出版社に著作隣接権を――流対協が要望書提出

出版社98社が集まった出版業界団体「出版流通対策協議会」から出版者の権利について権利付与を求める要望書が提出された。

» 2011年08月24日 20時37分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 出版流通対策協議会(流対協)は、文部科学省・文化庁が8月26日に開催予定の「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」(第11回)に向け、出版者の権利について権利付与を求める要望書を送付した。流対協は出版社98社が集まった出版業界団体。

 この動きは、出版社が著作物流通、特に電子書籍に関して固有の権利の付与を求めているもので、同検討会議でも過去数度にわたって議論されている。

 従来の出版著作物流通は著作物再販制度と委託販売制度に支えられた構造といえる。しかし、電子書籍に代表されるデジタル出版物では、電子書籍が著作物再販制度の適用対象でないこと、出版社は出版権をのぞけば著作権上の権利を有していないことなどにより、違法な複製・配信に対して出版社が取れるアクションが少ない。さらに、著者の自費出版のように出版社の中抜きのような動きが今後起こったとしても、それに対する有効な手だてを持たない。

 これでは電子書籍の流通を阻害してしまうので、映画や音楽が著作隣接権によって制作会社にも一定の権利が保護されているように、出版でも同様の権利を出版社に付与してほしいというのが主張の骨子だ。

 この問題は、電子書籍に対する著作権法上の権利を出版社に与えるべきかどうか、また、与えるとすればどのような権利にすべきかという問いに帰着できる。しかし、著作隣接権のようなある種強力な権利を出版社に与えることへの懸念も少なくない。例えばこちらのまとめなどが参考になるだろう。

 今後も出版社からこうした主張が続けられることは間違いなく、動向が注目される。

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