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「ブロードバンド」という言葉が一般化するずっと以前から、その可能性に着目し、ブロードバンドコンテンツ関連技術を磨いてきたのが日本SGIだ。ブロードバンド人口が1000万人を超えるであろう2003年に、どんなビジョンを描いているのだろうか。

総務省統計によると、2002年11月末でADSL回線は500万を突破し、1月から340万以上増えた。FTTHとCATV回線をあわせるとブロードバンドユーザー数は700万人を超えた。7年前にFTTHを使ったビデオ・オン・デマンド実証実験を行うなど、早くからブロードバンドに着目して数々の経験を持つ日本SGIの和泉社長に、ブロードバンド市場の動向を尋ねた。

ZDNet 日本SGIでは、ビジュアライゼーション、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、ブロードバンドが、事業の3本の柱ということですね。

和泉 当社のコアコンピタンスであるビジュアライゼーション、HPC、ブロードバンドには、すべてビッグデータ(大規模なデータ)を扱うものですから、ストレージも核と言えますね。アメリカでシリコングラフィックスが生まれてから、基本的な考え方というものは変わっていません。僕はよく言っているのですが、日本SGIでは、これらコアコンピタンスについて、アメリカよりも「鮮明に」展開してきています。

ZDNet 2002年は2001年の流れを引き継いで、ADSLをはじめとしたブロードバンドの普及がいっそう進みました。日本SGIが見た、2002年のブロードバンド関連の動きというのはどんなものだったでしょうか。

和泉 今ではもう、「ブロードバンド」という言葉は、本当に当たり前に使われるようになりましたが、最初はブロードバンドという表現自体が、「そんな“広帯域”が何で用語になるの」と言われました。日本SGIは1996年に、NTTと浦安で実験を行うなど、ブロードバンドでバンド幅が広くなると、その中に流れるコンテンツが重要なんだと、そのころから着目していました。

 我々は2年ほど前に「ブロードバンド元年」と宣言していますから、2002年はブロードバンドが本当にスタートして、元年から2年目くらいにかかって、爆発した年かなと思います。ADSLも500万回線を突破しましたよね。まあ、僕の希望では、日本は今の時点でFTTHがこのくらいの数字まで行っているべきと思っていたのですが。日本SGIはブロードバンドを、有線、TTNetと組んでFTTHで始めました。「ADSLはブロードバンドじゃない」なんて言っていた時期もあるのですが、現実的にはそうも言っていられなくなりました(笑)。

 ですから2002年は、ADSLによって常時接続が定着し、いよいよ皆さんがコンテンツの重要性を認識した年と言いかえることもできるでしょう。

ZDNet すると2003年はコンテンツの年ですか。

和泉 2003年はわかりやすい。いよいよリッチコンテンツの時代に突入するということです。今まではコンテンツがあるのかないのかということが議論されてきたのですが、これは実は不毛な議論でした。コンテンツはあるんです。

「2003年はいよいよリッチコンテンツの時代」という和泉社長

 つまり、インフラがない限りどんないいコンテンツでも流せない。だからSGIのリアリティセンターのような特定の場所、限られたところでだけで使われていました。ブロードバンドの世界になることによって、もっともっと広がりが出てきて、そうればコンテンツもさまざまな形で開花してくるのではないかと。2003年は、たいへん期待の持てる年です。

 1つの産業が生まれてきます。今までは、放送とか映画とかそういうものだけがコンテンツだと見られてきましたが、それ以上のものがどんどん出てくる時代になります。僕がよく言っているのが、コンテンツにフォーカスが当たってくると、企業の中での表現の仕方、単にPowerPointを使ってグラフや文字を出すのが表現力ということではなく、さまざまな形で映像を入れたりCGを入れたりということが日常的になるでしょう。クリエイターが脚光を浴びる時代になります。

 また、やっとユビキタスという言葉も日常的に使われるようになりましたが、常時接続が始まれば、「いつでもどこでも」ということが当たり前になってきます。ブロードバンドは決してADSLやFTTHだけのものじゃなく、携帯電話、無線LANを含めてさまざま々なものが繋がれる時代になります。今まではブロードバンドいうインフラの議論が多かったのですが、その中を流れるコンテンツや、それらを使ってどんな仕事ができるか、どんな社会になるかという「ユビキタス社会論」が日常的に語られるようになるのではないかというのが、2003年への展望です。


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[聞き手:佐々木千之,ITmedia]


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