エンタープライズ:ニュース | 2003/01/30 06:37:00 更新 |
「Notes/Dominoは“Next Gen”化で顧客に選択肢をもたらす」とIBM副社長
「Lotusphrer 2003 Orlando」でIBMソフトウェアグループの戦略担当副社長が、Notes/Domino「Next Gen」化の狙いを話した。それは、ほかのミドルウェアとのインテグレーションを図るだけでなく、J2EE標準による選択肢を顧客に提供したいからだという。
「オープンスタンダードの良さを知った顧客は、津波のようにやってくる。(Notes/Dominoのコンポーネント化は)われわれにも顧客にとっても、大きなベネフィットをもたらすだろう」
IBMソフトウェアグループで戦略を担当するクレイグ・ヘイマン副社長は1月28日、フロリダ州オーランドで行われている「Lotusphrer」カンファレンスでNotes/Dominoの次世代製品についてこのように話した。
IBMは、今年後半リリース予定のNotes/Domino 6.5でJ2EEに対応させ、来年にはインフォメーションストアとしてDB2を利用可能にしたバージョン7.0を計画している。また、開発ツールのWebSphere StudioをDominoに対応させるためのツールキットをリリースすることで、Domino Designerの開発ノウハウを生かしつつ、WebSphere上でアプリケーション開発を行える環境を提供する。
IBMはWebSphere、DB2、Tivoliといったミドルウェア群と、Lotus部門が得意としているコラボレーションソフトウェアをJ2EE環境下で結びつけるため、いよいよNotes/Dominoを次世代(Next Gen)製品へと移行させる準備を整えた。
ヘイマン氏は、オープンスタンダードに対応することで、Notes/DominoからTivoliのセキュリティや管理機能、DB2の持つデータストレージパフォーマンスを活用できるようになり、WebSphere上のアプリケーションと統合、それぞれの長所が取り出せるようになるとする。
同じことはほかのIBMソフトウェアについてもいえる。Notes/Dominoの持つ機能を活用できるわけだ。
「知的生産性を向上させること関して、Lotus製品は非常に良いポテンシャルを持っている。われわれはそのパワーをオープンスタンダードの環境で生かしたい」とヘイマン氏。
Notes/DominoがJ2EEに対応すれば、Webサービスの中でビューやフォームをはじめとするユーザーインタフェース、それにフォームベースの簡単な開発環境を活用できる。一方、Notes/Dominoユーザーにとっても、Notesアプリケーションの資産をWebサービスによってインテグレーションしていくチャンスが得られる。
もう1つ重要な点としてヘイマン氏が挙げたのは、選択の自由をユーザーに与えることだ。J2EEに対応することで、Notes/DominoはほかのさまざまなJ2EEミドルウェアと結びつくことができる。
「J2EE対応のNotes/Dominoで、われわれIBMソフトウェアグループの製品を使わなければならないという強制があってはならない。例えば、ディレクトリ管理にノベルのNDSやそのほかのサービスを利用したいという顧客に、Tivoliでなければダメといった強制を行うべきではない。われわれは顧客が必要とする“ピース”を用意し、各ピースを組み合わせて最大の価値を提供する」(ヘイマン氏)
「顧客が選択すべき」という姿勢は、IBMソフトウェアグループの自信の裏返しでもある。IBMソフトウェアグループは、過去たった5年の間に、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、セキュリティ、管理などの各分野でリーダーシップを発揮するところまできた。
「5年前、われわれがミドルウェアに注力し始めたころ、だれがこのような成功を想像しただろう?」とヘイマン氏は言う。
IBM全体を見ると、サービス/サポートや営業が優れているからこその戦略ともいえるが、今後も各分野をリードしていく絶対的な自信がなければソフトウェアグループとしてここまで言い切ることは難しいだろう。
しかも、IBMは現在のポートフォリオだけで満足しているわけではない。実際、彼らはこの6カ月の間にも、各分野で数多くのソフトウェア企業を買収している。
「買収は、顧客ニーズを満たすため、既存のIBMソフトウェアグループに足りないものを補うべく、計画的に行われている」とヘイマン氏。常に顧客ニーズを検証し、不足しているものは今後もIBMの中に取り込み続けるという。
さらにヘイマン氏は、コラボレーションのためのコンポーネントが必要なとき、単に「Notes/Dominoが利用できます」と用意するだけでは競争力を維持できないと指摘する。顧客が多くの選択肢の中から、IBMソフトウェアグループの製品を必要とするように、足りないピースを埋めていく必要がある。Notes/Dominoのコンポーネント化が進むことで、アプリケーションプラットフォームとしてのNotes/Dominoの進化が止まるのでは? といった心配は無用のようだ。
「われわれはNotes/Dominoを単にJ2EE環境下でコンポーネント化するだけではない。今後もNotes/Dominoとしての機能強化に取り組む。その上で、Notes/Dominoの機能をJ2EE環境におけるミドルウェアとして活用することを目指している」(ヘイマン氏)
従来のNotes/Dominoの世界に留まるのか、それともWebサービスによるインテグレーションへと進むのか。それもまた、ユーザーの選択に委ねられている。
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Lotusphere 2003 Orlando Report
[本田雅一,ITmedia]