エンタープライズ:ニュース 2003/09/08 23:31:00 更新

Oracle vs. DB2――仁義なき戦い データベース編
第5回 SIへの取材「新日鉄ソリューションズ」──Oracle技術の深度で差別化を図る

エンジニアリングのスキルを蓄積するうえからもOracleにフォーカスを当てた新日鉄ソリューションズ。同社も得意とするOracle9i RACの方向性は時代に合っていて、ほかのデータベースを半歩リードしていると話す。

 オラクルと新日鉄のパートナーシップは、IT業界ではよく知られたところである。その関係は1991年の戦略的提携契約から出発し、新日鉄ソリューションズの前身の一つである旧新日鉄情報通信システム(ENICOM)時代から、Oracleの製品知識とこれをベースとしたシステム構築ノウハウを武器にビジネスを発展させてきた。

 「われわれはエンドユーザー企業にとって価値の高いものを組み合わせてソリューションとして提案するマルチベンダー対応のシステムインテグレーター。しかし、オープン系のIT製品は右から仕入れて左に納めて済むというではなく、エンジニアリングが必要になる。一方、社内リソースは無限というわけではなく、エンジニアリング力を身につけるための投資を集中させる必要があった。その結果、Oracleにフォーカスすることになった」

 こう話すのは、新日鉄ソリューションズ 基盤ソリューション事業部マーケティング部ソリューション企画グループの折原耕路グループリーダー。

 さらに同じマーケティング部でプロダクトマーケティングを担当する磯脇恵グループリーダーは、「ほかのシステムインテグレーターとの差別化も、このデータベースに対するスキルの深度で図るのが基本方針。近年ではOracle9i RAC(Real Application Clusters)へのコミットがその一例で、イー・コモディティの外国為替保証金取引システム構築などで実績がある。Oracle9i RACの利用を検討しているエンドユーザー企業へのシステム提案では負けない」と付け加える。

 このようにビジネス展開が明白なせいか、システム提案活動の中で、顧客企業から「なぜOracleなのか、ほかのデータベースを検討したか」と問われることはほとんどないという。

 「データベースでより重要な議論は“何を使うか”というより“どう使うか”だ。製品選定に労力を割かずに済めば、それだけ、どう構築するか、どう利用するかという議論に時間をかけることができる」(折原氏)

 しかし、新日鉄ソリューションズといえども、中堅企業および小規模事業者(SME)の市場ではこのロジックが通用しないようだ。特に、Linuxをベースとしたシステム開発の案件では、ハードウェアも安く、ソフトウェアも無償の製品が多い中、Oracleの製品価格がどうしても目立ってしまう。「このシステムにほんとうにOracleが必要なのかという問いが、エンドユーザー企業から発せられることはある」と折原氏は明かす。

 そうした場合、彼は総合的なコストや安全性での比較を提案するという。製品価格自体は安くても、エンジニアの確保が難しいために保守費用が高くつく。周辺製品がそろっておらず自社での開発ボリュームが大きくなる。利用実績の乏しさから、より高いシステムダウンのリスクを負わなければならない。そうしたことを考え合わせれば、結果的にOracleでの開発の方がコストを低く抑えられる。

 しかし、そういう「説得」を聞いてもう一度プロジェクトを再検討する企業がある一方で、本当にシステム予算が厳しく、1円でもコストを削りたいからOracleはノーという企業があるという。

 同社のビジネスボリュームは圧倒的にハイエンド市場にある。ことさらこのフィールドにOracleを訴求する難しさを憂いているわけではないが、数年前からインターネットでビジネスを立ち上げる新興企業などの中には、瞬く間に成長して大規模システムが必要になるケースもある。Oracleで培ったエンジニアリング力があれば、そうしたSME市場を取りにいくこともできる。

 「市場の主流にあるということは、対応する周辺製品が多く、新版への対応も早いということ。道具立てがそろっているからできることがたくさんある。それがシステム開発にとって重要なことで、データベースの世界ではそれがOracle。Oracle9i RACという方向性も時代に合っている。全く新しい技術が登場すると分からないが、現状ではOracleがほかのデータベースに比べて半歩か1/4歩はリードしていると思う」(折原氏)

関連記事
▼第4回 IHVへの取材「HP」──Oracleは自社製品のようなもの
▼第3回 調査会社への取材「ITR」──“OracleかDB2か”を尋ねる企業が増えている
▼第2回 調査会社への取材「IDC Japan」──オラクルの敵はIBMではなくマイクロソフト
▼第1回 再燃するデータベース業界のシェア争い
▼Interview:「市場の拡大こそ重要」と日本オラクルの新宅社長、Oracle 10gが起爆剤?
▼Oracle vs. DB2――仁義なき戦い データベース編
▼データベース市場首位の座を守ったオラクル
▼IBM,2001年度の世界データベース管理ソフト市場で首位に
▼オラクルが「IBMのデータベース首位」に異論

[ITmedia]