抜群のキレを見せる描写――シグマ「35mm F1.4 DG HSM」:交換レンズ百景
シグマの3つのプロダクトライン、Contemporary、Art、Sportsのうち、Artラインに属する単焦点レンズ「35mm F1.4 DG HSM」を、「D810」で撮ってみた。開放からキレを見せる。
「好きな焦点距離は何か?」と聞かれたら「35ミリ!」と即答するくらいこの焦点距離が好きだ。引いてよし寄ってよしと、オールマイティーで誇張の少ないパースペクティブと距離感が好きな理由である。そこで今回は発売以来世界中で評価の高いシグマのアートラインレンズ「35mm F1.4 DG HSM」をニコン「D810」に装着してブラブラと撮り歩いてみた。
35mm F1.4 DG HSMは、すでにおなじみとなったシグマの3つの新しいプロダクトラインのうち「Art」に属するレンズで、シンプルで高品位な外装デザインと極限まで各収差を排除した光学性能で定評のある製品となっている。665グラムというズシリとした存在感は、フルサイズ一眼レフカメラに装着すると抜群のフィット感だ。この適度な重みが撮影の充実感と、手ブレを軽減する効果を生み出していると感じる。
シグマらしく開放から抜群のキレを見せる描写はとても素晴らしい。2つ3つ徐々に絞ってやると、画面中央のそのカリカリ具合は頂点に達する。開放では周辺光量の落ちが顕著だが、それがムーディーに感じるほどである。AFもスムーズかつ正確で、気持ちよくフォーカスポイントで合焦する。
このレンズは自分に合ったカスタマイズも可能だ。オプションとして用意される「SIGMA USB DOCK」と「SIGMA Optimaization Pro」というソフトウエアでレンズファームウエアのアップデートやフォーカス調整などができる。また「マウント交換サービス」にも対応しているので、将来的にカメラを変更してマウントが変わってもずっと使い続けることが可能なのがうれしい。
極めて高い描写性能を持つ35mm F1.4 DG HSM、フルサイズ機を持っている人ならば是非一度試してほしい。
雨に濡れた路地。フォーカスをフレーム中心に合わせて絞り開放で撮影。周辺光量の低下が見られるが被写体とマッチしていい雰囲気だ。ボケは自然でスムーズだが若干うるさいところも認められる。
同じ路地裏の流しで昔懐かしい金だらいを発見した。その手前の底面にフォーカスしてシューティング。長年使い込まれた数々の傷跡を生々しく写しとることができた。
船宿と高層マンションという現在の品川を象徴するシーン。このミスマッチ感が東京の魅力でもある。F6.3まで絞って撮ったので、手前の船のディテールから、中央の屋形船上で働く人たちの様子までよくわかる。シグマレンズらしいシャープさだ。
開放でのボケも味がある。緩やかに拡散していくような上品なボケはこのレンズの大きな魅力の1つだ。フォーカス面は立体感がある描写である。収差もわずかなもので、安心して開放から使えるレンズになっていると思う。
狭い路地に面した事務所兼倉庫。商いの様子がリアルに伝わってくるシーンを開放で撮影。ハイライト部からシャドウ部までメリハリのある質感描写が頼もしい。
植物園の庭園で、空を大きくフレームに入れてシューティング。35ミリという焦点距離はワイド感も出せるし、寄って標準レンズ的な感じも出せるのが魅力である。手前花壇に咲く薔薇までもしっかりと解像し、3635万画素を誇るニコンD810のパフォーマンスを引き出せるのがこのレンズの実力だ。ディストーションも極めて少ない。
境内の露店を撮影させてもらう。紅白のダルマの質感と立体感が素晴らしい。F2.8まで絞ると画面の隅々まで良好な描写を得る事ができる。
このレンズとフルサイズ機のマッチングはなかなかいい。適度な重量感とバランスとで手ブレしにくいと感じた。マニュアルフォーカス時のピントリングの挙動、AFのオン/オフスイッチの適切なクリック感などどれも「撮る」という行為に没頭できる仕様となっている。
光源をフレーム内に入れるなど、逆光時の描写もイヤなフレアなどがなく、美しい光芒とクリアなヌケのよさを味わえる。このシーンもイメージ通りのショットが撮れた。F1.4の35ミリレンズの購入を考えているのならば、このレンズを候補に加えてみてはいかがだろうか。
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