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» 2012年05月25日 10時00分 公開

Kindleが持つ5つの「強み」:電子書籍界の黒船「Kindle」とは?(後編) (3/3)

[山口真弘,ITmedia]
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強みその5:Whispersyncの利便性の高さ

 「Whispersync」についても触れておこう。Whispersyncとは、最後に読んだページやブックマーク、注釈を対応デバイス間で同期できる機能を指す。Kindleはクラウドを利用したこの「Whispersync」によって、複数の対応デバイスで1つのタイトルを快適に読み進める仕組みを実現している。

 電子書籍ストアの機能を比較する際、「複数のデバイスで読めるか否か」という項目は、恐らくほとんどのストアで○印がつくことだろう。しかし実際にストアを利用してみると、KindleとKindle Storeの使い勝手の良さは、国内の事業者に比べて頭ひとつ抜けていると感じる。

 例えば既読ページの同期。Kindleに対応した2つのデバイス、例えばKindle TouchとiPhone(Kindle for iPhone)があったとして、Kindle Touchで読みかけだった電子書籍をKindle for iPhoneで開いたとする。すると「読み終えた最後のページに同期」というダイアログが表示され、別のデバイス(つまりKindle Touch)で最後に読んだページに移動するかを尋ねられる。ここで「はい」を選択すれば続きのページから、「いいえ」を選択すればKindle for iPhoneで開いたページから、読書を続けることができる。ページを開き直す手間がかからないのはもちろん、小説などで既読ページを探そうと手動でめくっていて先のページをうっかりめくり、ネタバレを目にするミスも防げるわけだ。

ほかのKindle対応デバイスでページを読み進めていた場合、その情報がWhispersyncを経由して共有され、続きから読むか否かを選択できる(写真=左)/Kindle Touch側で同様の操作を行った場合の画面。日本語化はされていないが意味はすぐ理解できる。この仕組みは、Kindle Storeから購入した電子書籍だけではなく、メールを用いてPersonal Documentsに送信した自前のドキュメント(PDFなど)にも適用される(写真=右)

 電子書籍の既読位置を同期させる機能は、単純に見えて実はかなり複雑だ。というのも電子書籍は文字サイズを変えると総ページ数が変わってしまうため、ページ番号を基準に位置を指定できないからだ。そこでKindleではページ番号ではなくLocationという単位を用いることで、文字サイズの変更で総ページ数が変わっても、既読位置を(ほぼ)正確に指定できるようになっている。こうした仕組みを持たない電子書籍ストアが、後付けで同様の仕組みを導入しようとしても、それは精度が低いものにしかならないだろう。

 もうひとつ、この同期機能が期せずして複数ユーザーによる利用を防ぐ効果をもたらしているのも面白い。電子書籍ストアの多くは複数デバイスでの表示をサポートしているが、その多くは最大3台といった制限が設けられている。これは技術的な問題ではなく、購入した電子書籍を同一アカウントで複数デバイスにコピーし、その端末自体を複数のメンバーでシェアすることで実質的な違法コピーとしてばらまかれることへの懸念が裏にあるからだ。

 しかしKindleでは、このWhisperSyncにより、1冊の電子書籍を複数デバイスで読もうとすると、そのたびに同期するか否かを尋ねられる。ここで仮に「いいえ」を選択するにせよ、ほかに同じライセンスで同じ本を読んでいる人がいることが暗に示されるというわけだ。カジュアルコピー(という表現もあまり正確ではないが)の抑止には、十分に効果があることだろう。複数デバイスで同期する利便性を追求した結果、期せずしてカジュアルコピー抑止にもつながっているというのが、なかなか興味深い。

 とはいえそんなKindleにも、最大6台という制限があったりするのだが、デバイスの登録解除はブラウザ上から行えるし、登録解除しないままアンインストールしてしまって電子書籍が消えてしまうといったこともない。台数そのものを制限したり、該当の端末上からでしか登録解除できなかったり、ダウンロードしたデータをクラウド上に書き戻さないとほかのデバイスで読めないといった不条理な仕組みに比べると、よほどユーザーライクといっていいだろう。

あとがき

インスタント翻訳機能では、Bingの翻訳エンジンを用い、任意の二カ国語間で翻訳が行える。大意をつかむには十分有用

 以上ざっと紹介したが、このほかにもKindleには、ファームウェアのバージョン5.1.0で追加されたインスタント翻訳機能や、第4世代のKindleで新たに搭載された、電子書籍の登場人物や地名などを抜き出して情報を表示してくれる「X-ray」機能など、ほかにはないさまざまな機能が存在する。これらはもちろん基本機能あってのものであり、利用シーンを選ぶ機能も多いが、ユーザーの心をとらえて離さないKindleの魅力であることは間違いない。

 その一方、先に述べたように複数書籍の一括購入をサポートしていなかったり、Kindle Storeに検索履歴を表示する機能がなかったりと、ほかストアに比べて欠けている機能もある。日本独自の縦書き・右綴じのサポートも未知数だし、漫画のようにデータ量が大きい電子書籍が60秒以内に読めるというセールスポイントに合致するのかも不明瞭だ。こうした点については、国内端末に一日の長があるのは事実だ。

 ユーザー側からすると、豊富なラインアップの中から電子書籍が安く手に入って快適に読め、かつ購入した電子書籍の権利が将来にわたって保証されるのであれば、必ずしもKindleにこだわる必要はない。近い将来上陸するであろうKindleが、よりよいライフスタイルをもたらしてくれるという意味での「黒船」であることを望むと同時に、国内の他事業者にいい意味での影響が及ぶことも期待したい。

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