エンタープライズ:ニュース 2003/05/16 09:02:00 更新


アドビ、「Acrobat 6.0日本語版」を発表。「Acrobat Reader」は「Adobe Reader」に

アドビシステムズはPDF作成・管理ツール「Acrobat 6.0日本語版」を発表した。従来は1種類だったが、6.0からはユーザーニーズに合わせた3つの製品ラインアップとなった。

 アドビシステムズは5月15日、都内で新製品発表会を開催し、PDFファイル作成・管理ツール「Adobe Acrobat 6.0日本語版」を発表した。これまでは1つのパッケージのみだったが、6.0からは「Adobe Acrobat 6.0 Professional」、「Adobe Acrobat 6.0 Standard」、「Adobe Acrobat Elements」の3つの製品を提供する。

 また、無償で提供しているPDFファイル閲覧ソフト「Adobe Acrobat Reader」(最新版は5.1)は、「Adobe Reader 6.0」と名称を変える。

Acrobatへのニーズに合わせた3つのラインアップに

 Acrobatで作成されるAdobe PDF(Portable Document Format)ファイルは、対応プラットフォームの豊富さや電子署名への対応などにより、電子文書のデファクトスタンダードの地位にあり、出版業界の利用から一般企業の社内/社外文書、官公庁までと広く利用が進んでいる。

 アドビシステムズではこれらの状況を踏まえ、Acrobat 6.0では機能の充実とユーザーインタフェースの改良を進めるとともに、裾野の広がったユーザーを「ビジネス/エンジニアリング/クリエイティブプロフェッショナル」、「一般ビジネスユーザー」、「PDF作成機能だけを使いたい企業」の3つに分けて、それぞれに対応する製品を用意した。

 一般ビジネスユーザーを対象としたAcrobat 6.0 Standardは、Microsoft Offceとの連携を強化し、Word、Excel、PowerPointのドキュメントをより簡単にPDFファイル化する機能を搭載した。各Officeドキュメントを右クリックメニューでPDF変換したり、複数の種類の異なるドキュメントを共通のヘッダ/フッタを付けて1つのPDFファイルにまとめたりできる。WordやExcelからPDFファイル化した文書を、レイアウトを維持したまま再びWordやExcelの文書に戻す(制限事項あり)ことも可能。また、Macromedia Flash、QuicTime、MP3、Windows Mediaなどのマルチメディアコンテンツを埋め込んだPDFファイルも作成可能になった。

 このほか、ファクス文書をスキャンするなどして作成したPDFファイルをテキスト情報を含んだドキュメントとして扱えるようにするためのOCR機能、電子メールやWebブラウザを介してPDFファイルで共同作業を行える「レビュートラッカー」機能を追加した。レビュートラッカー機能を利用すると、PDFファイルに校正やコメントを加える作業を、自動的に整理・管理しながら行える。電子メールでの共同作業時には、小さな差分ファイルのみのやりとりで済む。セキュリティ関連では電子署名や暗号化にも対応している。

 プロフェッショナルユーザー向けのAcrobat 6.0 Professionalは、Standardの機能に加え、AutoCAD、Visio、ProjectドキュメントからのワンクリックPDFファイル作成機能、PDF/X(電子送稿の世界標準)への準拠、印刷業会向け機能などに対応している。AutoCADドキュメントはレイヤー情報を維持したままPDFファイル化が可能で、レイヤーごとの閲覧もできる。

 Acrobat ElementsはAcrobatを大量導入しようとする企業向けの、OfficeドキュメントからのPDFファイル作成に特化した製品。ほかの2製品と異なり、一般小売りはせずライセンス販売のみとなる。また対応OSもWindowsだけでMac OS版も用意しない。

 これら製品群の価格は、Acrobat 6.0 Standardが3万4800円、Acrobat 6.0 Professionalが5万4800円(以上アドビストア価格)、Acrobat Elementsは1000本以上からのライセンス販売のみ(販売パートナー経由)となっている。発売は7月4日(Acrobat Elementsのみ5月16日)。

 Acrobat Readerは今回発表の6.0から名称を「Adobe Reader」(Adobe Reder 6.0日本語版)に変更する。4月に発表した「Adobe Documents Server for Reader Extensions日本語版」と組み合わせて、PDFファイルに埋め込まれた電子署名や記入済みフォーム保存と記入データの送信に対応する。またeBookファイル、「Adobe Photoshop Albam」で作成したファイルの閲覧が可能になっている。アドビシステムズのサイトを通じて6月中旬から無償ダウンロード提供の予定。

ドキュメント製品への注力をアピール

 オープンしたばかりのホテルで行われた発表会には、アドビシステムズ代表取締役の石井幹氏のほか、米アドビシステムズCEOのブルース・チゼン氏らが出席した。

(右から)アドビシステムズの石井社長、米アドビシステムズのチゼンCEO、アクセスの荒川社長、米アドビシステムズのクーン副社長

右からアドビシステムズの石井社長、米アドビシステムズのチゼンCEO、アクセスの荒川社長,米アドビシステムズのクーン副社長。荒川氏は4月に発表したアドビシステムズとの提携に基づき、PDFをPDAや携帯電話、情報家電のブラウザで利用できるようにするとコメントした


 チゼン氏は「世界的な標準になったXMLは電子的なワークフローに最適だが、人間が直接扱うのは困難が伴う。そこでどんなOSでも使え、オンラインでもオフラインでも、ファイアウォールを越えた利用もできるPDFの出番となる。PDFはXMLの可能性を最大限に引き出すことができる」とコメント。石井氏も文部科学省や大成建設、ダイワボウ情報システム、東芝ファイナンスなどで業務プロセスやワークフローの効率化にAcrobatが活用されているという事例を紹介するなど、アドビシステムズのビジネスドキュメント分野へのコミットメントを強く印象づける発表会となった。

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[佐々木千之,ITmedia]