秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。
一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。
タイトル:『知床蜃気楼読本』
著者:知床蜃気楼・幻氷研究会
サークル名:知床蜃気楼・幻氷研究会
形態:A5 26ページ 表紙カラー・カラー
Webサイト:http://shiretoko-mirage.blogspot.jp/
熱い夏の日、道路の上に見える水たまりのようなものが「蜃気楼」の仲間だと本を読んで知り、驚いた子どものころ。砂漠を旅する商人がオアシスの蜃気楼を目撃する……といった物語でした。そんな幻想的なイメージの蜃気楼を、知床で観測し続けているという方たちが手掛けた同人誌とめぐり会いました。
作者の知床蜃気楼・幻氷研究会さんは、2013年から知床の蜃気楼を継続して観測していらっしゃいます。複数の方が在籍されており、観察チームがあるんだとか。「意識しないとまるで見えない蜃気楼。しかしひとたびその存在を知れば、え? こんなに出てたの!? と驚きを禁じ得ません」と書いていらっしゃるのですが、そもそも、蜃気楼が狙って見られるようなものだと思っていませんでした! そして知床? 確かに、雄大な自然があるイメージですが……。
本を開くと、浜辺から観測されたさまざまな蜃気楼写真がページをめくる度に現れます。まずは流氷の上に現れる蜃気楼。流氷と蜃気楼が一度に見られるんですねぇ! 氷の白と、淡く青い空と、蜃気楼の写真はいかにも知床らしい美しさです。海に沈む太陽が四角く見えることもあるんですって。海は夕陽に照らされて橙色に光り、そこに四角い太陽が沈んでいく様子は、現実に起きている光景なのに、まるでファンタジーの世界のよう。本の形は横長で全ページカラーなので、たっぷりと海に浮かぶ不思議な光景を眺めることができます。
四角い太陽のページには夕陽の連続写真が載っていて、それを見ると「四角い太陽」は海に落ちる一瞬だけ現れる、ほんのひとときの風景なのだと実感できます。他にも、遠くに建つ展望台の見え方の比較では、いつもはピラミッド型の展望台が、伸びて見えたり、細く見えたり……と、蜃気楼で起こる不思議なゆがみが一目瞭然です。「遠くの岬に蜃気楼が出ると、シルエットが怪獣みたい!」と言われたら、どんな「怪獣かしら」と楽しみになってきます。こんなに細やかに蜃気楼を追えるのは、継続して観測していらっしゃる方たちならでは!
豊富な写真には解説文が添えられ、時々かわいいイラストも付いているので、さまざまなバリエーションの蜃気楼がいつ、どんなときに発生しやすいのかを細かく知ることができます。知識として知ってはいるけれど、きっと一生、遭遇することはないんだろうな……と思っていた蜃気楼ですが、もしかしたら出会えるかも! 見に行ってみたい! とわくわくした気持ちになりました。
『サークル名』
「同人誌即売会に参加してみようかな」と申し込み書を開いた時、意外と悩むのがサークル名ではないでしょうか。同人誌即売会では、参加する場所の確保にグループ名が必要です。もちろん、1人で活動している方もたくさんいらっしゃるのですが、ペンネームとサークル名は別にされている方が多いですね。
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