エンタープライズ:ニュース 2002/09/20 20:47:00 更新


IAサーバにはWindowsなのかLinuxなのか?

基幹システムにIAサーバが普及するためには、プラットフォームとしてのOSが安定している必要がある。WindowsとItanium 2を組み合わせたシステムがまずベンチマークにおける性能検証で高い数値を叩き出した。Linuxも各ベンダーのサポートを受けながら、存在感を見せ始めている。

 いわゆるミッションクリティカルな基幹システムにIAサーバが普及するためには、XeonやItanium 2などのプロセッサ、チップセットといったハードウェアだけでなく、プラットフォームとしてのOSが安定している必要がある。現在IAサーバを支えるOSとしては、WindowsとLinuxが挙げられる。特に、Itanium 2によるIAの64ビット化によってハイエンド市場を目指す場合に、WindowsとLinuxのどちらが主導権を握るのかは、興味深いテーマとなる。

 WindowsのサーバOSは、1996年にWindows NT 4.0がリリースされて以来、企業のファイルサーバや部門サーバとして本格的に普及してきた。例えば、Active Directoryによって、Windowsのユーザーアカウントやクライアント、サーバ、アプリケーションなど、ネットワーク上に点在するさまざまなリソースを一元管理できるようになった。また、COM+(Component Object Model+)で分散アプリケーション基盤を構築し、配置、管理することもできるようになった。COM+は、ブラウザやVisual Basicのフォームをプレゼンテーション層とする業務アプリケーションや、電子商取引アプリケーションを開発する場合に高い生産性を実現するものとなった。

 そして、2000年にリリースされたWindows 2000 Serverシリーズ(Windows 2000 Server、Windows 2000 Advanced Server、Windows 2000 Datacenter Server)で、そのコードの安定性の評価をさらに高めてきた。

 とりわけ、データセンターなど大規模向けの最上位製品になるWindows 2000 Datacenter Serverは、クラスタリングや負荷分散、32個までのマルチプロセッサ、64Gバイトのメインメモリに対応しており、同市場で高いシェアを持つUNIX系のシステムと対抗していくとして注目されてきた。

 そして、予定がさらに延びて来年になりそうだが、Windows 2000 Serverの次世代版、Windows .Net Server 2003がリリースされる。Active DirectoryやIISの性能が強化などWindowws 2000 Serverがさらにブラッシュアップされる。同OSとハイエンドIAサーバとの関わりで最も重要なのは、64ビットプロセッサであるItaniumファミリー対応版が登場することだ。

UNIXサーバにNECがまず一矢

 先日米サンノゼで行われたIDF(Intel Developer Forum Conference Fall 2002)では、トランザクション・パフォーマンス・カンファレンスのTPC-Cベンチマーク、ノン・クラスタード部門で、NECが、Itanium 2を32基搭載し、Windows .Net Server 2003 Datacenter EditionベースのTX7/i9510システムでランキング5位に食い込み、関係者を驚かせた。(関連記事

 TPC-Cベンチマークは、データベースと組み合わせ、在庫引き当てなどの多数の同時トランザクションを処理するシュミレーション。Windowsはそれまでも、データベースを複数台に分散させるクラスタード部門では好成績を収めていたが、これは実際の企業システムではあまり使われない構成だ。一方で、データベースを分散させないノンクラスタードの構成で上位を占めるのは、未だにUNIX・RISCプロセッサのシステムだった。この分野でNECが「遂に」上位に入ったというわけだ。このシステムでは、IAの生命線であるコスト対効果も非常に高いようだ。

 NECの記録は30万9000tpm。これは、従来IAプラスWindowsの最高記録だったユニシスのES7000の16万5000tpmを大幅に上回るものとなった。UNIXと同じ土俵でIAが互角以上の勝負をしたことで、NECだけではなく、ハイエンドエンタープライズ市場に賭けるマイクロソフトもホッとしたのではないか。マイクロソフトにとっての脅威の1つはLinuxに振り落とされることだからだ。一方で、同じ64ビットItaniumファミリー市場を狙うLinux側の関係者にとってはプレッシャーになるはずだ。

各ベンダーは次々とLinuxサポートへ

 Linuxの方もファイルサーバなどのローエンドの利用に留まらず、ハイエンドのIA市場で成功するために着々と準備が進んでいる。レッドハットやミラクルリナックスなどのディストリビューターも、基幹業務向けのLinuxに力を入れている。

 現時点で製品として有力なのは、レッドハットが6月21日にリリースした基幹システム向けのLinuxシステム「Red Hat Linux Advenced Server 2.1」。同製品は、クラスタや管理ツールを装備している。また、大規模環境に最適化され、製品のアップグレードを定期的に提供するところが特徴となっている。

 9月16日には、IBMが全4つのサーバ製品ラインでRed Hat Linux Advenced Serverをサポートしていくことを明らかにした。(関連記事)。また、IBMは「メインフレームLinux」によるサーバ統合にも力を入れている。(関連記事

 さらに、Advenced Serverはヒューレット・パッカードやデルコンピュータなどのメーカー、オラクル、SAP、ベリタスなどのアプリケーションベンダー各社からもサポートを受けている。これは、Linuxの誕生の経緯にまつわる「だれがサポートするのか」という問題にも明るい材料となる。

 64ビットIAサーバのプラットフォームについては、現時点では、NECやユニシスによるWindowsベースのシステムの性能検証が一歩進んでいると言っていい。しかしながら、Windows .Net Serverのリリースが遅れていることに加え、ミッションクリティカルなシステムになればなるほど、不具合発生などの不安があるファーストリリースは、採用が見送られる傾向がある。

 一方、Linuxは、低コストおよびソースコードが公開されているメリットと、IBMなどのサポートを受けながら、ハイエンドIA市場での存在感を今よりも増してくる可能性がある。マイクロソフトのマーケティングノウハウの高さも考慮すると、Windows .Net Serverがリリースされて、幾つかのバグなどが出て「こなれて」くるまでの今後2〜3年間が、LinuxがハイエンドIAサーバ市場の主導権を握るための大事な期間になるという見方もできるかもしれない。

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[怒賀新也,ITmedia]