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Linux業界でデファクトスタンダードとなっているRed Hatディストリビューション。この本家となるRed Hat Linuxを扱うレッドハットは、2002年に2つの軸を明らかにし、今後のLinuxディストリビューションの進むべき道を示した

 レッドハットの2002年は、エンタープライズ向けの「Red Hat Linux Advanced Server 2.1」を3月、今後のLinuxデスクトップを象徴する「Red Hat Linux 8.0」を10月に発表し、2つの軸が明確となった。幅広く採用されているディストリビューション「Red Hat」が、今後どのように動いていくかが垣間見られた年といえる。

 Linuxの今後には、エンタープライズ市場でのサーバ利用はもちろん、クライアントPCにも関わるTCO削減も課せられている。これらの課題について、レッドハット代表取締役・平野正信 氏にインタビューを行い、Linux業界の動向と、同社の取り組みについて聞く。

第2世代に入ったLinux、その意味は

ZDNet Linux業界にとって、そしてレッドハットにとって2002年はどのような年でしたか。

平野 2002年は、Linuxが第2世代に入った年だといえます。商用化Linuxディストリビューションの登場から2001年までは第一世代でした。1999年のブームを経て、2000年初頭に入ってからはサーバ用途の企業にとどまらず、個人ユーザーにも幅広く知られるようになったのです。ここ数年でLinuxはよりいっそう多様化されたと感じます。

 第2世代に至るまでは幾つかの問題点がありました。その中でも最も大きかったのは、「Linuxは、OSであってもプラットフォームではなかった」という点です。プラットフォーム化された時点で、Linuxは第2世代に入ったといえます。ここでのプラットフォームは、「企業でLinuxをビジネス利用する場合、安定した環境は長期間保証しなければならない」という定義です。第1世代のLinuxでは、アプリケーションの上位互換性を保証できませんでした。アプリケーションを構成するバイナリが上位互換性を明示できないことは、企業内利用では致命的です。運用開始から3年以上に渡り、24時間稼動が求められる現場では、このような動作保証が重要です。

 この答えとしてレッドハットは、2002年3月に「Red Hat Linux Advanced Server 2.1」を発表しました(リリースは6月)。この製品のポイントは、先3年間の互換保証をうたったという点です。

 もちろん従来でもLinux運用には動作自体の問題はなかったのですが、カスタマイズとメンテナンスのために多大な人手を必要としてきました。Red Hat Linux Advanced Server 2.1においては、対応表明されるアプリケーションが、今後発表する3.xのバージョン上でも可能な限り上位互換動作することを保証します。OS自体のアップデートによって動作が不完全になってしまうという不安を排除したのです。レッドハットが定義するエンタープライズ対応と互換性保証は、このような理由からです。約半年ごとに最新の機能を搭載するRed Hat Linux 7.xや8.0とは異なるアプローチなのです。

ZDNet 2002年10月には、雑誌でのCD-ROM付録に「Publisher's Edition」明記を、とメディア向けに発表がありました。これは、レッドハット内で製品の位置づけに変化があったのでしょうか。

平野 これには深い意味はありません。事の始まりは、海外でRed Hat Linuxの発売直後にRed Hatをうたった異なるディストリビューションが販売されるといった状況を目にし、困惑したことです。オープンソースであることから、コピーをしないでほしいということではなく、異なるディストリビューションでありながらもRed Hatを名乗るのはやめてほしいということです。製品パッケージとの明確な差別化を行うため、明記をお願いしました。

ZDNet 2003年の展開として、現時点でコメントできるものを教えてください。

平野 すでに米サイト上(http://www.redhat.com/apps/support/errata/)では発表されていますが、サポート面に変化がありました。アップデートサービスErrataには製品によってサポート期限を設定することになり、今後は製品ごとのサポート形態がより明確になっていきます。

 Red Hat Linux 8.0を始めとする7.3、7.2、7.1は2003年12月31日まで、7.0、6.2は2003年3月31日と期限が設定されます。Red Hat Linux Advanced Server 2.1はほかよりも長期な2005年3月31日までとなります。

 また、新たな展開として2003年に入ってからは、Advanced Serverと8.0の間に位置する「Workstation」と呼ぶラインアップが追加される予定です。ユーザーによっては、利用するのがRed Hat Linux Advanced Serverほどハイエンドではないものの、8.0のラインでは1年間サポートに不安があるといった企業ユーザーにお勧めするパッケージです。

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[聞き手:木田佳克,ITmedia]


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