エンタープライズ:トピックス 2002年6月05日更新

Linux Column:「Linuxディストリビューションに求められるものとは?」

 まずは前回のカーネルアップデートができないという5月27日付けのコラムのフォローアップから……。

 無事に「LinuxWorld Expo/Tokyo 2002」が終わったので、マシンを再度「Red Hat Linux 7.3」で初期インストールし直して試してみたところ、問題なくカーネルのアップデートができるようになった。

 頭がヘロヘロの状態になっていたところでの失敗だったので、そのときには再現性100%だったにも関わらず、今度は再現できなくなってしまった。一体何が原因だったのか全くもって不明だが、とりあえずカーネルはアップデートできるようになりました、ということをお伝えしておく。

 まぁ、どちらかというと、あのギリギリの切羽詰ったところで訳も分からずアップデートに何度も失敗したのは、「いったい何なのよ?」と原因を追求したいところだが、とにかくインストールに時間がかかって仕方ないのでパターン検証を行うことができない。もし、同じような状況に見舞われた方はご一報いただきたい。

 さて、一部にはこの「カーネルがアップデートできない」ということだけが「Linuxが基幹系には利用できない」という理由と捉えられてしまったようだが、私の筆力が至らなかった誤解であるので、少しここで補足させてほしい。

 どちらかというと私が問題にしたかったのは「元に戻せない」ということの方だ。確かにアップデートが成功すれば、前のカーネルは起動の選択肢に「.bak」という形で残るが、なぜか私のようにアップデートが何らかの理由でうまくいかなかったとき、中途半端なところでアップデートが終わってしまうと元に戻すことすらできなくなってしまうということだったりする。

 これがアプリケーションならインストールし直し、というのも「アリ」だと思うが、カーネルというLinuxの根幹の部分で起きたので、この「やり直しが利かない」という点に注目したわけだ。

 私は元々データベース屋なので、「更新の整合性」や「トランザクション処理」といった、現在の業務システムではある程度当たり前になっている考えの中でやってきている。そういう観点から見ると、更新が途中で失敗したのであればきちんとロールバック、つまり更新前の状態に戻ってほしいと思うし、そこまでできて初めて基幹系のシステムで使えるのではないかと思うのだが、いかがだろうか?

 はからずも先週、カルデラ、コネクティバ、SuSE、ターボリナックスの4社が合従連衡して「United Linux」なるディストリビューションを開発することを発表した。発表を見る限りではFHSのような標準に則ったLinuxを開発するという発表だが、標準化への対応をうたうという点ではこれまでとそれほど代わるところはなく、技術的な新機軸は見えない。

 ターゲットはビジネスマーケットで動作検証などの手間を減らすとのことだが、デファクトスタンダード化しているRed Hat Linuxに対して、いかにISV、IHVの支持を得られるかがポイントになるだろう。というよりも、厳しい見方をすれば単なる標準準拠だけで指示を得られるとは思えない。現在の流れから行けば、最終的には標準準拠が必要となるだろうが、これはゴールではなく最低限満たすべき基準でありスタートラインであろう。

 もちろん、やっとスタートラインに立ったのだから良いことではあるのだが、結局のところは各社がどのような付加価値性を付けるのかで勝負がつくわけで、どこまで標準化の意味があるのか、と考えるとなかなか難しい。

 標準化、大いに結構だと思う。ただ、足並みをそろえることばかりを考えていては、二人三脚が如く上手に前に進めなくなってしまうのも事実だ。それよりも、Linuxシステムの安定化に寄与するような仕組みに注力してほしいような気もする。

 とりあえず、元に戻すことができる履歴機能付きパッケージ更新機能付きのディストリビューションが欲しいと思う私であった。

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[宮原 徹びぎねっと]