エンタープライズ:ニュース 2003/06/11 09:44:00 更新


基調講演:「Java is Everywhere」−−JavaOneに集まった5000人のデベロッパーが気勢

サンフランシスコのモスコーニセンターでJavaOneカンファレンスが開幕した。長引く景気の後退からか、参加者こそ前年からさらに減っているものの、単に携帯電話だけでなく、企業のバックエンドも巻き込み、企業にモビリティをもたらすエンドツーエンドのソリューションへとJavaの快進撃は向かう。

 今年で8回を数えるJavaの祭典は、新しいロゴのお披露目の場となった。従来のロゴでは携帯電話の小さなスクリーンに表示しづらいとの理由から、コーヒーカップのデザインをよりシンプルにしたという。「Java is Everywhere」をテーマに掲げた今回のJavaOneカンファレンスを象徴する幕開けだ。

 霧に包まれ、肌寒さも感じる6月10日の朝、カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで「2003 JavaOne Conference in San Francisco」がスタートした。基調講演に登場したソフトウェア担当執行副社長のジョナサン・シュワルツ氏は、「フォーチュン500の企業がすべてJavaを利用している。6〜7年前、だれが予測できただろう」とし、J2EE、J2SE、そしてJ2MEの快進撃を振り返った。

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弱冠36才でSunのソフトウェア事業を率いるジョナサン氏


 J2EEやJ2SEのSDKダウンロード数は毎年倍増を続けており、デベロッパーも300万人に達している。オンラインゲームでも着実にJavaが普及を始めており、Electornic Artsのサイトには1760万人がアクセスしてJavaのオンラインゲームを楽しんでいるという。その総時間数は82億時間に及び、1人のユーザーが1日70分を費やしている計算だ。

 日本では携帯電話のゲームが世界に先駆けて普及しているが、J2MEを搭載した携帯電話を製造する端末メーカーは22社、製品数は150に上る。世界で55の通信事業者がJavaを搭載した携帯電話のサービスを開始しており、加入者の総数も1億人に達するという。

「向こう6カ月でさらに2億5000万台ものJava携帯電話が出荷される。潜在顧客は10億人といわれており、通信事業者にとっては魅力だ」(シュワルツ氏)

 また、Javaを搭載したスマートカードも既に3億枚が出荷され、テレビセットトップボックスや携帯電話に組み込まれ、ユーザー認証やセキュアな通信のために使われている。

 シュワルツ氏は、Javaが追求してきた互換性と初めから組み込まれたセキュリティが極めて重要だとし、それによって「Javaモビリティ」が実現されていると話す。

「(Javaスマートカードによって)人が動き、アプリケーションが動き、ビジネスが動き、価値が動く」とシュワルツ氏。

 彼が最初にステージへと招いたのも、Vodafone Global Content Servicesのガイ・ローレンスCEOだった。同社では、昨年10月にJavaを使ったサービスを開始しており、Javaゲームからの収益が急速に伸びているという。

 ローレンス氏は、「みなさんの創造性が必要だ。今こそゲームを書く時だ。われわれと一緒に列車に乗ってほしい」とJavaデベロッパーらにアピールした。

J2ME + J2EE =

 ステージの顔ぶれは変わったものの、ここまでなら昨年のJavaOneのビデオを観ているようなものだ。しかし、シュワルツ氏の基調講演の後半は、エンタープライズシステムにも話が及び、真の「Java is Everywhere」をアピールするものになった。

「1億人のJava携帯電話加入者は仕事もしているはず。J2MEにJ2EEを組み合わせれば、企業向けのモバイルシステムになる」とシュワルツ氏。モビリティによってビジネスプロセスが本社から外部に移り、組織間の壁も越える。

 ステージに招かれたGE Medical Systemsで医療分野のソリューションを担当するブライアン・ディバスク副社長は、J2MEとJ2EEを組み合わせた、エンドツーエンドのJavaソリューションを紹介してくれた。

 ディバスク氏によれば、医療現場では自宅の医療機器、救急車、そして救急医療センターと、さまざまな局面で患者に関するデータを収集し、素早く医療スタッフ全員が活用できる状態で格納しておく必要があるという。従来であれば、CTスキャンデータやレントゲン写真、紙ベースのカルテなど、ばらばらに存在し、素早い共有は難しかった。

 GE Medical Systemsでは、Java ME、J2SE、J2EE、そしてJiniまで活用し、ネットワークコンピューティングのパワーをフルに引き出せる医療システムを開発している。自宅の医療機器、救急車、そして救急医療センター、CTスキャン装置などがネットワークでデータセンターのサーバに接続され、データリポジトリに格納される。医師や看護婦は、デスクトップPCはもちろん、ワイヤレス接続されたタブレットPCやPDAから患者のデータにアクセスでき、局面に応じた適切な判断や処置が行えるというものだ。心拍の波形を表示するのにJava2D、CTスキャンデータなどをレンダリングするのにはJava3Dをそれぞれ活用している。Javaであるため、デスクトップとPDAで同じデータにアクセスできることは言うまでもない。

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タブレットPCで医療データを見せるGEのディバスク氏


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Java3Dで描かれているCTスキャンデータ


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シュワルツ氏はPDAからスキャンデータにアクセス


 ステージでは、サンのシュワルツ氏がワイヤレス接続されたPDAを使い、頭部のスキャンイメージを拡大しながら参照するデモも行った。「ワイヤレスデバイスなら地球上のどこにいても使える」とジョナサン氏。

「Everyone、Everything、Everywhere、Everytime……」

 会場を埋めた5000人のJavaデベロッパーは、ジョナサン氏の合図に合わせ、気勢を上げた。

 なお、ジョナサン氏に続いて基調講演に登場したソフトウェア担当CTOのジョン・ファウラー氏は、開発ツール分野の進展やユーザーコミュニティーとしてスタートした「Java.net」について紹介している。

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[浅井英二,ITmedia]