さまざまな「写真展」を随時案内していく本コーナー。新たにオープンしたキヤノンオープンギャラリー1・2(品川)で、2015年7月27日から開催されている林忠彦 写真展「カストリ時代1946-1956 & AMERICA1955」を案内する。
林忠彦は、玉音放送を北京の大使館で聞きます。1946年(昭和21年)5月、アメリカの上陸用船艇LSTに乗り、やっとの思いで東京に辿り着きました。焼け野原になった廃墟をさまよう中で林は、なんとかこの東京を撮りたいと思って借金をし、小型カメラを用意すると写真を撮り続けます。そこに写しだされるのは、復員兵、靴みがきをする戦災孤児、築地の水上生活者、戦後混乱期の猥雑な風俗。そこに生きる人たちはたくましく、生へのエネルギーに満ち溢れ、「カストリ時代」は、林忠彦の代表作となりました。敗戦後の混乱期、粗悪な密造酒・カストリで疲れをいやしながら、焦土をたくましく生きる人々の姿を活写した貴重な記録です。
そして終戦から10年が過ぎた1955年(昭和30年)、林忠彦は産経新聞社主催の「ミス・ユニバース日本代表誕生」のバヤリース・フオトコンテストに組写真を応募して一等に入賞し、同紙の特派で代表となった高橋敬緯子とともに渡米します。まず、フロリダでミス・ユニバースコンテストを取材したあと、ニューヨーク、ハワイなどを回って帰国し、渡米写真集と題して「サンケイカメラ」や「婦人公論」などに発表しました。林は、はじめて目にしたアメリカに対する感想を下記のように述べています。
飛行機がサンフランシスコ上空にさしかかった途端に、こんな富裕な国と戦争をしたのか、無謀なことをしたのものだと愕然とした。眼下にみえる家並みの豊かさにいやというほどそれを知らされた。
本写真群は、一人の日本の写真家が、1955年のアメリカを視て、自由闊達にスナップに落とし込んだ瑞々しい記録です。しかし、一部が写真展やカメラ誌で発表されたのみで、ほとんどの作品は発表の機会がないままに現在に至っています。
本展覧会は、「カストリ時代」と「1955年のアメリカ」を同時に展示し、一人の写真家が見たアメリカと日本の姿を見ていただくことを目的とします。復興を目指すエネルギーの時代にある日本と、1955年の豊かなアメリカの写真。
2015年(平成27年)、戦後70周年という好機に、これら戦後のアメリカと日本の対比から、改めて「戦争」とは何だったのかを、また現在の日本を考える、きっかけとなる写真展です。
写真展の詳細
名称 | 林忠彦 写真展「カストリ時代1946-1956 & AMERICA1955」 |
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開催期間 | 2015年7月27日(月)〜2015年8月25日(火) |
開館時間 | 10時〜17時30分 |
定休日 | 日曜、祝日、夏期休館日:8月8日(土)〜8月16日(日) |
入場 | 無料 |
会場 | キヤノンオープンギャラリー1・2(品川) |
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