犬の目線で楽しむツァイスの標準ズーム――ソニー「Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS」:交換レンズ百景
広角から中望遠までの幅広い焦点域をカバーするワンランク上の標準ズームがソニーから登場。街角スナップはもちろん、ポートレートから風景、静物、旅行用まであらゆる用途に活躍する1本だ。
使い勝手と写りのよさを両立する
この1本さえあれば、ほかはいらない……。レンズに求める条件は人それぞれなので一概にはいえないが、私の場合はワイド側が24ミリ相当、テレ側が100ミリ相当の焦点距離を持ち、開放値がF2.8またはF4くらいなら、それ1本でたいていの撮影は済んでしまう。その上、小さくて軽く、写りがよければ文句なしだ。
そんな条件にちょうど当てはまるレンズがソニーEマウントにあった。ツァイスブランドの標準ズーム「Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS」だ。APS-Cフォーマットに対応し、35ミリ換算の焦点距離は24〜105ミリ相当。広角から中望遠までの焦点域をカバーしつつ、開放値はズーム全域でF4を実現。テレ側がF5.6ではなくF4を維持していることが何よりうれしい。
Eマウント用の標準ズームといえば、このレンズよりも先に2製品が発売されている。ひとつは、2010年発売の「E 18-55mm F3.5-5.6 OSS」。Eマウントの立ち上げと同時に登場した製品であり、キット付属の標準ズームとしてオーソドックスな内容だった。もうひとつは、2013年2月発売の「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS」。こちらは、電動ズームと周辺画質のデジタル補正を採用することで、全長約3センチの薄型形状を実現したユニークなレンズだ。
これらの既存製品は、求めやすい価格が魅力であり、「E PZ 16-50mm」については携帯性と取り回しのよさも大きな価値になっている。ただ描写性能に関しては最良とはいえない。悪いというほどではないが、少々物足りなさが残る。
そんな中、写りにこだわったレンズとして、カールツァイスブランドで登場したのが今回の「Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS」である。
試用ではズームの全域でのヌケのいい高コントラストな写りを確認できた。圧倒的というほどではないものの、ズームレンズの画質としては満足できるレベルだ。細かいことをいえば、開放値ではワイド側の周辺にやや甘さが見られるが、絞りを1、2段絞り込むと四隅までくっきりする。また、周辺減光や色収差、歪曲はそれぞれややあるが、いずれもカメラ内の補正機能によって目立たないように低減できる。
高級感が漂うフルブラックの金属外装
外装は高品位な金属素材で、フルブラックのシンプルなデザインを採用。側面の目立つ位置には、ツァイスの青いロゴが彫られている。サイズは、従来の標準ズーム「E 18-55mm F3.5-5.6 OSS」よりも一回り大きく、今回使用した「NEX-5R」ではやや頭でっかちに感じる。ボディが「NEX-6」や「NEX-7」ならバランス的にしっくりくるだろう。
AFはほぼ無音でスピーディに作動する。マニュアルフォーカスの際のフォーカスリングの感触は滑らかだ。ズームリングについては感触は普通。70ミリ側までズームアップすると、前玉部分が約4センチ突き出る。フォーカシングやズーミングによる前玉の回転はない。
一般的に使用頻度の高いズーム域を幅広くカバーしながら、適度な携帯性と安定した写りを兼ね備えている点が本レンズのいちばんの魅力だ。たとえば旅行用に1本選ぶなら、筆頭候補になるだろう。唯一引っかかるのは、希望小売価格で10万円を超えるお値段だ。従来の標準ズームなら2本買ってもおつりがくる。でも、ほかがいらなくなると考えれば、長い目で見ればお得なのかもしれない。
→ソニーストアで「Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS」をチェックする
高コントラストで抜けの良い優れた描写性能を維持しながら小型化を実現した、待望のカールツァイス標準ズームレンズ
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