エンタープライズ:インタビュー 2003/05/30 22:11:00 更新


Interview:「IT予算の減少が追い風に」とNetAppのメンドーザ社長

米ネットワーク・アプライアンスのトーマス・メンドーザ社長によると、不景気でIT予算が限られているからこそ、コスト効果に優れた同社製品が注目を集ているのだという。

 米ネットワーク・アプライアンス(NetApp)は、ハイエンドのNAS(ネットワーク接続型ストレージ)「NetAppファイラー」にはじまり、ディスクとテープストレージの長所を兼ね備えたニアラインストレージ製品「NearStore」や、データ保護のための「SnapVault」、ディザスタリカバリを支援する「SnapMirror」といったソフトウェア群を展開している。5月中旬に発表した第4四半期決算では、通算6期連続のプラス成長を達成するに至った。同社社長を務めるトーマス・メンドーザ氏に、IT不況の中での舵取りと今後の見通しについて聞いた。

メンドーザ社長

比較的新興の企業であるにもかかわらず、大きく成長できたと述べたメンドーザ氏

ZDNet この1年を振り返ってどうでしたか?

メンドーザ すべての四半期で成長を見せ、しかも利益を出すことができました。2003年度の純利益は7000万ドルを超えています。業界の中でも、これほど利益を生み出している企業は他にないと思います。IT投資は削減傾向にありますが、その中でも他のベンダーから市場シェアを獲得することができました。

ZDNet このように成長できた要因は何に求められますか?

メンドーザ いくつかのトレンドがわれわれに有利に働いたと思います。まず、景気後退によって企業のIT予算は限られるようになりましたが、それゆえに顧客は、より効率の高いストレージを求めるようになりました。既存の高価なストレージと専用ツールの組み合わせに代わり、われわれの製品がCIOの注目を集めるようになったのです。

 別の要因として、幅広いパートナーシップが挙げられるでしょう。例えばNetAppは、IBMグローバルサービセズやアクセンチュア、富士通シーメンスといった企業とパートナー提携を結んでいます。日本でも、先日提携を発表したNTTデータのほか、CTC(伊藤忠テクノサイエンス)や丸紅ソリューションズ、NSソリューションズといった強力なパートナーを得ることができました。いずれもNetAppとの提携によって、TCO削減という要求に応えることができるという信念に基づいたものです。また、オラクルやベリタス・ソフトウェア、SAP、ラショナル・ソフトウェアといったアプリケーション企業とのパートナーシップも重要です。

 また、われわれは2年前に、エンタープライズ向けの戦略を立てましたが、それが効を奏しています。当時はのエンタープライズ向けが3割程度でしたが、今では7割にまで上っています。

ZDNet 製品の面では?

メンドーザ 引き続き技術的革新を追及し続けていきます。その好例が、「NearStore R100」です。安価なディスクに、バックアップとリカバリを効率的に管理するソフトウェアを組み合わせることで、テープストレージと同等のコストで、速やかなリカバリ/リストアを実現します。ディザスタリカバリ戦略においてもこの製品は重要です。高価なディスクはもはや不必要となり、実に効率的な災害対策を実現できます。

 同時に、1つのデバイスで、ファイバチャネルもイーサネットも両方を使えるようにする「ユニファイドストレージ」戦略も推進します。これは、小型の機器からハイエンドの機器に至るまで当てはまるもので、顧客が、環境や特定のニーズに合わせて選択できるようにします。しかも、新たに高価なディスクを購入したり、機器を入れ替えたりすることなく、アップグレードが可能です。これは、既存の投資の保護につながります。

ZDNet ストレージの分野においてはコスト削減、特に運用コストの削減が至上命題となっています。NetAppはこれをどのように支援しますか?

メンドーザ いくつか方法があります。1つは、WindowsやUNIX、Linuxといった複数のプラットフォームを統合することです。ますます多くの情報が集まることを考えると、このプラットフォームは信頼性が高く、堅牢で、速やかにリカバリできるものでなくてはなりません。

 現に、チェースマンハッタン銀行やシティバンク、リーマン・ブラザーズやゴールドマンサックスといったウォールストリートの金融機関からはそういった要求があり、いずれもNetAppの製品を採用しました。中には、8台のWindows NTサーバを1台のNetAppに統合したケースもあります。まずこれで、大きく経費を節減できます。初期導入費用が減るのはもちろん、運用コストやライセンス、サービス契約を減らし、簡素な管理を実現できるからです。

 統合という面では、リカバリが鍵を握ります。400万以上のコードからなるWindows NTの場合、障害が起きても原因を特定するのが困難です。しかもリカバリに時間がかかります。これに対しNetAppは、効率のよいファイルシステムを提供します。またNearStore R100/R150を活用することで、高速なバックアップやリカバリが可能になり、これらの作業に要する時間を短縮できます。

 さらにディザスタリカバリに関しても、安価なストレージを活用すれば、コスト効率よく、効果的に実現できます。他社のように、高価な専用システムを導入する必要はありません。

 また、IT投資額が減る一方でデータが増加するという現状で、従来のように各拠点ごとにバックアップや管理を行うのは、大きな負担になります。そこで、シンプルなアプライアンスを用いて中央の拠点にストレージを集約し、集中的に管理することで、コスト節約だけでなく、シンプルで一元的な管理とバックアップが実現できます。

ZDNet 日本市場に対する見方を教えてください。

メンドーザ 非常に厳しい状況にあります。競合の中には、大きく売り上げを減らしているところもあると聞いています。しかし、IT投資が減る中で、新しいテクノロジを求めるニーズはあります。NetAppは強力なパートナーとともに、シェアをさらに伸ばすべく積極的に取り組んでいきますし、大きなチャンスがあると思っています。

ZDNet NearStoreと競合する製品も存在しますが。

メンドーザ 競合の存在は、私としては歓迎しますし、前向きにとらえています。そこにニーズがあり、良い市場があるということだからです。

ZDNet 今後、どういった技術が鍵を握ると見ていますか?

メンドーザ 基本的には戦略を変えず、引き続き実行に務めるわけですが、その中でトレンドは2つ挙げられると思います。1つはLinuxです。Linuxは急速に、それも大手金融機関やエネルギー企業などで確実に地歩を広げています。そこで先日の発表も含め、LinuxとNetAppの組み合わせを提供していきたいと考えています。

 もう1つはiSCSIです。分散ネットワークスストレージが広く導入されない理由の1つに、SANが高額だということが挙げられると思いますが、iSCSIは安価です。マイクロソフトやシスコといった大手が支援していることからも、人々をネットワークストレージに移行させる大きな力になると思います。NetAppは既に、すべての製品をiSCSIに対応させることを表明し、対応製品を出荷しています。ここでもわれわれは、いい位置に付けていると思っています。

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[聞き手:高橋睦美,ITmedia]