エンタープライズ:トピックス 2002年6月13日更新

Oracle World 北京 2002 Keynote:言語や制度を超えてグローバル対応が進むオラクルのE-Business Suite

 6月13日、中国・北京で開催中の「Oracle World 北京 2002」カンファレンスは2日目を迎え、そのメインテーマをOracle E-Business Suite 11i(Oracle EBS 11i)に移した。

 ケリーセンターホテル(嘉里中心飯店)で行われた午前のキーノートには、オラクル(中国名:甲骨文)でアプリケーションを統括するロン・ウォール執行副社長が登場し、エンドツーエンドのトランザクション自動化と、パートナーを含めて最新の情報が容易に共有できるOracle EBSを売り込んだ。

オラクルのアプリケーション事業を統括するウォール氏

 Oracle EBSは、可用性と拡張性に優れたOracle9iを基盤とし,シングルデータモデルを構築,その上にさまざまな業務プロセスをプラグインできるのが特徴。同社ではこれを「Information Architecture」という言葉で説明する。

「われわれが2年前にEBSを発表したとき、“本当にそんなことができるのか?”とだれも信じてくれなかった」(ウォール氏)

 4月にカリフォルニア州サンディエゴで行われたOracle AppsWorldから日が経っていないこともあり、ウォール氏のキーノートに目新しさはなかったが、「6000キロに及ぶ万里の長城と同じ。目の当たりにして初めて信じられる」とし、既にOracle EBSを導入し、大幅な業務のスピードアップとコスト削減を実現している長いリストを中国の顧客やパートナーらに示した。

 既によく知られた事例だが、昨年,粗鋼の生産量で世界トップに立った韓国の浦項総合製鉄(ポスコ)はOracle EBS 11iを導入し、1年目から1億2000万ドルのコスト削減に成功している。また、中国でも、エアコンのトップメーカーである上海日立がOracle EBS 11iを導入し、75パーセントの在庫削減を達成しているという。

「あまり“完全な”という言葉を使うべきではないが、われわれのEBSには、エンドツーエンドの機能が組み込まれ、製造業、サービス、公共などカバーできる業界も幅広い。そして、唯一、グローバルに運用できるビジネスアプリケーションだ」とウォール氏。

 この日、オラクルは、Oracle EBSのモジュールのひとつ、Oracle HRMS(Human Resources Management System)を中国市場向けに拡張していることを明らかにしている。既にアジア太平洋地域では、日本をはじめ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港、そして韓国において、その国の文化や制度に合わせた拡張を図り、標準のOracle EBS 11iに組み込んでいる。中国向けの拡張は現在開発中で、最初のリリースは2002年に予定されている。

 ウォール氏は、機能的にもエンドツーエンドをカバーし、グローバルに運用できるOracel EBS 11iを企業が導入すれば、従来のシステムとは違った革新が可能だと話す。

「企業は、EBS自体に手を加えることなく、ゼロ・カスタマイゼーションで導入できる。そのため、アップグレードも簡単になる」(ウォール氏)

ホスティングの顧客は200社に

 オラクルは、新しい成長の機会としてホスティングサービスに照準を合わせている。初日のキーノートでラリー・エリソン会長兼CEOもアウトソーシング事業に触れ、「IBMやEDSの言うアウトソーシングとわれわれの考え方は違う。われわれはオラクルのリソースをアウトソースするのだ」と話している。つまり、ASP型のホスティングやリモートメンテナンスのサービスを通じて、オラクルの5000人の技術者が持つ専門的なスキルやノウハウを提供しようというのだ。

 ウォール氏によれば、既に200の顧客が同社のホスティングサービスを利用しており、「50パーセントのコスト削減とサービスレベルの50パーセント向上を図ろうとしている」という。

 今年1月、アムステルダムのOracle AppsWorldで打ち出された「Daily Business Close」のコンセプトも、デモを交えながら説明された。まるで会計用語のようなキーワードだが、つまりは時々刻々と変化する経営情報が手に取るように分かるポータルベースの次世代ビジネスインテリジェンスシステムだ。

Daily Business Closeを「毎日の新聞のように会社の出来事がすべて把握できる」と説明するウォール氏

 デモでは、あるハイテク企業の生産管理システムが例として挙げられ、急激に回復する需要に対して、製造が追いつかないケースが想定された。

「需要の増加を素早く把握するのもたいへんなら、増産するのも難しい」とウォール氏。

 Oracle EBS 11iであれば、パートナーもWebブラウザでポータルにアクセスしたり、XMLを介して日ごろ慣れ親しんでいるExcelとEBSを連携させるなどして、需要の増加をサプライヤーも素早く把握できるとした。

 ウォール氏は、「スイートをうたうSAPでも手間をかければ同じことができるかもしれない。だが、EBSならもっと簡単に1/10のコストで実現できる」と話した。

 Oracle EBS 11iは、世界の2000の企業で稼動が始まっており、そのうち350はアジア太平洋地域が占めている。

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[浅井英二,ITmedia]