新しいものへの道筋、各社の回答:2011年注目したカメラ&トピックス(ライターmi2_303編)
もうデジタルカメラは形を変えるしか伸びしろはないのかと思っていたが、発想の転換、成熟、ゼロからのスタートなど、なかなかどうして気になるカメラが多かった1年だったと思う。
オトナなカメラ リコー「GXR MOUNT A12」
いわゆる高級コンパクトデジカメは、一時期の高画素化競争をやめ(バランスの良い1000〜1200万画素機に落ち着いたようだ)、次なる可能性を模索している。各社がアナログライクなダイヤル操作、質感の向上、クラシックデザインなど様々な要素を取り入れるなか、リコーはGXR用の「GXR MOUNT A12」を発売した。
ライカMマウントにAPS-Cサイズ 1200万画素 CMOSセンサーを搭載したこの製品は一見平凡なスペックだが、イメージセンサーにローパスフィルターを搭載しないという、ある意味、力技的な方法をとっている。
これにより、ピントの合った部分のキレの良さ、1ドット単位で解像する細かい模様など、このカメラでなくては撮れないという世界観を築くことに成功したと思う。ピントのキレがあるから引き立つ自然なボケの柔らかさなどは、まさに鳥肌ものだ。発売後に製品が入手困難になったり、中古のライカレンズがよく売れるようになったと言う話も聞くほど、カメラ業界に動きを与えたプロダクトでもある。
マニュアルフォーカスでじっくり撮る、レンズの味を楽しむ、そんなオトナなスタイルのデジタルカメラがGXR MOUNT A12だ。今後、ローパスフィルターの見直しや、補色フィルターの復活などいろいろなチャレンジをして欲しいと思う。
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さまざまな機能を試したくなる、キヤノン「IXY 32S」
まさに全部入りのコンパクトデジカメがキヤノン「IXY 32S」。同社コンパクトデジカメの歴史を網羅したような多機能さが特徴といえ、スマートフォンのようなアイコン表示によるタッチパネル操作は、多機能さを楽しさに変えているように感じる。
IXY 3xとしては3代目になることもあり、メニュー操作だけではなく、オプション機能も含めたさまざまな撮影機能を画面タッチで利用できる。ボタンやキー操作を覚えることなく扱えるのが良い。もうひとつ、地味ながらシャッター音が意外といい味をだしている。音質とそのタイミングが良く、“IXYで撮っている”という気分になるから不思議だ。
IXYシリーズに限らず、ほぼすべてのデジカメにオート撮影機能を搭載するが、個人的には万人がこのオートで満足しているのか分からない。そもそもどういう効果でこのような結果になったのかすら分からない。これで良いのだろうか。
例えば、撮影後の確認画面で「この写真でいいですか?」と対話型で聞いてくるのはどうだろうか。連想再生のように、画面をフリックすることで「もっと明るく」、「もっとあざやかに」など撮影者がリクエストをすることで、カメラが撮影イメージに近づけてくれるような撮影機能があれば、カメラに詳しくな人でも自分で自分のイメージする写真を撮る楽しさを味わえると思う。カメラが「ハイキーの爽やかな写真を撮りたいと思ってるのかな?」と提案、あるいは一緒に考えてくれたら楽しいのではないだろうか。
人々を悩ませた「Nikon 1」
「ニコン」という銘を背負って登場した「Nikon 1」シリーズ。ニコンファンはフルサイズセンサーの搭載や“現代版ニコンS”のように、既存ミラーレス一眼を超える性能で登場して欲しいと思っていたのではないだろうか。しかし、実際に登場したNikon 1は、1インチセンサーを搭載したエントリー向けのニュアンスもたぶんに含む製品で、筆者も正直これではライバルに太刀打ちできないのではと思った。
ところが、長期試用リポートにも書いたが実際に使ってみると思ったより悪くない。さまざまな裏付けがあった上でのシステムのサイズ感と、それをフォローするハードウェアのバランスが絶妙で、面白いように自分の中での評価が上がっていった。いろいろなバックボーンを捨てて頭を切り換えることで、このカメラの良さが分かってくるのではないかと思う。
センサーサイズが小さいために懸念していた画質は、コンパクトデジカメのそれではなくデジタル一眼レフに近く実用的だった。像面位相差AFや、RAWでの連続撮影が可能な大容量のバッファ、静かで滑らかなオートフォーカスのフルHD動画撮影機能(センサー出力60フレーム)もこのカメラの価値を上げていると言っていい。
とはいえNikon 1は、このままで良いと思わない。ユーザーや非ユーザーの意見を取り入れて、もっともっと良いシステムに育て上げていって欲しいと思う。今後発売されるNikon 1マウントのレンズにも期待したい。
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