さぁブヒるぞ、メディアファクトリーの『MFラノベ☆コミック』で今週の「コレヨミ」

eBook USERがお勧めする1冊を電子・紙問わず紹介していく本連載。今回は、『僕は友達が少ない』『まよチキ!』などの人気作品も多い「MF文庫J」や「コミックアライブ」などのコミックが堪能できる『MFラノベ☆コミック』を紹介。

» 2011年11月25日 22時30分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 思わずガッツポーズしたくなるiOSアプリがメディアファクトリーからリリースされた。同社が刊行しているライトノベルとコミックの電子書籍が購入・閲覧できる『MFラノベ☆コミック』だ。

 同アプリは、『僕は友達が少ない』『まよチキ!』などのアニメ化作品を始めとする「MF文庫J」のライトノベルや、「コミックアライブ」「コミックフラッパー」「コミックジーン」といったレーベルのコミックスを広くカバーした電子書籍ストア型のアプリ。現時点で、ライトノベルが369タイトル、コミックスが81タイトルの計450タイトルと相当のラインアップとなっている。

MFラノベ☆コミックのトップ画面では、コンテンツの新入荷情報やランキング、旬の作品紹介などの特集コーナーを展開し、さまざまな切り口でお気に入りの作品を探すことができる(写真=左)/新入荷のタブでは作品のカバーフロー表示も。フリックしがいがある(写真=右)

 全タイトル約20ページから、多いものでは200ページもの試読が可能なのがうれしい上に、ライトノベルの挿絵などはフルサイズのものが収録されており、横/縦スクロールでじっくりと楽しむことができる。iPadで見れば、文庫のサイズを優に超えるサイズで美麗イラストを心ゆくまで堪能できるのは、電子書籍ならではの魅力がある。

無料配信されている『ゼロの使い魔』の第1巻を開いたところ。画面ではメニューを表示している。Twitterとも連動している(写真=左)/挿絵の表示。一見すると何ということはないが、上下左右にスワイプすると……。実際に触って確かめてみてほしい

 アプリの配信を記念して、2012年1月からアニメ化されるライトノベル『ゼロの使い魔』の第1巻と、2011年11月26日にコミックスが刊行される「月刊コミックジーン創刊号」が期間限定で無料配信される。

ビューワの出来にも注目

 MFラノベ☆コミックで特筆すべきは、会心の出来といってよいビューワ。

 以前、eBook USERでは電子書籍の出版経験を持つ現役の漫画家3名(うめ・小沢高広氏、一色登希彦氏、藤井あや氏)による座談会を実施した。その中で小沢氏は、「いまの漫画自体、めくることを前提にみんなが試行錯誤してさまざまな表現が生まれてきたわけだから、スクロールならスクロール向きの漫画表現があるはずだと思う」と述べている。さらに、ビューワ開発者の覆面座談会という形で企画した「ビューワ開発者から見た、電子書籍業界のいま」ではページング前提で制作されたものを電子書籍化する際の苦悩が語られており、クリエイター側の意識として、プリントメディアで提供されていた作品を電子書籍化する際の悩ましい問題が浮き彫りとなっていた。

 そうした意味では、MFラノベ☆コミックはかなり踏み込んだコンテンツ制作およびアプリ設計を行ったといってよい。同アプリは、同社のほかのアプリと同様、ACCESSの電子出版プラットフォーム「ACCESS Digital Publishing Ecosystem」をベースに作成されているとみられる。そのACCESSはi文庫の開発を手掛ける渚技研と協業しており、ビューワ部分にはiOSアプリでロングセラーとなっている鉄板ビューワ『i文庫』のノウハウが進化した形で凝縮されている。そつのないレベルだが退屈な電子書籍アプリが氾濫する中で、上述したような課題の解消に努めた様子がうかがい知れる。

クロスオーバーするアプリはライト層もコア層も満足

 そしてもう1つ。同アプリはアプリ間の連携を視野に入れて設計されている。同社はこれまで、メディアミックスされた作品を「クロスメディアアプリケーション」と呼ばれる形で作品ごとにアプリ化してきた。「緋弾のアリア」「まりあ†ほりっく」「殿といっしょ」「まよチキ!」「僕は友達が少ない」などのクロスメディアアプリでは、ライトノベルやコミック、プロモーションビデオ、壁紙、ミニゲームなどを楽しめるが、MFラノベ☆コミックで購入した該当作品は、(同一端末であれば)クロスメディアアプリ側でも購入済みとなる。

 つまり、ライトなファンはMFラノベ☆コミックでさまざまな作品の中から気になる作品を選ぶ、コアなファンはクロスメディアアプリでさらに楽しむ、という流れができることになる。これだけでも野心的な取り組みだが、同社では、MFラノベ☆コミックで実装されているストアの機能は、クロスメディアアプリにもバージョンアップの形で実装する予定であるとしており、究極的には同社のすべてのアプリがクロスオーバーする構想を持っていることに着目しておきたい。

 と、堅苦しい話になってしまったが、要は、アプリとしての完成度も素晴らしく、同社のライトノベルやコミックのファンであればきっと満足できるアプリであるということだ。

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