エンタープライズ:特集 2003/07/11 12:50:00 更新


特集:LVMによるディスクパーティションの動的化(前編) (1/7)

サーバのディスク容量が減少してくると、いずれ訪れるであろう対処策を考えておく必要がある。この特集で解説する「LVM」は、固定されたパーティション概念を無くすファイルシステムの管理方法だ。

 Linuxなどのサーバ運営を行っていると、管理者にはさまざまな悩みが出てくる。その中でも深刻なものの1つとして、物理的な問題であるディスク障害がある。現状の環境をそのまま継続利用したいと思っても、容量不足になってしまうと何らかの対処が急務だ。この特集では、新たなディスク管理規格「LVM」(Logical Volume Manager、論理ボリュームマネージャ)について具体的な導入手順を解説していこう。

 この特集では、LVMがどのような仕組みを持ち、どのようにすれば既存環境に導入できるかを解説していく。記事上ではRed Hat Linux 9を基にしているが、従来のバージョン(Red Hat Linux 7.3や8.0)、及びほかのディストリビューションでも何ら問題はない(ただし、カーネル再構築の必要性があるかもしれない)。一部、Red Hatベースのディレクトリ構成や画面などが見られるが、LVM自体がオープンソースのため依存する事項は少ないだろう。

ディスク障害の多くはクラッシュとパーティション容量不足

 Linuxを含めUNIXでは、ディスクをパーティションやスライスという概念で分割管理している。各パーティションはディレクトリとしてマウントされる仕組みであり、ディレクトリごとの用途で(個人データを保持する/homeや一般的なプログラムを収める/usrなど)、システムインストール時に必要容量を割り当てる。しかし、「最大容量が決定される」という制限があるため、システムインストール時に予期していたよりも、/var/や/usr/ディレクトリに多くの容量を必要としてしまい、あわててることもあるだろう。例外としては、1パーティション=1ディスクという構成ポリシーも考えられる。

 このような場合、従来からの解決策は新しくパーティションを用意し、「必要なディレクトリ部にマウントしてその場をしのぐ」、または「容量不足のパーティション上から大容量なパーティションにファイル移動させ、マウントしなおす」ことだろう。しかし、前者の場合には「別のディレクトリが肥大化した場合にはどうするか」、後者では「元のパーティションは未使用になってしまう」、という効率面からの疑問が残される。

 最近では、商用パッケージとして「Partition Magic」やGPLソフトウェアである「GNU Parted」を用い、未使用領域を操作することで容量を確保する方法もある。しかし、このような手段を採用したとしても、システムを停止して多大なバックアップ時間を要したり、結局はディスク自体の容量に依存してしまう事態が避けられない。そこで、物理層とソフトウェア層を意識しなくて済むよう根本から考え直す規格が考案された。

LVMはパーティション=ディレクトリ概念を覆すもの

 前述した事態を回避するためのディスク管理規格が「LVM」である。LVMを利用するとこれらの制限がある程度緩和され、以下のような機能によってディスク管理が柔軟に行えるのだ。

fig0111.jpg

図1■/homeパーティションをLVM化する例。hdaで構成される使用前のディスクが(図左側)、hdbディスクを加える使用後では(図右側)、hda2と統合されるP1として/homeが生成されている点に注目してほしい


1. 複数パーティションを結合した「論理的な」パーティションを提供する

 LVMは、ディスク上の複数パーティション(物理パーティション)をひとつの領域としてまとめる役目を担う。その中から「論理パーティション」として領域の切り出しを行うのだ。物理パーティションは複数の物理的なディスクをまたがっても問題はなく、途中で物理パーティションを追加や削除することが可能だ。

2. 「論理的な」パーティションのサイズ変更

 利用しているディスクのファイルシステム(フォーマット)制限にもよるが、より多くの容量が必要と判断されたパーティションは、領域に残ってる部分を割り当てることで「論理的な」パーティションサイズを増減させることができる(図1)。

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[佐藤大輔,ITmedia]