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120年の歴史を誇るNCRだが、6年前に生き残り戦略の柱として事業をわずか3つに絞り込んだ。中でも社運を賭けたのが、データウェアハウス(DWH)事業だ。競争力の源泉となるDWHは、日本の企業が再び輝きを取り戻すには欠かせない。

120年の歴史を誇るNCR(ナショナル・キャッシュ・レジスター)は、文字通りキャッシャレジスターのパイオニアとして知られ、その後はIBMと共にコンピュータメーカーとして一時代を築いた。しかし、同社は1996年、当時30もあった事業を見直し、いわゆる「選択と集中」を生き残り戦略の柱とし、わずか3つの事業に絞り込んだ。メーカーからテクノロジーソリューションプロバイダーへの移行だ。中でも社運を賭けたのが、データウェアハウス分野の「Teradata」事業だった。同事業は、ここ数年の厳しい経済状況下でも黒字に転換し、NCR全体の業績に貢献するにまで成長した。日本NCRの上田社長に話を聞いた。

ZDNet 2002年、国内のデータウェアハウス(DWH)業界はどうでしたか。

上田 国内でもデータ容量が10テラバイトを超えるような顧客が現れ、大きな進展を見ましたが、DWHの活用、つまりデータ資産の経営に対する活用という点では、まだまだ米国と比較してギャップを感じます。絶対に必要なIT投資のリストにDWHが入っていない企業もあります。POSやATMのように、それがないと業務が止まるわけではない、事業が成り立たないわけではない、と考えている経営者が多いのではないでしょうか。

 企業にとってITが必要なことはだれもが理解しています。しかし、それは単に1人1台のPCを導入すればいい、ネットワークでつなげばいい、というのではありません。今や企業がデータや情報を活用して競争力の源泉にする時代で、そのためのメカニズムがDWHなのです。

ZDNet しかし、DWHはシステムも大掛かりで、多額のコスト負担を企業に強いるものです。競争が激しくない業界にDWHを普及させていくのは難しいのではないでしょうか。

上田 日本がこれまで誇ってきた製造業も含め、競争は至るところにあります。かつての典型的な日本のメーカーは、優れた製品をつくっているのだから負けるはずがない、といった考えに支配されていました。しかし、今や製品優位だけで勝てる企業はごくわずかです。

 よくマネジメントスクールで教えられているのですが、企業が勝つための要因は、「製品のリーダーシップ」「オペレーションの効率化」、そして「顧客との親密性」です。しかし、これまで最も得意としてきた「製品」で日本のメーカーは問題を抱え始めています。海外とのコスト競争に勝てない、オリジナリティを生み出せない、などです。日本のメーカーは今後、どこに軸足を置いていくべきかを見極めないといけなくなるでしょう。

 オペレーションの効率化や顧客との親密性も、従来のように人手をかけていたのでは競争から脱落してしまいます。カギとなるのは、情報の有効活用であり、DWHがなければ難しくなっています。

 例えば、デルコンピュータは、オペレーションを効率化し、競争力の源泉にしている典型的な企業です。企業の至るところで発生するデータを集め、それを活用し、在庫をできるだけ持たない経営を実現しています。また、同社は、パーソナライズされたWebサイトを構築し、顧客にフォーカスしたワンツーワン・マーケティングを実施していることでも知られています。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]


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