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いまや「PDF」は、企業や官公庁におけるオフィシャルな電子文書フォーマットとしてデファクトスタンダードの地位を得た。アドビは、企業買収で手に入れたXMLフォーム技術とPDFを組み合わせ、サーバからエンドユーザーまでのトータルドキュメントシステムの提供を目指している。

クリエイター向けのグラフィックス/ドキュメントのデスクトップ製品を手がけてきたアドビシステムズは、2002年2月、サーバ向けXMLフォーム技術を持つアクセリオの買収を発表、この冬にはいよいよサーバ製品を発表し始めた。PDFを軸に、電子申請業務など、e-Japan構想をにらんだドキュメントビジネスの本格的展開を図るアドビシステムズの石井幹社長に、e-ガバメント業界について聞いた。

ZDNet 2002年のe-ガバメント業界、IT業界はどのようなものでしたか?

石井 アドビシステムズは、クリエイターの方々にデザインツールを使っていただくビジネス、個人ユーザーや企業内で個人に近い方々向けのビジネス、大企業や官公庁/自治体向けのビジネスというように、ビジネスの幅が広がってきました。厳しい経済状況もあり、日本市場での売り上げはまだまだがんばらないといけない部分もありますが、アドビとしては総じてまあまあのビジネスができたと思っています。

 行政機関は、予算で動いているということもあり、堅調でした。e-ガバメント/e-Japan構想の最初の段階で、大事な時期であるということもあって、いくつかのプロジェクトに参加させて頂きました。そういう意味で2002年は「ああ、e-Japan構想は実際に動いているんだなあ」と実感できた年でした。

 企業のほうでも、途中で投資の見直しなどは行なわれるのですが、まだまだITに対する投資は重要課題と考えられ、総額としてはそれほど減っていないように感じました。ただ、企業側が本当に必要な物だけに、選択的にお金を使うようになってきています。お金は用意しているけれども、その執行においては、必要性を吟味するという、ある意味では健全なものになってきていると思います。

 アドビの製品ではAcrobatに関して、非常に強い引き合いをいただいています。電子ドキュメントによる標準化は、企業/官公庁の業務を効率化する上での重要案件として考えられており、ありがたいことだと感じています。

 アドビにおける2002年における変化と、そこからのチャレンジなんですが、2002年のはじめのアドビはほぼ100%デスクトップクライアントソフトウェアのベンダーだった。それがアクセリオ(旧ジェットフォーム)の買収によって、サーバソフトウェア、ワークフロー、基幹業務につなげていけるソフトを持つ新しい顔が加わりました。ここを今後どうのばしていくかが大きなチャレンジになっています。

ZDNet e-ガバメント向け製品についてもう少し掘り下げてお話しいただけますか。

石井 いくつかトピックがあります。2002年はAcrobat ReaderとPDFが自治体/政府において、どこに行ってもあるという「PDF Everywhere」ということが達成された年でした。情報/ドキュメント開示ということで、行政機関が情報を出すというフェーズにおいてPDFが使われるようになりました。2002年後半には「Acrobat Reader 5.1」という新しい製品をリリースしたことがあります。これは電子申請をPDFで実現するために必要な、いくつかの機能を付加したものです。省庁のなかに、PDFを正式なフォーマットとして認めていたいたところも出始めました。まず法務省に商業登記の正式な電磁的記録方式として認めていただいたのをはじめ、総務省や国土交通省でも認めていただきました。

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[聞き手:佐々木千之,ITmedia]


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