エンタープライズ:ニュース 2003/06/12 17:22:00 更新


MicrosoftによるRAV AntiVirus買収に憤るLinuxユーザーとRAVリセラー

Microsoftが買収予定のウイルス対策技術のRAV AntiVirusは、売り上げの大半がLinuxプラットフォームだ。買収完了と同時にディスコンが決まっている同製品のユーザーとリセラーから悲鳴が上がっている。(IDG)

 特にLinuxユーザーの間で人気の高いRAV AntiVirusの利用者とリセラーは、MicrosoftがルーマニアのGeCAD Software SrlからRAVテクノロジーを取得するとの発表以後、不安な状態が続いている。

 RAV製品ラインは、Microsoftが同テクノロジーの買収を完了すると、中止されてしまうとMicrosoftでは述べている。全世界で1000万人のユーザーのセキュリティを保護しているというGeCADは、既存の顧客が契約を終了するまでサポートを続けるという。

 Microsoftにとってこの買収の本当の目的は何なのか? 同社がWindowsとExchange製品のライバルである、Linuxメールサーバ向けの代表的なウイルススキャンソフトに使われているテクノロジーを買収することには、別の意図があるのではと疑問を抱く人たちもいる。

 「なぜMicrosoftがLinuxの会社を買収したのか理解できない。GeCADのWindowsビジネスはLinuxビジネスよりも小規模だ」と独University of Magdeburgのウイルス対策ソフト専門家であるアンドレアス・マルクス氏は疑問を投げかける。

 マルクス氏はGeCADのLinux向けウイルス対策ソフトをテストしたばかりだが、GeCADは「確かにLinux上の最高のウイルス対策ソリューションだ」と評価する。

 GeCADのRAV AntiVirus for Mail Serversは、数多くのメールサーバ製品をサポートしており、それにはSendmail、Qmail、Postfixといったフリーのものが含まれ、Linux、BSDを含むさまざまなOSに対応している。価格設定がメールボックス毎ではなく、ドメイン毎になっているのも、ユーザーにとって大きな利点だと、専門家とユーザーは考えている。

 IDG News ServiceがインタビューしたGeCADの米国、カナダ、英国でのリセラーによれば、売り上げの大半はLinuxプラットフォーム向けのRAV AntiVirus for Mail Serversだという。

 マルクス氏は、この買収はLinuxユーザーには特に大打撃になると見ている。「他の選択肢はあり、ユーザーは別のアンチウイルスソリューションにスイッチすることもできる。しかし、それはとても簡単だとは言い難い。というのはRAVには多くの特別な機能があるからだ」と同氏。「陰謀ではないかという推測が入り込む余地はある。MicrosoftがこのソリューションをLinuxで利用させたくない、というのもありえる」とマルクス氏は推測する。

 MicrosoftはGeCADのアンチウイルスエンジンとプログラマーだけに関心がある、と主張するのはMicrosoft セキュリティ・ビジネス・ユニットのエイミー・キャロル氏。

 「われわれが資産と技術を獲得したのは、技術の質が高く、開発チームがわれわに適合すると考えたからだ。複数プラットフォーム向けの製品を持っていないウイルス対策ベンダーは見つけられないだろう」と同氏は説明した。

 「牛印」の評価で知られるオンラインソフトウェアのレビューサイト、TucowsではRAV AntiVirusを使ってホスティングされたメールサービスのスキャンを今年初めからスタートしている。同社ではメールサーバとしてCommuniGate Proを、プラットフォームとしてLinuxを使っており、RAV AntiVirusが最良の選択肢だと考えたという。

 「RAVは非常によりソリューションで、他の製品と同等かそれ以上だ」とTucowsの社長兼CEOであるエリオット・ノス氏。RAV導入に際しては、価格も大きな要因となっている。「選択肢はあった。他の大企業の製品を使うこともできたが、経済状況がそれを許さなかった」と同氏。

 RAV AntiVirusがTucowsの第一希望だったが、同社ではこのソフトウェアを別の製品に置き換えるのが難しいとは考えていない。「代替ソフトに悩んではいない」とノス氏。Tucowsで、ブランド認知度が高いけれども高価格のウイルス対策ソフトベンダー以外のところを探すことになるだろう。

 ニューヨーク州シェネクタディのリベラルアーツカレッジであるUnion Collegeは約4000の電子メールアカウントをSendmailサーバで運用している。以前はSophosのウイルス対策ソフトを使っていたが、その後、RAV AntiVirusが同価格帯では最良であることを知った。

「私は8カ月の間、ウイルス対策ソリューションを調べてみたが、この製品がこの価格では最良のものだった。われわれはSophosを使っていたが、こちらのライセンス形態では高すぎた」と同大学の学内システム管理者であるマイケル・ペイト氏は話す。「コストの点から考えると、Sophosは8000ドルから1万2000ドルしていたのが、RAVでは1000ドルだった」

 「われわれはもう一度調査をしなければならない。GeCADと同じようなライセンスを行っていて、Linuxプラットフォームで動く競合製品がいくつかある」と同氏。

 MicrosoftのRAVテクノロジー買収で混乱しているのは、ユーザーだけではない。GeCADは60カ国に提携先があるが、この製品の販売権も失うのだ。

 米国におけるRAV Antivirus総代理店であるRAE Internetは、米国で1000以上のRAV製ソフトウェアの顧客を持っている。顧客のほとんどは小規模のISPだと同社社長のマイケル・カッツ氏は説明する。

 Microsoftはよいテクノロジーを安価に手に入れたかったのだろうとカッツ氏は推測する。しかし、Linuxコミュニティに一泡吹かせてやろうというMicrosoftが考えていたのではという懸念も捨てきれない。

 「私の考えでは、RAVが買収されたのは、統合されたウイルス/スキャンエンジンを彼らの製品に組み入れたかったからというものだ。おまけに、ただ同然で手に入れたソフトで、Linuxユーザーに対して高値をふっかけることもできる」とカッツ氏。RAEのRAV顧客の半数以上がLinuxメールサーバの利用者だという。

 GeCADの英国でのリセラーであるAxia Computer Systemsの販売マネジャー、アスガー・アリ氏は、RAV製品が消え去るのは「恥ずべきこと」と話す。同氏によれば、同社からRAV製品を購入した約60ユーザーの多くがSendmailをLinuxで動かしていたという。

 「この買収にショックを受けている。RAV AntiVirusはとてもよい製品で、市場シェアを獲得しつつあった。Linux市場における協力な市場リーダーになりえたはずだ」とアリ氏。

 同じくG3CADのリセラーであるブリティッシュコロンビアのFocus Computer Consultingのオーナー、ジョー・マクドナルド氏もアリ氏と意見を同じくする。

 「買収によりRAVは間違った方向に進んでしまったと思う。彼らは市場に食い込み始めており、とても人気が高かった。彼らは進むべき道から外れていっていると思う」とマクドナルド氏は話す。Focus ComputerからRAVを購入したユーザーのうち、90%がLinuxメールサーバ用製品だったという。

 マクドナルド氏は、ルーマニアのRAV AntiVirus開発会社はただMicrosoftの金のために、そうしたのだと考える。

 「もしもMicrosoftがこの手法でLinuxコミュニティから商用製品を奪っていったらどうなる? GeCADは断りきれないくらいの金額の小切手を提示されたのだと思う」とマクドナルド氏は語った。

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[Joris Evers and Paul Roberts,IDG News Service]

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