エンタープライズ:ニュース 2002/07/26 20:14:00 更新


IAと調和するブレードサーバ(後編)

コンシューマー市場では、ADSLのサービス低価格化により、インターネットへの常時接続環境を持つユーザーはもはや決して珍しくない。さらに企業向け市場では今後、IBMやマイクロソフトが推進しているWebサービスが遅かれ早かれ現実に登場し始め、これまで以上にインターネットのトラフィックが増加することが予想される。そこで、悲鳴を上げるのが、ASPをはじめとしたxSP業界が所有するIDC(Internet Data Center)だ。

 コンシューマー市場では、ADSLのサービス低価格化により、インターネットへの常時接続環境を持つユーザーはもはや決して珍しくない。さらに企業向け市場では今後、IBMやマイクロソフトが推進しているWebサービスが遅かれ早かれ現実に登場し始め、これまで以上にインターネットのトラフィックが増加することが予想される。そこで、悲鳴を上げるのが、ASPをはじめとしたxSP業界が所有するIDC(Internet Data Center)だ。

 そして、IDCのサーバ増強に向け、注目を集めているのがブレードサーバなのである。まず、主な利点を3つ挙げると、「設置スペースが小さい」「熱効率がいい」「維持費が低い」となる。

 現在のところ、対象はIDCでのWebサーバとしての利用が中心と言われるが、一般の企業システムの奥へと入り込もうと画策しているようだ。初めは、Webサービスやファイアウォールといったフロントエンド機能に採用されていくという。ただし、最終的には、フロントエンドだけでなく、ミッドティア、バックエンドなどに分かれていたサーバマシンを、数機のブレードサーバのエンクロージャに統合し、より少ないスペースで、ケーブル数も激減したサーバ環境を実現するのが目標だ。

 前編でも触れたように、ブレードサーバは1枚のマザーボード上に、CPUやHDD、メモリなどサーバを構成する部品を搭載し、それを3Uなどのきょう体のバックプレーンに次々と差し込んでいくものだ。ちなみに、富士通のBX300は、3Uのきょう体に、2Wayのブレードを20枚格納でき、合計のCPU数は40個にも上る。

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コンパックのブレードサーバ「ProLiant BL e-10」。写真では、3Uのエンクロージャに20枚のブレードが格納されている。この製品では、Webサービス、ファイアウォールサーバとしての利用といったフロントエンドアプリケーションを対象としている

 そして、ブレードサーバを搭載したエンクロージャは、複数のブレード間の内部接続をしたり、パワーサプライを行ったりする。また、ブレードサーバからのギガビットLANなどをまとめるスイッチングHUB「スイッチブレード」や、エンクロージャ内の電源やファン、温度などを集中的に監視する「マネジメントブレード」なども搭載する。

 結果的には、複数のブレードで電源やケーブル、ファンなどを共有することことになり、電力消費量を削減し,電力コストを抑えることができる。各サーバに電源やファンが無いことで、1台1台がそれらの部品を搭載するラックマウント型に比べて、故障する可能性自体が低くなるのも、管理者にとってメリットだ。

 さらに、障害が発生したケースでは、故障したブレードを抜き出して交換すればいい。インストールやシステム監視についても、多数のサーバを一元的に管理できるので、IT管理者の負担や運用の維持コストも低く抑えられる。2重化、RAID構成にすることで、信頼性も確保することもできる。

今後の課題は?

 しかし、ブレードサーバには、現段階ではまだ機能的な限界があるのも事実だ。

 1つは拡張性の問題。ブレードサーバには、CPUやメモリ、ディスクなどサーバとしての最小限の部品しか載っておらず、それをバックプレーンに直接差し込むため、I/Oの拡張性は犠牲になっている。

 さらに、エンクロージャとブレードをつなぐバックプレーンなどの仕様が標準化されていないことも課題として挙げられる。異なるメーカーのブレードを同じエンクロージャに差し込むことは今は難しい。

 HPがコンパクトPCI(cPCI)で標準化を図ろうとしているが,cPCIは実装密度は良くないという特性を持っている。標準化については現在、PCIの標準化団体であるPICMG(PCI Industy Computer Manufacturors Group)が、より高密度で高速な規格を策定している段階だ。Infinibandが採用される可能性もあるという。

 また、多数のサーバを高密度に詰め込むことによる発生する熱の放出の仕方も、今後の課題の1つと言っていい。

 こうした理由も含めて、現段階では、ブレードサーバは、IDCや、Webサービス、ファイアウォールなどのフロントエンド領域、学術機関における特殊計算というように、用途が限られてしまっている。

ブレード投入を急ぐサーバベンダー

 各ベンダーは現在、ブレード製品の投入を急いでいる状態。新生HP富士通、NEC、日立、IBM、サン・マイクロシステムズ、そして、コモディティ化のバロメーター、デルコンピュータも参戦を表明した。デルが参入した時点で、多くのユーザーが将来的にブレードを導入することを本格的に検討し始めたかもしれない。

 この中で、コンパックはHPとの合併後もブレード技術に力をいれる。同社のIAサーバ製品本部、製品企画部長の大内剛氏は、「コンパックのブレードは近い将来、バックエンドのデータベースサーバを含む3階層モデルのすべてをカバーするようになる」と話す。

 現在開発中であるため詳しくは話さなかったが、同社は、2Wayおよびそれ以上のCPUを搭載するブレードを、近い将来投入する予定であるという。

 現在はいわば「第1次ブレードサーバ・ブーム」と言っていい。今後は、拡張性や放熱の問題、搭載プロセッサの数の増加など、性能を向上した製品が続々と登場してくることは間違いない。それだけ、ブレードサーバは合理的な製品なのだ。

ブレードサーバの優位点と課題

優位点課題
内容設置スペースが小さい/熱効率がいい/維持費が低い拡張性/バックプレーンが標準化が進んでいない/放熱の問題

 

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▼サーバの集中化を加速するブレード

[怒賀新也,ITmedia]