エンタープライズ:ニュース 2003/01/23 07:15:00 更新


基調講演:Oracle9i技術をフル活用して統合とコスト削減を図るE-Business Suite 11i

サンディエゴで開催中の「Oracle AppsWorld 2003」は最終日を迎え、午前の基調講演にオラクルのクリフ・ゴドウィン上級副社長が登場した。ゴドウィン氏は、Oracle9iの統合されたグローバルデータベースを構築できる最新技術を活用し、コストを下げつつ、さらに情報の質を高められるE-Business Suite 11iをアピールした。

 1月22日、カリフォルニア州サンディエゴで開催中の「Oracle AppsWorld 2003」カンファレンスは最終日を迎え、午前の基調講演にオラクルのクリフ・ゴドウィン上級副社長が登場した。

 ゴドウィン氏は、E-Business Suite(EBS)とOracle9iテクノロジーの親和性を高める取り組みも統括しており、Oracle9iの統合されたグローバルデータベースを構築できる最新技術を活用し、コストを下げつつ、さらに情報の質を高められるEBS 11iをアピールした。

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基調講演ではOracle9iとの親和性を前面に打ち出した


 ゴドウィン氏は、EBSがどのようにOracle9iテクノロジーを活用しているかを説明する前に、これまでのビジネスアプリケーションがどのように実装されてきたかを振り返ることから始めた。

 ゴドウィン氏の言葉を待つまでもなく、多くの企業は、ファイナンス、CRM、SCMといった各アプリケーションを「ベスト・オブ・ブリード」で導入している。このため、ファイナンスから顧客のデータをCRMやSCMへコピーし、その逆も行われるのが普通だ。

 また、すべての情報を一緒にしないと、製品ごと、チャネルごと、地域ごと、マネジャーごとの売り上げレポートを作成することはできない。このため、データウェアハウス(DWH)を別途構築する企業は多い。ただし、その際には、どのデータサブセットを移すのか? といった厄介な問題も抱える。

 しかし、統合されたグローバルデータベースを構築できるOracle9iをフル活用すれば、コストを下げつつ、さらに情報の質を高められる。トランザクションデータとサマリーデータを単一のデータベースで管理できるため、DWHを新たに構築する必要もない。

 ゴドウィン氏は、アフターケアサービスの例を挙げ、情報統合化のメリットを説明する。効率良くサービスエンジニアを顧客へ派遣するには、人事システムから特定技術を備えたエンジニアを選び、ロジスティックスシステムから該当するパーツを積んだトラックを探し、顧客管理システムからサポート契約の情報を入手する必要がある。

「データをさまざまなシステムから入手して初めて効率良くサービスが提供できる」とゴドウィン氏。

クラスタリングで逆転の発想

 システムを統合されたグローバルなものにするためには、どの業界にも共通する水平的な機能を広範にカバーしていなければならないし、業界に特化した垂直的な機能も必要になる。ワールドワイドに展開するには、さまざまな国や地域の言語、通貨、制度に対応しなければならない。

 スケーラブルなOracle9iという基盤を生かすため、EBS 11iでは、こうしたさまざまな特徴を備えている。一例を挙げれば、EBS 11iでは、実に30の言語に対応済みだ。

 今回のAppsWorldカンファレンスでは、IAサーバとLinuxの組み合わせによる優れたコスト節約効果が再三アピールされているが、もちろんEBS 11iは、Oracle9i RAC(Real Application Cluters)をフルに活用する。

 ゴドウィン氏は、Oracle9i RACによるシステム構築を「逆転の発想」と表現する。

 企業にとって最も重要なのはデータだ。それが一元的に格納されたストレージの周辺機器としてサーバを考えれば、情報の分断化も避けられる、とゴドウィン氏は説明する。Oracle9i RACではほぼリニアに性能が向上していくし、サーバをOLTP用とDWH用に分ければ、一方の負荷が他方に及ぼす影響を考慮する必要もない。

「データ中心、ストレージ中心の考え方に、どうして他社は気が付かないのだろう」とゴドウィン氏。

 また、Oracle9iのMaterialized View機能は、EBSでレポートを作成する際のパフォーマンスを劇的に改善してくれる。トランザクションデータとサマリーデータを単一のデータベースで管理する場合に、差分だけをサマリーに追加・更新していく機能で、CPUへの負荷をかけずに素早くレポートを得ることができる。

 基調講演後、プレスとのインタビューでも彼は、「Daily Business Intelligenceのポートレットはサマリーデータに対してシンプルな問い合わせを行っているだけ。肝心なのは、Materialized Viewによって、トランザクションからインクリメンタルにサマリーを作ることだ」と話している。

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インタビューに答えるゴドウィン氏


実装、拡張も低コストなEBS 11i

 しかし、顧客がEBSを導入する際、すべてが一夜にして変わるわけではない。EBSが広範な機能性を備えているとしても、既存のシステムとのインテグレーションが避けられないし、機能をさらに拡張するために開発も必要になるかもしれない。ゴドウィン氏は、そうした場合にもコストが最小に抑えられるよう、EBS 11iは初めからデザインされていると話す。

 Oracle AppsWorldカンファレンスの初日に発表された「Oracle Business Flow Accelerators」は、最初の一歩として1つのビジネスフローからEBSを導入するのに適しているし、「テスト済みの雛型」を利用するため、短期間で実装できる。

「カスタマイズが必要になるかもしれないが、出発点としてはいい。絵に描いた餅ではなく、最初から実用を考えたものだからだ」(ゴドウィン氏)

 既存システムとのインテグレーションも標準ベースでコストを抑えられるようにしている。Webサービスの技術的な標準やOAGやRozettaNetのようなビジネスレベルの標準もEBS 11iではサポートされている。最新のEBS 11iリリース8では、さまざまなWebサービスが定義済みで、Webサービスを介したアプリケーション間の連携が可能となっている。

 ゴドウィン氏によれば、Webサービスに対する需要は高まっており、オラクルとしてもこの分野に投資を増やしていくという。

 オラクルはしばしば、「カスタマイズをするな」というメッセージを顧客らに伝えている。コードを変更すれば、パッチを当てたり、アップグレードするのが難しくなるからだ。そのため、ゴドウィン氏は、オラクルが「Flexfields」「Folders」「HTML Selfservices Personalization Framework」といった、コードを変更するのではなく、構成変更する機能をEBS 11iで提供しているとする。

 ただし、それでもビジネスロジックを追加しなければならない顧客はある。EBS 11iはオープンスタンダードのJavaで書かれており、JDeveloperで書かれたビジネスロジックは、ユーザーインタフェースやJava APIから再利用できるだけでなく、Webサービスとして公開することもできる。

「オープンスタンダードをベースとしているため、段階的な実装、他システムとのインテグレーション、機能拡張というすべての領域でコストを抑えることができる」と、ゴドウィン氏はEBS 11iが「コスト節約レディ」であることを強調した。

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[浅井英二,ITmedia]