BAAN導入を終えて〜現場を支えたスタッフに聞く
【国内記事】 | 2001.08.27 |
マミヤ・オーピーのBAAN導入は2000年12月,すべての日本拠点でのカットオーバーで一応の幕を下ろした。導入現場を支えた井出秀氏と福山哲夫氏は,現在沖電気工業に出向し,コンサルタントとして活躍している。さまざまなドラマがあったこの事例について,両氏に話を聞いた。
導入を支えた2人。井出氏(右)と福山氏 |
eWEEK ERP導入の成功事例には,必ず「トップダウン」というキーワードが出てきます。マミヤ・オーピーの場合,トップのコミットはどれくらいあったのでしょう?
井出 いい意味で放っておいてくれたことですね。お金を出してくれて,われわれの作業を信じてくれました。全体最適とか,カスタマイズしないとか,そのような問題は小さなことなのです。われわれが決めたことを信じてくれる,そして放っておいてくれる,こうしたトップダウンの形もあります。
また,私はマミヤ・オーピーの導入を「成功事例」とは思っていません。100社で稼動したなら100通りの導入事例があって,われわれの事例が本当に成功なのかどうか分かりませんから。「動いたぞ事例」と思ってくれた方がいいですよ。
eWEEK マミヤ・オーピーでは,BAANをカスタマイズせずに導入したそうですが,本当に全くカスタマイズしていないのですか?
井出 していますよ。帳票出力や取引先別の伝票出力などで,BAANのフォーマットをそのまま使えませんから。BAANそのものはいじっていませんが,「全くカスタマイズしていない」と言うとウソになるので。
福山 カスタマイズという概念をどう捉えるかによるでしょうが,「していない」とは言いにくいものですよ。
eWEEK BAANが稼動してから目立った成果はありましたか?
井出 ERPは,いわば基幹システムです。だから動いて当たり前のもので,成果と言われると,ERPのおかげかどうか分からない部分も出てきます。われわれがマーケットで負けないシステムを作ったという自負はあります。あとはアナログの部分ですね。
ただ,場所を取っていた汎用機を撤去できたりしたことは成果ですね(笑)。
eWEEK ということは,旧システムをすべて撤去してしまったのですか?
井出 そうですよ。過去のデータは紙で保存しておけばいいですし,だれも旧システムを使わなくなりましたから。
eWEEK では,今後の展開について伺います。日本国内は2000年12月にカットオーバーしていますが,海外拠点とのシステム統合の予定や,海外拠点にBAANを導入する計画はありますか?
福山 実際にプロジェクトの後半には,国内拠点でもわれわれだけで導入しましたし,井出と私が2人で海外拠点に行って4〜6カ月で導入する自信はありますよ(笑)。ただ,現在はストップしています。
井出 コスト面の問題ですね。例えば,バングラディッシュにも拠点があるのですが,ここでは人件費が格安です。あえてシステムを導入するメリットがあるのか,考えどころでしょう。
eWEEK 今後SCMやCRMに横展開する計画はありますか?
井出 バーンのSCM製品はよく出来ています。ただ,それが「今必要」なのかどうか判断しなければいけません。必要と判断して,コストが許せば導入するということですね。
eWEEK 現在,沖電気でコンサルタントとしてERPの導入を手掛けているそうですが,具体的にはどのような業務に当たっているのでしょう?
福山 1社にインプリメントを行っています。ユーザー教育の部分で,いわば「ユーザーの洗脳」のためのアドバイスを行ったりしています(笑)。
eWEEK 他社に導入する際に,マミヤ・オーピーでの経験は生きていますか?
井出 フェーズ単位でユーザーがどう考えているか理解できますし,ユーザーの面子を立てながら導入するという視点を持つことができます。これは,システムインテグレーターが決して持つことのできない視点でしょう。
私は,ユーザーに対してもっと安心感を与えたいと考えています。「全部まかせなさい」というアプローチではダメで,一緒に勉強して成長したいのです。5年間で8つのサイトを安定稼動させたのですが,すべての事例は違います。過去にとらわれず,常により良い導入を目指していきたいです。
福山 周囲から,いくら「成功」と言われても,社内にはだれひとりとして,「ありがとう」と言ってくれる人はいません。われわれも成長して,より良いシステムを導入していきたいです。
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[井津元由比古 ,ITmedia]