Amazonの新型タブレット端末「Kindle Fire HD 8.9」を使ってみた(1/3 ページ)

Amazonが3月12日に国内発売した8.9インチの専用タブレット「Kindle Fire HD 8.9」。7インチ版の「Kindle Fire HD」との違いは画面サイズだけなのだろうか。使い勝手をレポートする。

» 2013年03月18日 08時00分 公開
[鷹野 凌,ITmedia]
Kindle Fire HD 8.9 Kindle Fire HD 8.9

 3月12日、Amazonの新しいタブレット端末「Kindle Fire HD 8.9」が発売された。著者は、12月に発売された7インチの「Kindle Fire HD」は家電量販店で購入したが、今回はAmazonで事前予約し、首尾よく発売日に入手できた。原稿執筆時点でもAmazonのサイトでは「在庫あり」になっているので、Kindle Paperwhite発売時のように品薄で入手まで時間が掛かるといったことはないだろう。

 なお、Kindleストアについては「これでもう迷わない、電子書店完全ガイド――Kindleストア」で詳細に解説しているので、本稿ではKindle Fire HD 8.9の使用感に絞ってレポートしたい。11月に発売されたKindle Paperwhiteのレポート、およびKindle Fire HDのレポートも参照してほしい。

 今回紹介するKindle Fire HD 8.9は、米国では16GバイトのWithout Special Offers(広告なし)モデルが314ドルで販売されているが、同じモデルが日本では2万4800円。原稿執筆時点での為替レート(1ドル96.6円)で換算すると、日本では5530円ほど安く販売されていることになる。ここ最近の急激な円安でも、まだここまで差がある。米国では3月13日に値下げが発表され、同モデルは284ドルになったが、それでもまだ日本での販売価格の方が安い。Kindle PaperwhiteやKindle Fire HDと同様に、端末は原価(もしくはそれ以下)で販売し、コンテンツで収益を得るというAmazonのビジネスモデルを踏襲している。

開封の儀

 Kindle Fire HDには外箱があったが、Kindle Fire HD 8.9にはなかった。そういえば、同じようにAmazonの通販で購入したKindle Paperwhiteにも外箱はなかった。量販店向けと通販向けとの違いだろうか。


箱表面 箱表面
ミシン目に沿って開封 ミシン目に沿って開封
箱を開けたところ

 同梱品は、Kindle Fire HDとまったく同じ。箱や筐体が一回り大きくなっただけというイメージだ。

同梱品一覧 同梱品一覧

 Kindle Fire HDと同様、端末を横向きにした時に、フロントカメラが上部中央、スピーカーが左右になるよう配置されている。横向きが基本という設計は7インチでは珍しかったが、Kindle Fire HD 8.9と同じようなサイズのGoogle Nexus 10やSony Xperia Tablet Zなども横向きが基本となっている事実からも、片手で持つのが難しいサイズのタブレットは横向きで使うのが主流ということなのだろう。ちなみにiPad Retinaは、縦向きにしたときにフロントカメラが上部中央、スピーカーが下部で右側配置(モノラル)になる。


本体前面 本体前面
本体裏面 本体裏面

本体上部には何もない
本体底部は左がmicroHDMI、右がmicroUSB、中央にハードウェアリセット用とみられる穴

本体右側面は右からヘッドフォン/入力、ボリュームボタン、電源ボタン、スピーカー
本体左側面はスピーカーのみ

 Kindle Fire HDは電源ボタンやボリュームボタンが周囲と同じ高さだったが、Kindle Fire HD 8.9ではわずかに出っ張りがある。Kindle Fire HDだと側面を目視しなければスイッチを押すのが困難だったが、Kindle Fire HD 8.9では指先の感覚でスイッチ位置が分かるようになっている。

スペック比較

 Kindle Fire HD 8.9と同じような時期に国内販売再開されたGoogle Nexus 10と、少し前に発売されたApple iPad Retinaはどうしても比較対象になる。電子書店や音楽配信、アプリストアやオンラインストレージなど、さまざまなサービスを自社で展開しているところも共通点だ。米国からやってきた「黒船三兄弟(大)」を、まずは端末のスペックで比較してみた。

端末 Kindle Fire HD 8.9 iPad Retina(Wi-Fi) Nexus 10
164ミリ 185.7ミリ 177.6ミリ
奥行き 240ミリ 241.2ミリ 263.9ミリ
厚さ 8.8ミリ 9.4ミリ 8.9ミリ
スクリーンサイズ 8.9インチ 9.7インチ 10インチ
重さ 567グラム 652グラム 603グラム
解像度 1920x1200 2048×1536 2560×1600
ピクセル密度 254ppi 264ppi 300ppi
OS Android4.x系カスタム iOS 6 Android4.2
CPU (1.5GHzデュアルコア) A6X(1.4GHzデュアルコア) Exynos 5(1.7GHzデュアルコア)
RAM 1Gバイト 1Gバイト 2Gバイト
内部ストレージ 16Gバイト/32Gバイト 16Gバイト/32Gバイト/64Gバイト/128Gバイト 16Gバイト/32Gバイト
内蔵GPS なし なし あり
NFC なし なし あり
フロントカメラ 約100万画素 約120万画素 約190万画素
バックカメラ なし 約500万画素 約500万画素
スピーカー ステレオ モノラル ステレオ
HDMIポート あり Lightning用アダプタ(別売り) あり
バッテリー 最大10時間 最大10時間 最大9時間
販売価格 2万4800円/2万9800円 4万2800円/5万800円/5万8800円/6万6800円 3万6800円/4万4800円

左がKindle Fire HD 8.9、右はiPad 3
下からiPad 3、Kindle Fire HD 8.9、Kindle Fire HD、Kindle Paperwhite、iPhone 4S

下がKindle Fire HD 8.9、上がKindle Fire HDの右側面
下がKindle Fire HD 8.9、上がKindle Fire HDの底部

 Kindle Fire HD 8.9は、iPad Retinaと奥行きはほぼ同じだが、幅が21.7ミリ狭く、厚さは0.6ミリ薄く、85グラム軽い。この大きさ・重さを片手で長時間持ち続けるのは少し厳しいが、普段は両手で持っていて、ちょっとした操作をする際に片手を離してもそれほど苦にはならない程度の重さだ。ちなみにKindle Fire HDの厚さは10.3ミリなので、サイズは大きくなったが1.5ミリも薄くなっている。


縦向きに持った状態
横向きに持った状態

 いずれの端末も、microSD/SDHCなどの外部記憶装置には対応しておらず、代わりにオンラインストレージサービスが用意されている。Kindleの場合は「パーソナル・ドキュメント」という名称だ。Amazonで購入したコンテンツ以外の個人的なファイルは、Send-to-Kindle メールアドレスを通じて最大5Gバイトまでクラウド上に保存できる。また、同じアカウントでログインした他の端末でも見られるようになっている。

 eBook USERの読者としては、それぞれの端末で既存の電子書店が利用可能かどうかという点も気になるところだろう。「これでもう迷わない、電子書店完全ガイド」でレビューしている電子書店を中心に、アプリの対応状況を一覧表にしてみた(本稿執筆時点。ブラウザ経由で利用する場合は除く)。

端末 Kindle Fire HD 8.9 iPad Retina(Wi-Fi) Nexus 10
honto ×
BookLive! ×
紀伊國屋書店 Kinoppy ×
楽天koboイーブックストア × ×
GALAPAGOS STORE ×
Kindleストア
Reader Store × ×
BOOK☆WALKER ×
ニコニコ静画(電子書籍) × ×
eBookJapan ×
iBooks Store × ×
GooglePlay ブックス ×

 Kindle Fire HDのレポートでも触れたが、「Amazonアプリストアで承認された」というリリースを出していたeBookJapanのアプリは、結局現在に至るまでKindle Fireシリーズのアプリストアで検索しても表示されないままだ。Amazon Androidアプリストアで検索すると、eBookJapanだけではなくBOOK☆WALKERやKoboのアプリも載っているので、Amazonアプリストアで承認されてもKindle Fireシリーズで表示されるとは限らない状況は変わっていないようだ。

 もっとも、Amazonアプリは基本的にAndroidアプリと互換性があるので、アプリのapkファイルがあればインストールは可能だが、すべて自己責任となる。公式にはKindle Fireシリーズでは、他の電子書店は利用できないと考えた方がいいだろう。Kindle Fireシリーズは汎用的な部分も若干あるが、原則的にはAmazon専用端末だ。汎用度ではNexus 10 > iPad Retina > Kindle Fire HD 8.9という順になる。


Amazon AndroidアプリストアのeBookJapanアプリ
Amazon AndroidアプリストアのBOOK☆WALKERアプリ
Kindle Fire HD 8.9のアプリストアで検索してもこれらのアプリは表示されない

初期設定

 著者が検証しているのはAmazonで購入した端末なので、初期設定で必要なのは言語設定とWi-Fi設定とタイムゾーンの設定のみ。非常に簡便だ。


ロック画面の画像は何種類か用意されており、電源ボタンを押してスリープ状態を解除するたびに変わる。ロック解除はカギアイコンを右から左へスワイプ

設定画面は強制的に縦方向表示になる
[日本語]を選択し、[続行]をタップ
Wi-Fiネットワークが検索される

 Kindle PaperwhiteはWPSボタンに対応しているが、Kindle Fire HDやKindle Fire HD 8.9は未対応だ。念のため改めてサポートへ確認してみたが、「AOSSやWPSには未対応で、パスワードは手入力のみ」との回答だった。ただ、入力した文字は確認できるので、パスワードを間違えたとしても修正が簡単なのはありがたい。


Wi-Fiネットワークの一覧
Wi-Fiネットワークのパスワード入力画面
パスワードは文字を確認しながら入力できる

Wi-Fi接続設定が終わると、画面は登録状況の確認、 登録の完了と自動遷移する
タイムゾーンの選択
予約をしたアカウントに自動設定されている

ソーシャルネットワークの接続設定は、必須ではない
もしAmazonアカウントに紐付けたTwitterアカウントやFacebookアカウントがあったとしても、さすがにここでは設定し直し
[今すぐ開始]をタップで、スタートガイドへ進む

 FacebookとTwitterの設定画面で[今すぐ開始]をタップすると、スタートガイドが始まる。ホーム画面での基本操作は、すべてここで解説されており親切だ。


スタートガイド
コンテンツライブラリへのアクセスは画面上部から
オプションの表示は長押し

[お気に入り]について
設定の開き方
クラウドと端末の切り替え

ホーム画面への戻り方
ホーム画面には、ジェフ・ベゾスCEOからのメッセージが置かれている
ジェフ・ベゾスCEOからのメッセージ

 ホーム画面までたどり着くと、横向き表示にできるようになる。

横向きにしたホーム画面

 なお、左上に表示されている端末の名称は、Amazon.co.jpのアカウントサービス > MyKindle の[端末の管理]から自由に変更できる。

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