アプリ広告で、さらに稼ぐための「鍵」eBookマーケットリーダー

無料のマンガアプリも増えてきたが、その多くは広告で収益を上げている。広告だけで一体、どのぐらい稼げるのだろうか。そして、さらに稼ぐための重要な要素とは?

» 2014年12月03日 10時00分 公開
[杉浦正武,ハートコミックス]

 今日のテーマは、広告収入について。多くのマンガアプリは、広告で収益をあげている。それでは広告モデルで一体、どの程度の売上になるのだろうか。

 それはアプリによる……と言ってしまえば、話はそれまで(!)なのだが、そこはそれ。理論上、どのくらい稼げるのか考えてみたい。

平均的な売上は?

 そもそも、スマホアプリで一体、どのくらいの広告売上が上がるのだろうか。さまざまな情報を総合すると、通常は月に数万円(〜数十万円)、といったところらしい。

 もちろん、個人の趣味アプリの場合、数千円/月ということもあるだろうし、大手ベンダーが、ノウハウを結集して作ったアプリなら、数百万円/月の売上も珍しくないだろう。それでも、「数千万円/月」の域になると、ちょっと難しいかもしれない。――これが、業界的な“肌感覚”となる。

 広告売上は、ものすごくざっくり言ってしまえば、広告表示回数(インプレッション=imp数)に、広告表示1000回ごとの単価(CPM=Cost Per Mille)を掛け合わせることで表現できる。月のimp数が100万で、CPMが100円なら、100万imp×(100円/1000回)=10万円で、売上は10万円だ。

数×単価。この計算式が、広告売上を考える上での「基本」だ 数×単価。この計算式が、広告売上を考える上での「基本」だ

 例えば、1万人のユーザー(ダウンロード数ではなく、アクティブユーザー数なので注意。関連記事参照)に、月100回広告表示できたとして、ようやく100万impだ。CPMは10円〜20円という場合もあれば、100円〜200円というケースもあるが、本稿では仮に100円とする。上記の「imp数100万×CPM100円」というのは、個人サイトから「商業サイト寄り」にさしかかったぐらいの規模であることが、何となくお分かり頂けるだろうか。

 いろいろと聞いていると、驚くような事例も耳にする。ある業界関係者いわく「最高では、個人で、月に7000万円稼いだという話を聞いたことがある」とのこと。何ともうらやましい話だが、逆にいえば、現状ではこれがMAXだろう。マンガアプリも、事情は似たようなものではないか。

売上を高める要素

 それでは、アプリ広告に未来はあるのか。実は、ひとつ注目すべき要素がある。一言でいうと「CPMの高い広告商品が普及すれば、世界は変わるのでは」という話だ。

 広告商品とは、例えば「小さい広告枠」か、「大きい広告枠」か、ということ。一般には、大きく目立って、ユーザーの目に留まるもの(=全画面表示のような)ほどCPMが高くなる。その最たるものが、動画広告だ。

 海外では、スマホ・動画広告も増えてきているようで、2014年11月には米Yahoo!が動画広告のBrightRollを6億4000万ドルで買収するなど、“熱い”分野として認識されている。しかし業界関係者に聞く限り、日本では「普及までもう少し……」という様子(読者の皆さんの中に、スマホアプリを利用していたら不意に動画広告が出た、という経験をした方はどのくらいいらっしゃるだろう)。

 この動画広告、CPMは数百円と、かなり高い。低CPMで悩んでいた媒体にとって、同じインプレッションでも突如として売上が数倍!(場合によっては10倍以上!)……となる可能性がある。

 では、動画広告が受け入れられるのか? ここが最大の悩みだ。マンガをダウンロードするたびに、動画広告が流れてしまう。低スペックの端末だと、カクカクするかもしれない。はっきり言って、ちょっとウザい、という方もいるだろう。結果的にユーザー離れにつながるようなら、元も子もない。

 しかし、受け入れられれば、数千万円/月のアプリが増えてくる可能性がある……というところだろうか。動画広告は、ユーザーにどんな反応を持って迎えられるのか。マンガアプリの運営者としては、日々、そんなことを考えながら、アプリを運営していたりする。

著者紹介:杉浦正武

電子コミックアプリ「ハートコミックス」の主担当者。ITmediaで5年間記者を務めた後、MBA留学(南カリフォルニア大学)、A.T.カーニー、DeNAを経てソフトバンクグループに復帰。新規事業であるハートコミックスを牽引する。


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