ACCESS、EPUB 3準拠の電子書籍ビューワを発表:急速に進むEPUBの周辺環境整備
ACCESSは、EPUB 3に対応した電子書籍ビューワ「NetFront BookReader v1.0 EPUB Edition」を発表した。EPUB 3の正式発表に伴い、EPUB関連で大きな動きが相次いでいる。
ACCESSは10月12日、EPUB 3に準拠した電子書籍ビューワ「NetFront BookReader v1.0 EPUB Edition」を発表した。同日から10月14日まで東京ビッグサイトで開催される「Smartphone & Tablet 2011」の同社ブースでは、Android端末上で動作する同ビューワが披露されている。
EPUBはHTML5やCSS3などのWeb標準技術をベースにした電子書籍のファイルフォーマット。AppleやGoogleなども自社の電子書籍サービスでEPUBを採用しており、グローバルでは標準的な電子書籍フォーマットとなっている。10月11日には電子書籍標準化団体の1つであるInternational Digital Publishing Forum(IDPF)がEPUBの最新版「EPUB 3」について、Final Recommendation版として委員会で正式に承認したと発表しており、EPUB 3を基にしたビューワやオーサリング環境などが今後数多く登場するとみられている。
ACCESSでは、組み込み向けソフトウェアで培った技術力、2011年4月に発表した電子出版プラットフォーム「ACCESS Digital Publishing Ecosystem」のノウハウを活用、プラットフォームを問わず動作するフットプリントの小さなEPUBビューワを完成させた。国内ではイーストがEPUB 3.0に準拠したPC向け電子書籍リーダー「espur」を7月に無償公開しているが、商用目的あるいはAndroid上で動作するEPUB 3準拠の電子書籍ビューワは国内初となる。同ビューワはACCESS Digital Publishing Ecosystemでも利用されるという。
同ビューワの開発には、朝日出版社、NHK出版、学研ホールディングス、河出書房新社、幻冬舎、主婦の友社、新潮社、日経BP、早川書房、丸善出版、メディアファクトリーなど出版社18社が協力、EPUB 3で可能になった複雑な日本語組版――縦書き、ルビ、禁則、傍点など――が本当に出版社のニーズを満たせるのか評価をこの数カ月重ねたという。名前が明かされていない出版社の中にはいわゆる「御三家」と呼ばれる小学館、集英社、講談社のいずれかも含まれるとみられるが、いずれにせよ、多くの出版社がEPUBの評価に取り組んでいることが分かる。
EPUBコンバータで既存資産もEPUB化
このほか、電子書籍のオーサリングなどを手掛けるワイズネット協力の下、EPUBへのコンバータも用意。過去にイースト代表取締役社長の下川和男氏もeBook USERのインタビューで、「(どれもHTMLベースで作られたものなので).bookやXMDFからEPUBへの変換というのはそれほど難しくない」と話しているが、既存資産のEPUB化はすでに現実的なレベルで機能しているといえる。
EPUB 3はHTML5やCSS3などのWeb標準技術がベースとなっていることは上述のとおりだが、それぞれの仕様は非常に膨大なものとなっている。出版社などからすれば、どうやって使えばよいか分からないような仕様も少なくない。そのためACCESSでは、最大公約数的に必須と思われる仕様をまずはしっかりカバーし、細かな仕様は出版社のニーズを拾いながら逐次対応する姿勢でいる。また、EPUB 3ではまだ難しい表現などは独自拡張で対応しているようだが、長期的にはそうした部分をEPUBの仕様に盛り込むため、今回の発表に併せてACCESSはIDPFへの加盟を発表している。
この発表の数日前には、ヤフーもEPUBを採用した電子書籍配信サービス「Yahoo!ブックストア」を今冬にも開始すると発表している。EPUBの仕様は公開されているため、EPUB 3に準拠したビューワは今後数多く登場するだろう。GoogleがAndroidにGoogle謹製のEPUB 3ビューワを用意したとしてもさほど不思議ではない。そうなると、ビューワだけの提供では大きなビジネスとならない可能性があるため、周辺環境まで含めた包括的なソリューションを各社が今後打ち出していく可能性が高い。製作から販売まで急速に整備が進むEPUB 3関連のトピックはしばらく注目を集めるだろう。
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