあるカメラはないと思うぐらいのオンリーワンな魅力がある。
DSC-HX30Vは、プレミアムおまかせオートのホワイトバランスの良さや、アクティブ手ブレ補正を駆使したフルHD60Pの動画撮影、切り替えなしマクロ撮影に対応する高速AFなど、望遠レンズだけはないオンリーワンの要素を持つ。取材で行くことの多い製品\発表会などでは、白い台でプリセットホワイトバランスを取ることで、狙った色再現ができるなど実用性も確認できた。
FinePix F770EXRは、ダイナミックレンジを拡張するDR400を軸としたRAW記録で、無敵のスナップシューターという位置づけだ。AF機能や動画機能などHX30Vには劣る部分もあるが、RAWで記録できることが魅力である。DR400での撮影は逆光などの特殊なシーン以外でも豊富な情報を含んでいるため、素材として十分過ぎる程のレタッチ耐性を持つ。
高倍率コンパクトという意味では同一ジャンルの2台だが、利用者の立場からすれば、動画を軸にしつつしっかりと作り込んで撮影するHX30Vに対して、後から情報を引き出すことができるF770EXRと、上手くすみ分けできている。そして、この2台は大きくて重いデジタル一眼レフのサブとして十分な働きをしてくれている。
最後に、もしかしすると来年末に「今年一番気になった1台」として紹介するかもしれない機種を挙げる。パナソニックの「LUMIX DMC-GH3」だ。
ユーザーのさらなる高画質への期待に応えるため、フルHD24p/30p撮影時に72MbpsのALL-Intraモードを搭載したこのカメラの動画は驚くほどの解像感があり、この高画質でさまざま行事を記録したいという欲求にかられるデキだ。さらに動画だけではなく、防じん防滴ボディやダイヤルとメカスイッチを多用した使い勝手の良い操作系など完成度も高い。
ソフトウェアの進化だけではなくGH3のような、妥協のないもの作りをしているカメラがある事が素晴らしいと思いつつ、来年のデジタルカメラの新しい形にも期待したい。
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